裁判員のための一口判例解説
裁判員のための一口判例解説に関する記事一覧(2ページ目)
被害者の人数に関する認識のずれ
~東京高裁昭和38年6月27日判決~ 「1人だと思って攻撃を加えたところ、そこにいたのは2人だった」という場合、犯人は何人分の責任を負うべきなのでしょうか? 被告人Xは、酩酊状態で車を運転し、長男... 続きを読む
攻撃の予測と正当防衛
~最高裁昭和30年10月25日判決~ 正当な理由なく急に攻撃されたならば、それから身を守るために仕方なく反撃する行為は「正当防衛(刑法36条1項)」として罰されません。 仮にこの反撃が行き過ぎても... 続きを読む
同時傷害の特例と傷害致死罪
~最高裁昭和26年9月20日判決~ 普通、罪を問う際には、「誰のどの行為がどれだけの被害を出したか」を示し、それに見合った罰を与えるものです。 しかし、数人がかりで1人を暴行したような場合は、どの... 続きを読む
「写し」は証拠となるか
~東京高裁昭和58年7月13日判決~ 刑事裁判では立証のためにさまざまな証拠が提出されますが、その中には証拠の「写し」も含まれます。 「写し」というのは、基本的に、文書の原本を同一の文字・記号で転... 続きを読む
被相続人の殺害と2項強盗罪
~東京高裁平成元年2月27日判決~ 強盗罪(刑法236条)とは、暴行や脅迫によって他人の財物(お金など)を強引に奪う行為をいいます。 奪ったものが厳密には財物でなくとも、財産に関する利益を得たので... 続きを読む
欲情減退による強姦中止
~東京高裁昭和39年8月5日判決~ 犯行に着手した犯人が、自分の意思に従って犯行を途中でやめることを「中止未遂」といいます(刑法43条但書)。 中止未遂は、自分で犯罪を思いとどまったという点が評価... 続きを読む
幼児の証言能力
~東京高裁昭和46年10月20日判決~ 幼い子供の話を、あなたはどこまで信じますか? 刑事裁判では、事件解決のためにしばしば証人をたてますが、証人に年齢制限はありません(刑事訴訟法143条)。 ... 続きを読む
不作為の放火における故意
~広島高裁岡山支部昭和49年9月6日判決~ 放火罪と聞けば、普通は積極的に火を点ける状態を思い浮かべますが、ふいに起こった火を消さなくても、結果的には積極的な放火と同じ延焼状態が生じます。 このよ... 続きを読む
酒気帯び運転と過剰避難
~東京高裁昭和57年11月29日判決~ 殴られそうになったので、とっさに身を守ろうと手を振り回したら、側の花瓶を割ってしまった。 このように危険を回避しようととった行動から何らかの害(上の例では花... 続きを読む
身代金目的誘拐での被害者解放
~最高裁昭和54年6月26日決定~ 身代金目的誘拐罪は、無期または3年以上の懲役に処される重罪ですが(刑法225条の2)、事件が公訴されるまでに、犯人が被害者を安全な場所に解放すれば、刑が減軽されま... 続きを読む
被害者の逃走・転倒と因果関係
~最高裁昭和59年7月6日決定~ 被害者が暴行から逃れるため不合理な行動をとり、それが原因で死亡するというケースは案外あるもので、そのたびに裁判で加害者の暴行と被害者の死の因果関係が争われてきました... 続きを読む
傷害致死の教唆
~大審院大正13年4月29日判決~ 実行犯である者が誰かから入れ知恵されて犯罪を行った場合、この実行犯だけでなく、入れ知恵した人物も処罰して欲しいと思いますよね? このように、人をそそのかして犯罪... 続きを読む
家庭用プリント複合機による通貨偽造・行使
~さいたま地裁平成21年10月22日判決~ パソコンの普及に伴い、一般家庭にも高性能なプリンターが置かれるようになりました。 何でも手軽に綺麗にコピーできるのは大変よいことなのですが、簡単にそれを... 続きを読む
空手練習事件
~大阪地裁昭和62年4月21日判決~ 武道の練習にある程度の傷害はつきものですから、いちいちそれを「傷害」とカウントするわけにはいきません。 普通は相手方も受傷を承諾しているということで、傷害行為... 続きを読む
夫権の防衛
~福岡高裁昭和55年7月24日判決~ 正当防衛とは、差し迫った危険から身体や財産を守るために反撃に出ることをいい、刑法上は罰されません(刑法36条1項)。 しかし、これが行き過ぎると、過剰防衛とし... 続きを読む
