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車の無断使用の際の所有者の責任

Q.

 道路を散歩中、A社の従業員Bの運転するA社の車にひかれて大怪我をしました。
 Bは、そのとき勤務時間外にA社の車を無断私用していたそうです。
 Bは、お金をあまり持っていないのでA社に損害賠償を請求したいのですが、できますか?

A.

 自動車損害賠償保障法(自賠法)3条運行供用者責任を問うことにより請求できます。

 Bの運転していた車はA社所有のものであり、あなたはA社に対して自賠法3条の運行供用者責任を問うことができます。

 この責任は、運行支配と運行利益の帰属者に責任を負わすものでして、無断私用であっても、それは従業員という密接な人的関係にあるものがその関係ゆえに容易に気安くなすものですので、会社は運行支配と運行利益を有するものとされ、会社の運行供用者責任も肯定されるのです。

Q.

 運行供用者責任は、人身事故についてのみ負うものと聞いています。上記の事例で、物損事故であった場合は、A社に損害賠償請求できますか?

A.

 民法715条使用者責任を問うことにより請求できます。

 たしかに、運行供用者責任は、人身事故の場合のみ適用されます。従って物損事故である本件では、Aに運行供用者責任を問うことはできません。

 しかし、A社はBの使用者であり、被用者はその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しなければなりません(民法715条)。そして、ここにいう「事業の執行につき」というのは、外形的に判断すべきとするのが判例ですから、Bの運転が外形的にA社の事業の執行につきなされたものと認められる場合は、たとえ、勤務時間外の私用運転であっても、使用者責任を問うことができます。

 従って、物損事故であったとしても、A社に損害賠償を請求することができます。

Q.

 車にキーを差し込んだままにしていて盗難にあい、10日後にその車が人をひいたということをききました。運行供用者の責任を負わなければならないのでしょうか?

A.

 盗難後10日も経っているのですからあなたの運行支配は失われたとみるべきで、運行供用者責任は負わなくてもよいでしょう。

 盗難車のように人的な関係の無い者に無断で運転された場合、原則として運行支配はないといえ、運行供用者責任は負わないといえるでしょう。しかし、あなたのように車にキーを差し込んだままにしておくなど車の管理に過失ある場合は、盗難にあっても仕方の無い状態で車を放置しており、未だ運行支配内にあるとされています。

 もっとも、盗難にあってから何日もたったあとは、所有者の運行支配は失われたとみるべきであり、盗まれてから10日も経ってから事故が起こったあなたの場合も、運行供用者責任は負わないといえるでしょう。

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