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受刑者と性同一性障害 3

~性別変更していない場合、持ち物や格好は望む性に合わせられる?~

 きっと皆さんも、テレビなどで刑務所内の映像をご覧になったことがあるでしょう。
 男性受刑者は髪を丸刈りにしていましたよね?
 それに対して女性受刑者は、髪を伸ばすことも許されています。
 ここでも、性別による扱いの違いがみられますね。

 前回、戸籍上の性別変更を行っていない受刑者に対する処遇は工夫が必要だという話をしましたが、受刑者本人の格好や持ち物に関しても細かな配慮が必要になってくるのです。

■調髪

 調髪というのは髪を切ったり整えたりすることです。
 冒頭でも触れましたが、男性受刑者は丸刈りに近い短髪、女性受刑者は「華美でなく、清楚な髪型」とされています(被収容者の保健衛生及び医療に関する訓令6条)。

 ここでも、どんな髪型にするかは戸籍上の性別に合わせるのが基本です。
 性別は女性で心は男性の受刑者の場合、「男性受刑者のように短髪にしたい」と本人が望むのならば、上記の規定に反しないので問題ありません。

 しかし、性別が男性で心が女性の受刑者が調髪を拒んだ場合は、規定と異なる対応をすることになるのですんなりとは認められません。
 本人の精神状態や過去の生活歴等、また、他の受刑者との均衡性から集団処遇が困難になることをも考慮したうえで、調髪を行わないことが処遇上有益である場合に限るとされています(刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則26条4項)。

■衣類

 施設から貸与する衣服も受刑者が自費で用意する衣類も、「被収容者に係る物品の貸与、支給及び自弁に関する訓令(以下「物品訓令」)」別表に示された品物しか利用できないのが原則です。
 これらは性別によって使えるものが違うのですが、例外として、外形変更済みの者で豊胸手術をしているために女性用下着の着用が必要であるなど、個別の事情がある場合は使用が許可されます(物品訓令9条の2)。

■日用品

 日用品もまた、施設から貸与・支給されるものか、受刑者が自費で用意したものかを問わず、戸籍上の性別によって使用できるものが分けられています。  
 ただし、先ほど「調髪」の項目でも説明したとおり、戸籍上男性の性同一性障害者の場合、調髪を行っていない可能性があります。
 こうした者に対しては、シャンプーを支給・貸与したり、くしや整髪料を使用させるなど、柔軟な対応が認められています(物品訓令9条の2)。

 矯正施設側も、必要に応じてカウンセリングを実施するなど配慮はしていますが、性同一性障害者の矯正処遇に関してはいまだ色々な場面で不具合があるため、さらなる変更を求める声も多く聞かれます。
 ただ、矯正施設という刑務所の性格上、他の受刑者とのバランスをとる必要もあり、人権と単なる自己主張との見極めは大変に難しい問題といえるでしょう。

credit:cliff1066™ via photopin cc

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