信号無視の意思
~最高裁平成20年10月16日決定~ 飲酒や薬物の影響下での運転、交通ルールを無視した運転など、特に危険な運転によって人を死傷させる行為を通常の運転事故よりも重く罰するのが「危険運転致死傷罪(刑法2... 続きを読む
都市ガスの危険性と不能犯
~岐阜地裁昭和62年10月15日判決~ 犯罪を企んで何か行動を起こしたものの、その行為では到底その犯罪を実現することはできないという状態を「不能犯」といいます。 たとえば、人を殺そうと丑の刻参りを... 続きを読む
依頼されたと勘違いしての殺人
~名古屋地裁平成7年6月6日判決~ 殺してくれと被害者本人に頼まれて殺人を犯せば「嘱託殺人罪(刑法202条)」になりますが、この依頼が本心でない場合はどうなるのでしょうか? 結果から考えれば、死に... 続きを読む
強盗殺人罪と強盗の機会
~岡山地裁平成8年4月15日判決~ 「強盗殺人罪(刑法240条)」と「殺人罪(同199条)+窃盗罪(同235条)」の違いは、金品目的で殺害したかどうかで決まります。 金品目的なら前者、違う場合なら... 続きを読む
特別公務員暴行陵虐罪と被害者の承諾
~東京高裁平成15年1月29日判決~ 特別公務員暴行陵虐罪ってどんな罪?と思った方もおられるでしょうが、そう難しい罪ではありません。 法令で捕まっている者に対し、看守や護送をする者が暴行等によって... 続きを読む
意識の深層における殺意と故意
~高松高裁昭和31年10月16日判決~ 刑法では、わざと、つまり「故意」で行った行為でなければ基本的に罰されません(38条)。 たとえば、怪我をさせるつもりで死なせてしまった場合、傷害の故意はあっ... 続きを読む
責任能力の意義
~大審院昭和6年12月3日判決~ 裁判の話題では、責任能力の有無を判断する際、「心神喪失」や「心神耗弱」ということばが出てきます。「心神喪失」なら不可罰、「心神耗弱」なら刑の減軽です(刑法39条) ... 続きを読む
人のはじまりと遺棄
~最高裁昭和63年1月19日決定~ ある者を放置して死なせてしまった場合、それが「人」なのか、また、その者に必要な措置を施す責任(保護責任)があるか、という点は重要です。 人でないなら「人を死なせ... 続きを読む
放火罪の既遂時期
~最高裁昭和25年5月25日判決~ 家を燃やそうと企んで実行に着手したとしても、状況によって生じる結果は違います。 たとえば、新聞紙に火をつけて家の側に置く、家に燃え移る、その火が燃え広がって家の... 続きを読む
女性による強姦罪
~最高裁昭和40年3月30日決定~ 刑法では、行為者に一定の身分を求める犯罪を「身分犯」といいます。 たとえば、収賄罪(刑法197条)は、公務員という「身分」を持つ者が賄賂を受けた場合に成立する犯... 続きを読む
申告の一部に虚偽を含む自首の成否
~最高裁平成13年2月9日決定~ 罪を犯しても、自首(刑法42条1項)すれば、減刑の可能性があるというのはよく知られた話ですよね。 刑法上、自首というのは「犯罪事実や犯人が捜査機関に知れる前に、捜... 続きを読む
挑発が招いた攻撃と正当防衛
~大阪高裁平成12年6月22日判決~ 相手の急な攻撃から身を守るために、必要最小限の反撃をしたという場合には正当防衛(刑法36条)が認められ不可罰になります。 この正当防衛、もともと「自分は悪くな... 続きを読む
空ピストルと不能犯
~福岡高裁昭和28年11月10日判決~ 毒薬だと思ってお茶に砂糖を混入し、人に出す。 「普通、砂糖で人は殺せないよ」と笑われるでしょうが、このように犯罪を実現させようと行った行為が、その性質上、到... 続きを読む
往来の危険とは
~最高裁平成15年6月2日決定~ 人々の足として生活に欠かせない鉄道も、ひとたび事故を起こせば大惨事につながる可能性があります。 そのため、鉄道や標識を破壊するなどして、汽車や電車の往来を危険にさ... 続きを読む
実行行為の終了時期と中止犯
~福岡高裁平成11年9月7日~ ついかっとなって犯罪行為に手を付けてしまったけれど、途中でいけないと思い自分の意思で行為を中止した。 このような状態を「中止犯」といい、必ず刑の減軽または免除があり... 続きを読む