Q.
転勤の際、期間を5年と定めて自宅を貸したのですが、急遽、転勤先から戻ることになりました。この場合、借家契約を解約することはできないのでしょうか?
A.
上述のように、定期建物賃貸借契約を締結した場合、事前の通知を行えば、期間満了をもって賃借人から建物の明渡しを求めることができます。しかし、期間満了前の解約については、特別な定めがなく、借地借家法の原則に従うことになります。
借地借家法は、賃貸人からの解約について、「正当の事由」がなければならないとしています(同法28条)。問題は、どのような場合に「正当の事由」があるといえるかですが、判例は「賃貸人および賃借人双方の利害得失の比較考察のほか、公益上、社会上その他各般の事情も斟酌しなければならない」としています。
たとえば、賃貸人が賃借人のために代わりの住居を用意するとか、立退料を交付したというような事情があれば、賃貸人の正当事由が認められやすくなるでしょうし、賃貸人にその住居を利用する特に差し迫った事情がなく、賃借人にその住居で居住する必要性が高い事情がある場合には、正当事由が認められにくくなるといえます。
なお、賃借人からの解約については、床面積200平方メートル以内の建物の場合、賃借人が転勤、療養、親族の介護その他のやむをえない事情により建物を使用することが困難となったときは、解約の申し入れをすることができ、この場合、解約の申し入れの日から1か月を経過することによって賃貸借契約は終了することになります(借地借家法38条5項)。