性同一性障害者の苦しみの根本は、自分の身体的・社会的な性別と、心理的な性別が一致していないことにあります。
これを埋める手段のひとつとして、社会的な性別を心理的な性別に合わせるという方法が考えられますが、そのためには次の条件をすべてクリアしていなければなりません(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項)。
- 20歳以上であること
- 現に婚姻をしていないこと
- 現に未成年の子がいないこと
→ 平成15年の特例法制定当初は「子がいないこと」とされていたのですが、過去に子をもうけた性同一性障害者は生涯性別変更ができない状況であったため、改正を望む声が寄せられ、平成20年にただの「子」から「未成年の子」へと改正されました。
未成年の子は、親の性別変更で受ける影響が大きいため、条件に残されたものと考えられます。
ただ、これについては、当条件の完全撤廃を求める声、条件緩和に反対する声、両方が存在します。 - 生殖腺がないことまたは生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
- 他の性別の性器部分に近似した外観を備えていること
→ 生殖機能をなくし、性器を形成して性転換手術を終えている必要があります。
以上を満たした性同一性障害者は、診断結果や治療経過などが記された医師の診断書を提出し、性別変更の審判を請求することができます(同2項)。
ちなみに、本人の親や兄弟など、周囲の人間が性別変更に反対していても、家庭裁判所の認可は問題なく下ります。
性別は人格にかかわる重大事項であるため、本人が決定すべきだからです。