「著作物」と言うと何か崇高な芸術作品を指すように思えますが、文芸や美術、音楽などのかたちで、思想や感情をオリジナルに表現したものは基本的に著作物にあたります。
たとえばキャラクターグッズやポスター、銅像、芸術的要素のある建物など、私たちの身の回りには著作物があふれているのです。
■写り込み
これだけ著作物があれば、写真や画像を撮った時に、他人の著作物が写り込むこともあります。
写真などは一種の「複製」なので、これを勝手にブログやTwitter、SNSなどに載せると、法律上は、作成した複製を公開の場(ネット)で不特定多数の人の目に触れる状態に置いたということになり、写り込んだ著作物の著作権を侵害するおそれが高まります。
これに対し、著作権法46条は「公開の美術等の利用」といって、公共の場にある彫刻や建物などが写真等に写り込んでも問題なく利用できると規定しています。
しかし、公園で遊ぶ子どもの服にキャラクターが描かれている、部屋の壁にポスターや絵がかかっているという場合は、これが写り込んでも上記規定ではカバーできません。
そこで、今回改正された著作権法30条の2は、こうした問題を補うため、
- 写真撮影・録音・録画限定で
- 撮影等の対象物から分離困難な付随物や音のうち
- 社会通念上、質的・量的に軽微と評価できるものは
- 著作権者の権利を不当に害さない限り
複製・改作し、利用することができるとしました。
ここで注目すべきは、(1)写真撮影や録音・録画に限るということ。
絵画や漫画の背景にキャラクターものの服を着た子供を描き込むことは認められません。
また、(2)分離困難、(3)軽微という点は判断が難しいところです。
(2)に関しては、容易に外せるものは分離困難ではないと考えれば、ポスターははがせ、服は脱がせろということになるのでしょうか。
(3)にしても、少しの分量でもやたらと目立っていれば軽微とはいえなくなるのでしょうか。
こうした感覚的な部分は今後の裁判の判断を待つしかありません。
日本版フェアユースは比較的自由度が低いわりに曖昧な部分が多いため、基準が安定するまでにしばらく時間を要すると思われます。