アパートを借りて住んでいます。近く子供が生まれることになったのですが、契約書には、「居住人員は、契約の際に定めた人数を超えてはならない」「子供が生まれたら立ち退くこと」といった条項が入っています。家主はこれを盾に立退きを迫ってきます。どうしたらよいでしょう。
アパートの賃貸借契約を締結すると、一戸建ての家屋と同様、借地借家法が適用されます。そして、借地借家法によれば、正当の事由がある限り、賃貸人による一方的な解約はできず(借地借家法28条)、これに関して賃借人に不利な特約をつけても、無効となります(借地借家法30条)。
子供が生まれることは、社会常識的に見てごく当たり前のことで、これを理由として賃貸借契約を解除することができるとする特約は、賃借人に不利な特約といえるでしょう。
従って、この特約は無効のもので、法律上は何ら効力がなく、アパートを立ち退く必要はありません。
では、「子供が生まれたら1ヵ月分の家賃を家主に払う」という特約がある場合はどうでしょうか。
上の場合と異なり、家主に支払う額が適切なものであれば、特約は有効といえるでしょう。
大人だけが住んでいるのと異なり、子供がいる場合には部屋の使い方や傷み具合が相当に違います。こうした場合、家屋の補修費として、それに見合うだけの金銭を支払うことを予め約束することは、必ずしも賃借人に一方的に不利な特約とはいえないからです。
もっとも、その金額があまりに多額である場合には、その特約は公序良俗に反して無効なものになると考えられます(民法90条)。
具体的に、適切な額がどのくらいかということは、部屋の構造や使用状況などによって変わってきますが、普通の場合、家賃の1ヵ月程度のものはやむを得ないのではないでしょうか。