現代では性別変更が認められてはいるものの、社会的にはまだ、性別変更した人が生来の男女と完全に同じ扱いを受けているとはいえません。
たとえば最近では、静岡県湖西市の会員制ゴルフ場に入会を拒否された会社経営者の女性(2年前に男性→女性に性別変更)が、運営会社などに約786万円の損害賠償を求める訴訟を起こしています。
会社経営者は、ゴルフ場の正会員権一口に相当する運営会社の株二株を215万円で購入し、入会条件である紹介者を整えたうえで、戸籍謄本を含む必要書類をゴルフ場に提出しました。
この戸籍謄本の記載から会社経営者が元男性であると知ったゴルフ場側は、5人の理事による合議の結果、会社経営者の入会を拒否する決定を下しました。
主な理由は「更衣室の利用で女性会員から苦情が出るのを懸念した。前例がなく難しい問題で、解決策が見つからない。」というものです。
ゴルフ場によっては、更衣室のほかに大浴場もある場合があり、それらを共有するにあたっては周囲の理解が不可欠です。
また、ゴルフ場の会員制クラブなどは閉鎖的な同好の士の集まりであって、そこに公共機関や公衆浴場のような一定の社会性・公益性を求めること自体可能かという疑問もあります。
ただ、性別変更にあたっては変更後の性(今回の会社経営者ならば「女性」)に合わせた性器を形成しておく必要がありますし(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項5号)、その理由も「公衆の場で社会的混乱を生じさせないため」というのですから、法は性別変更した人が浴場や更衣室を利用することも想定しているといえるでしょう。
本件はまだ係争中ですが、「性別変更した人を実際の社会がどう受け入れるか」を方向付ける事案になりそうです。