インターネットのホームページを利用して本を注文しましたが、違う本が届いてしまいました。どうやら商品番号「3」の本を注文したつもりが、「6」と入力したのが原因のようです。
この場合、契約をなかったことにすることはできないでしょうか。
まず、インターネット上での商品購入は通信販売にあたるので、特定商取引法に定められているクーリングオフ(無条件の契約撤回)はできません。通信販売では、訪問販売のようにセールスマンの巧妙な話術に惑わされてよく考えもせずに買ってしまった、というようなことが起こらないからです。
ホームページ上の注文欄に表示されたあなたの意思は、商品番号「6」の本を購入するとされていますが、あなたの真意は「3」の本であることから、表示と真意に食い違いがあるといえます。こうした食い違いを法律上「錯誤」といい(民法95条)、一定の場合、表示を無効とすることができる、つまり契約をなかったことにすることができます。
あなたは「6」の本であったら購入しなかったでしょうから、要素の錯誤があるといえます。ただし、錯誤による意思表示の無効が認められるためには、申込に際し、重大な過失がなかったことが必要となります(民法95条但書)。
多くの場合、注文画面の次に注文した本のタイトルや冊数などを確認する画面が表示されます。この時点であなたが食い違いに気づかず、「確認」ボタンを押したとすれば、あなたに重大な過失があるといえるでしょう。したがって、この場合には、錯誤無効の主張は無理です。
これに対し、確認画面が表示されなかったり、表示がされても、その内容が確認しづらいような場合には重大な過失はないといえる余地があると思われます。この場合には、契約の無効を主張しえます。
このほか、注文が送信されていないと思い込んで「注文」ボタンを複数回押してしまい、商品が複数届いた場合にも、錯誤による契約の無効を主張できる場合もありますが、重大な過失があるとされるケースがほとんどでしょう。
現在のところ、こうしたトラブルを未然に防ぐためには、消費者の側が注意を払うしかありませんが、業者に確認画面の表示を義務付けたり、一定の場合にクーリングオフを認めるなどの法整備が検討されています。