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ストーカー規制法

平成12年5月18日 成立

 平成12年5月18日、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(ストーカー規制法)が成立し、同じ月の24日に公布されました。

 この法律は平成12年11月24日に施行されます。

 4人に1人が被害にあっているというストーカー行為。早速、法律制定の舞台裏と、この法律の概要をみてみましょう。

犯罪として把握困難な行為

 毎晩のように無言電話がかかってくる、自宅に帰ろうとするときいつも誰かにつけられている、郵便受けに定期的に汚物が送られてくる、被害者にしてみればたまったものではありません。

 このような迷惑行為だけでは被害がすまない場合もあります。 皆さんもよくご存知でしょうが、平成11年10月に埼玉の桶川で起こった女子大生殺害事件もストーカー行為がエスカレートした事案です。

 ストーカーは付きまとう等の典型的なものだけでなく、殺人、傷害などの凶悪事件に発展する危険が大きく、深刻な社会問題となっているのです。平成11年だけでも一万件近い相談が警察にありました。

 このように、深刻な問題であるにもかかわらず、一般にストーカー事件では個々の行為は犯罪として把握するのは困難なものが多いという特徴があります。

 殺人や傷害といった事件にまでエスカレートした場合には刑法で罰することができますがそれでは手遅れです。

 また、初期段階のストーカー行為は、軽犯罪法での取り締まりも可能ですが、罰則が軽く、ストーカー対策としては効果が疑問です。

 また、男女間の争いには、警察はできるだけ介入しないという民事不介入の原則から、実際犯罪にあたるストーカー行為であっても警察が動きださないことが多いといえます。

 実際、警察に相談のあったケースの約7割が「復縁や交際を迫る」もので占めているといわれ、加害者と被害者が面識のあるもの同士であるケースが多いために、「うちわもめ」と判断され、警察も検挙に躊躇する場合が多かったのです。最近メディアを騒がせた警察の不祥事にはこのようなことも原因のひとつとしてあったのではないでしょうか。

 そこでストーカー行為がエスカレートするのを未然に防止し、被害者の平穏な生活を守るため、ストーカー規制法が成立したのです。

ストーカー規制法の射程は

 本法の規制の対象となる行為は、「つきまとい等」と「ストーカー行為」です。

 「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の行為の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で次の 1. ~ 8. までのいずれかに該当する行為をすることをいいます。

  1. つきまとい、待ち伏せ、見張り
  2. 行動を監視していると告げる
  3. 面会その他義務のないことを要求
  4. 著しく粗野又は乱暴な言動
  5. 無言電話、連続で電話、FAXを送りつける
  6. 汚物、動物の死体などを送りつける
  7. 名誉を害することなどを告げる
  8. 性的嫌がらせをする

 この「つきまとい等」を同一人物に対して繰り返して行うことが、「ストーカー行為」になります(2条)。

 そして、本法はつきまとい等を3条で禁止し、3条に違反するつきまとい等があった場合、被害者の申し出に応じてこれに対して警告を発することができるとしています(4条)。

 この警告にも関わらずその行為が続く場合、公安委員会がストーカーから直接事情を聴いて、禁止命令をだすことができます。

 この禁止命令にも関わらず、この命令に違反してストーカー行為が行われた場合には、被害者の告訴があれば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます(14条)。

 また、警告等の手続をとっていたのでは、被害者の身体等が害されてしまう等緊急の必要があれば、公安委員会は相手から聴問、弁明の機会を与えなくても仮の命令をだすこともできます。

 この仮の命令に違反したばあいも禁止命令違反と同様の罰則があります。

 さらに被害者が以上のような手続を踏まなくても、ストーカー行為について直接警察に処罰を求めることも可能です。

 この場合被害者の告訴があれば直ちに捜査が開始され、ストーカーを6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処することができます。

この法律の問題点

 まず、人には好きな人に告白する自由や、勝手に町を歩く自由があるのは当然ですが、本法がかかる人間としてごく自然な行為まで規制の対象にしてしまい、市民の自由に対する警察の過度の介入をもたらすのではないかとの懸念があるといえるでしょう。

 警察が、本法を別の目的に利用する危険もないとはいえません。この点については、現場の警察官の教育等、警察組織の厳正な法の運用に期待することになるでしょう。

 また、被害者がストーカーから逃れたと思っても、本法によるとストーカーは比較的すぐ出所できるので、また同じような目にあわされないとも限りません。

 さらに、ストーカーが会社の同僚であったなど、警察に言いにくい場合も考えられ被害者が泣き寝入りしなくてはならないケースも考えられそうです。この場合探偵社等に依頼することにより、解決する方法もありますが、この方法にも限界があるので、被害者は、勇気をもって警察に申し出るべきでしょう。

 このようにストーカー規制法は、以上のような問題を含みながらも成立しました。

 この法律が成立したからといって、ストーカー被害がなくなるわけでもありませんが、ストーカー被害のひとつの対策となることは間違いないでしょう。

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