いくら工夫を凝らして素敵な作品を作り上げても、それを他人が勝手にどんどんコピーしてしまったら?
気分が良くないだけでなく、作品価値が下がってしまったり、コピー商品に押されて売上が落ちたりするかもしれません。
こんなことが続けば、そのうち作品を生み出す気力も資力も尽きてしまうことでしょう。
このように、著作物にとって複製権は大変重要な権利であるため、著作権の経済的支柱として、むやみに侵害してはならないというのが原則です。
■私的複製
しかし、著作権者や著作物にほとんど影響を与えないような方法であれば、例外的に無断で複製を楽しむことも許されます。
これが「私的複製」の考え方です(著作権法30条)。
私的複製とは、「私的使用」のためのコピー。
たとえば、録画しておいたテレビ番組を後日自分で見る場合のように、
- 個人的、家庭内など限られた範囲内で、仕事以外の目的に使用する
- 使用する本人がコピーする
- 公衆用に設置してあるダビング機などを用いない(当分の間はコンビニのコピー機など「文献複写」のみに用いるものは使用可能)
- コピー制限措置を解除して(または解除されていることを知りつつ)コピーしない
- 著作権を侵害したインターネット配信と知りながら、音楽や映像をダウンロードしない
という条件をすべて満たせば、「私的使用」と認められます。
こうした範囲内ならば、著作権者の経済的利益を大きく害することもなく、著作物の自由な利用によって文化発展も見込めます。
また、各家庭内の行為にまで立ち入って規制することは実質上不可能であることも、私的使用を認める理由です。
ちなみに、法律上は、書類のコピーに限らず、記事・写真などのデータをダウンロードしたり、蓄積したりすることも「複製」になります。
次回は、パターン別に私的複製の成否を考え、私的使用の範囲を探りましょう。