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「性犯罪者の情報公開に関する公開質問」に対する回答

 2005年4月7日、「法、納得!どっとこむ」を運営するNPO法人リーガルセキュリティ倶楽部は、法務大臣 南野知恵子氏、警察庁長官 漆間巌氏宛に、読者の皆さまからお寄せいただいたご意見とともに「性犯罪者の情報公開に関する公開質問」を送付いたしました。
 これに対し、2005年4月7日に法務省 刑事局より、4月12日に警察庁 生活安全局生活安全企画課よりご回答いただきましたので、ご報告を兼ねて以下に掲載いたします。(双方の回答を比較しやすいように編集しています。原文は下のリンクからご覧ください)


質問事項1への回答

質問1. 情報公開について賛成の立場を取る多くの方が「性犯罪はくりかえす可能性が高い」ということを前提にしています。ところが、本テーマの記事にもありますように、「平成14年度の犯罪白書によると、強姦罪によって検挙された者が同一罪種の前科を有していたのは全体の9.0%、強制わいせつで10.4%にすぎず、詐欺罪の21.8%、傷害罪の21.3%、窃盗罪の18.6%に比べて低いばかりか、全体の平均である14.5%よりも低い結果になってい」ると、発表されています。
 そこで質問です。強姦罪の前科をもつ者が強姦罪を犯した場合だけでなく、広く性犯罪(強姦、強盗強姦、強制わいせつ、わいせつ目的略取、誘拐)を犯した者が再びこれらのいずれかの性犯罪を犯した再犯率を教えてください。
 また、これらの性犯罪の多くは被害を公にしたくないという被害者の感情を考慮して親告罪となっていますが、性犯罪があったと警察に認知されたにもかかわらず告訴がないために上のデータにあらわれない件数はどの位ありますか。さらに、性犯罪は被害を公にしたくないという被害者の感情から、警察にも認知されない「暗数」が他の犯罪に比べて多いと思われますが、この暗数は警察に認知されている件数のどの位の割合になるのでしょうか。

法務省 刑事局からの回答

(この件に関して「法務省は回答する立場にありません」とのお返事でした)

警察庁 生活安全局生活安全企画課からの回答

 「広く性犯罪(強姦、強盗強姦、強制わいせつ、わいせつ目的略取、誘拐)を犯した者が再びこれらのいずれかの性犯罪を犯した再犯率」は、承知しておりません。
 「性犯罪があったと警察に認知されたにもかかわらず告訴がない」場合についても、刑法犯認知件数として計上しています。
 「警察にも認知されない『暗数』」は、承知しておりません。

質問事項2への回答

質問2. 賛成者の多くが「性犯罪者の情報を警察だけがもつことは、犯罪が起きた後の捜査には役立つが、犯罪の予防には役立たない、予防するためには一般市民がこの情報をもつことが有効だ」と考えていますが、この点についてはどのようにお考えですか。アメリカのメーガン法の運用状況や日本社会の特性を踏まえつつお答え下さい。

法務省 刑事局からの回答

(この件に関して「法務省は回答する立場にありません」とのお返事でした)

警察庁 生活安全局生活安全企画課からの回答

 性犯罪前歴者の所在に関する情報の公開については、出所者や同居の家族などの人権及び社会復帰への影響などの問題があることから、慎重に検討されるべき課題であると認識しています。

質問事項3への回答

質問3. 性犯罪はある意味で「病気」であるから、「通常の刑罰では矯正は不可能であり、直るまでは施設から出所させないという不定期刑や、改善治療を目的とした保安処分が妥当だ」という意見がありますが、この点は如何ですか。「性犯罪者の更正は施設内における教育や現在の医学の力では期待できないから薬物による去勢処分までしなくては性犯罪を防止することはできない」という意見もあります。

法務省 刑事局からの回答

 御指摘のようなご意見があることは承知しておりますが,ご意見にあるような制度を設けることにつきましては,その根拠や人権に及ぼす影響など,種々の問題があることから,慎重に検討すべきものと思います。

警察庁 生活安全局生活安全企画課からの回答

(ご回答いただけませんでした)

質問事項4への回答

質問4. 性犯罪者の情報を一般国民に公開した場合、犯罪者は居住地域から事実上排除され、就職もできず、更正することも困難となる結果その受ける社会的制裁は刑罰以上のものがあります。「これは犯罪と刑罰の均衡を定めた近代刑法の基本原則である罪刑法定主義に反し、憲法の禁止する二重処罰の禁止にも違反するのではないか」という意見もあります。この点はどのようにお考えですか。

法務省 刑事局からの回答

 御指摘のようなご意見があることは承知しておりますところ,性犯罪者の情報を一般に公開することにつきましては,これらの者の社会復帰や,家族を含む生活に及ぼす影響など,種々の問題があることから,慎重に検討すべきものと思います。

警察庁 生活安全局生活安全企画課からの回答

(ご回答いただけませんでした)

質問事項5への回答

質問5. 賛成者の中には、「現在の日本の法律は被害者の人権より加害者の人権に配慮がなされすぎている」という不満が多く見うけられます。さらに、「日本の法律は犯罪者に対して甘すぎる、もっと厳罰化した方が犯罪の抑止力になる」という意見もあります。この点をどうお考えでしょうか。

法務省 刑事局からの回答

 御指摘のようなご意見があることは承知しております。
 被害者のための施策につきましては,法務省としましても,これまでも,いわゆる犯罪被害者保護2法による法整備を行うなど,種々の施策を講じてきたところですが,今後,昨年制定された犯罪被害者等基本法に従い,更なる施策を推進してまいりたいと考えています。
 他方,犯罪対策としても,例えば,危険運転致死傷罪の創設(平成13年),殺人や強姦など凶悪・重大犯罪の法定刑の引上げ(平成16年)など,近時の犯罪情勢等を踏まえた改正を行ってきたものであり,今後も必要な改正を行っていきたいと考えていますが,いうまでもなく,単に罰則を整備するだけで十分であると考えているわけではありません。政府は,一昨年12月,犯罪対策閣僚会議において,総合的な犯罪対策として,「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を策定し,現在これを推進しているところであり,法務省としましても,今後とも,この行動計画を踏まえ,各種法令等の整備,関係する組織の要員の充実,刑務所の過剰収容の解消と矯正処遇の強化,不法滞在外国人を半減するための出入国管理体制の充実強化などを中心として,総合的な犯罪対策に取り組み,我が国の治安の回復を図っていきたいと考えています。

警察庁 生活安全局生活安全企画課からの回答

 昨年12月、犯罪被害者等基本法が成立し、改めて犯罪被害者等の権利利益が尊重されるべきであることが明確にされたところであり、警察では、引き続き、被害者の人権に配慮した警察活動に取り組んでまいりたいと考えています。
 また、平成15年12月、犯罪対策閣僚会議において、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」が策定され、政府として治安対策に取り組んでいるところ、警察でも、この行動計画を踏まえ、犯罪の発生を抑止するための施策等総合的な治安対策を推進しているところです。

■今回の「性犯罪者の情報公開について」は、本法人の設立趣旨を踏まえ、法律の建前と市民感覚のかい離が甚だしいテーマについて読者と一緒に掘り下げて考えてみようという企画「皆で考えよう、法の建前と現実」の第4回テーマとして実施されたものです。

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