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ホルモン治療や性別適合手術を受けられるのはどんな人?3

~ホルモン治療・性別適合手術それぞれに特有の条件とは~

 今回も引き続き、性同一性障害の患者が身体的治療にあたって求められる条件の説明です。
これまではホルモン治療・性別適合手術に共通の条件ばかりでしたが、これからは、年齢など、それぞれの治療法特有の条件を示していきます。

■ホルモン療法・性別適合手術、各治療法に特有の条件

◆ホルモン療法

・ 年齢
ホルモン療法開始可能年齢は、従来は18歳とされていましたが、第4版ガイドラインで、条件付きで15歳に引き下げられました。

 また、二次性徴の発来に著しい違和感を持つ者に対し、二次性徴の抑制を目的とした治療ができることになりました。
対象となるのは、Tanner2期~4期にある者です。
(※「Tannerの性成熟度分類」とは、身体の性徴にかかる部位の発育を5段階に分けて評価するもので、1期が二次性徴前、5期が成熟した成人の身体です。したがって、2期は二次性徴の初期段階を、4期は成人の一歩手前の段階を表しています。)

 ただし、18歳未満の子どもにホルモン療法を開始するには相応の慎重さが求められるため、2年以上にわたってジェンダークリニックで経過観察し、特に必要を認めた者に限定するとされています。
さらに、ガイドラインで治療可能年齢に達していても、未成年者は親権者など法定代理人の同意が必要ですし(親権者が2名の場合は2名分の同意が必要)、若年者の場合は成人に比べ本人の意思能力が不完全であるため、医療関係者による治療の適否の判断がより厳格に求められます。

◆性別適合手術

・ 年齢
ホルモン治療は基本的に15歳以上で受けられましたが、性別適合手術は20歳以上になるまで受けられません。

・ 実生活経験
ここで求められている「実生活経験」は、検討や見通しだけではなく、「プライベートな場所では、実際に希望する性別での生活を、本人が望むスタイルでほぼ完全に送っている」という実績です。
さらにこの状態は、後戻りなしで少なくとも1年以上続いている必要があります。
この1年以上という観察期間は絶対ではないものの、この条件を満たしていることが十分伝わる状態でなければなりません。
ただし、ホルモン療法など他の身体的治療を受けていない、希望しないといった場合には、念のためより長期の観察期間を設けることが望ましいと考えられています。

 以上に見てきた数々の条件、幾重にも重なっているため「ハードルが高いな」と思われた方も多いでしょうが、このガイドラインはあくまで医療者に対する治療指針であり、治療を受ける者に厳格に強いる目的で作られたものではありません。
実際、自力でホルモン剤を入手して服用している人も存在しますし、海外で性別適合手術を受ける人もいます。
ただ、我が国では、これだけの条件を踏まえて初めて安全性が保てると考えられているのです。

credit:stevendepolo via photopin cc

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