前回に引き続き今回も、日常の行為が、権利者に無断で利用しても例外的に著作権侵害とならない「私的複製(著作権法30条1項)」の範囲内かを考えます。
判断基準は、その行為が、個人・家庭内など非常に限定的であり、「私的使用」だといえるかどうか。
いえない場合はアウト(著作権侵害)、いえる場合はセーフ(私的複製)です。
さあ、みてみましょう。
■ウェブサイトやブログに記事や写真を載せるのは?
→アウト
ウェブサイトやブログというのは、大勢の人がアクセスできる場であり、個人や家庭内など限られた範囲とは到底いえません。
したがって、そこに第三者が著作権を有する記事や写真を勝手に載せる行為は、著作権法上データの「複製」であり、たとえ個人的な用途であっても私的使用とは認められないのです。
「どうせ私のブログは特定の友達4、5人しか見ていない」と思っていても、ネット上は公の場と認識し、掲載記事等には十分気を配りましょう。
■いわゆる「自炊」は?
→自分や家族など限られた範囲で共有する目的ならばセーフ
「自炊」とは、自分の所有する書籍や雑誌を電子書籍として利用するため、スキャナ等でデジタルデータ化する行為を指した俗語です(これも著作権法上の複製)。
iPad、Kindleなどのタブレット端末が普及したことで、電子書籍の需要が一気に高まり、一時期随分と話題になりましたね。
自分のためや、家族・数人の親しい友人と共有するために行う「自炊」は、私的複製として許されます。
他人からアクセスできないような自宅サーバーであれば、このデータをアップロードして家族で共有することも可能です。
ただし、上記のようなごく限られた範囲での共有を逸脱した場合、たとえば
・ 知人にデータを渡した
・ 企業内で利用するためにスキャンした
などの場合は「私的複製」にはならずアウトですのでご注意ください。
■スキャン代行は?
→権利者に複製の許可を得ていないならアウト
「私的複製1」の記事でも紹介しましたが、私的複製が認められる条件の中に「使用する本人がコピーする」というものがあります(著作権法30条1項)。
自炊代行サービスは利用者ではなく業者がコピーするため、私的複製にはあたらず、したがって複製時には著作権の原則通り権利者の許可が必要です。
従来は出版社に複製権等の権利がなく、違法データに対する差し止め請求や損害賠償請求などの対抗措置は作家個人に任せられていたため、違法データの拡大に歯止めをかけるのは難しい状態でした。
しかし、2012年4月に作家、出版社、国会議員らが勉強会を開き、出版社が編集・発行した書籍・雑誌(電子のものを含む)に関して、複製権等を取得するという著作権法の改正試案をまとめています。
これが実現すれば、作家個人ではなく出版社が違法データに対して差し止め請求や損害賠償請求などを行えるため、現在よりも代行サービスへの圧力が強まる見込みです。