子供がいる夫婦が離婚する際に動くお金として、養育費・慰謝料・財産分与がありますが、それぞれの違いがいまいちわからない方も多いようです。そこで今回は、それぞれの違いについて説明します。
まず、養育費ですが、これは親族間の扶養義務(民法877条)に基づいて、親から子供に渡されるお金です。離婚の際に話し合われるので、子供を引き取る側の親の権利だと思われがちですが、子供の権利を親が代わりに行使しているにすぎません。ですから、夫婦間で養育費を支払わないことを合意したとしても、子供は親に対して養育費を請求することができます(ただし、過去の養育費については請求できないという見解が有力です)。
次に慰謝料ですが、これは婚姻関係を破たんに至らせた配偶者に対して請求できるもので、不貞行為などが典型例です。離婚には慰謝料がつきもののように思われますが、性格の不一致のように、どちらか一方に責任があるというものでない(あるいは双方に責任がある)場合には、慰謝料は発生しないこともあります。ただ、「解決金」などの名目でお金がやり取りされることがあります。注意すべきなのは、慰謝料の請求は、離婚から3年以内にしなければならないということです。しなかった場合には時効により請求できなくなります。
最後に財産分与ですが、これは夫婦が婚姻後に得た共有財産を、それぞれの貢献度に応じて分けるものです。妻が専業主婦であっても、妻の協力によって夫が稼いできたと考えられるため、2分の1ずつとすることが多いとされています。銀行口座や不動産の名義にかかわらず、共有財産と判断されれば分与の対象となりますが、離婚から2年以内に請求しなければ、時効により請求できなくなりますので、注意が必要です。
これらとは別に、離婚前から別居していたような場合には、その間の生活費を婚姻費用として請求することができます。これは、夫婦間の相互扶助義務(民法752条)に基づくものです。
これらのお金については、離婚の際に話し合いで決めることができますが、まとまらない場合には家庭裁判所の調停を利用して決めることもできます。その場合、離婚の調停と一緒に行われることが多いですが、それぞれ別個に調停を申し立てることも可能です。