憲法24条1項は、「婚姻は両性(つまり男性と女性)が交わすもの」と考えています。
性同一性障害者であっても、法律上の条件をクリアして性別を変更した人は、ほとんどの場合パートナーと異性になりますので、結婚が可能です(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律4条)。
しかし、性別を変更していない人や、性別変更に伴ってパートナーと同じ性別になった人(性同一性障害かつ同性愛の者)は、パートナーが同性なので結婚できません。
最近は異性愛者でも結婚しない人が増加していることから、同性婚制度の必要性を理解し難いかもしれませんが、配偶者としての地位がないことでさまざまな不便が生じています。
今回は、既婚の異性カップルA・B、婚姻関係にない同性カップルP・Qを例に、両者の違いをみてみましょう。
■民間企業の夫婦向けサービスを受けられない
いくらP・Qが夫婦同然の間柄であっても、同性である限り法律上の夫婦になることはできませんので、民間企業が提供している家族・夫婦向けのサービスは受けられません。
たとえば、夫婦を対象にした、金融機関の「夫婦連帯債務型ローン」。
先に示したA・Bと、P・Qはどちらも、共働きであると仮定します。
既婚のA・Bならば、この夫婦連帯債務型ローンを利用して2人の収入を合算させることができますので、その合算収入に応じた額の融資を受けられます。
一方、P・Qは、夫婦連帯債務型ローンを使うことができません。
収入を合算することができず、PもしくはQ単体の収入をもとに融資額が決定されますので、一般にA・Bと比べて融資額が低くなりがちです。
■医療機関で家族として扱われない
カップルの片方が大きな病気や怪我をして入院・手術などの重大治療を受ける場合、パートナーの多くはできるだけ傍で支えたいと望むことでしょう。
通常、法律上の家族(配偶者や親・子など)には、面接や医療上の同意などが認められていますから、Aが病に倒れれば、Bが手術の同意書を書いたり、看病に行ったりとサポートができます。
しかし、同性カップルの場合は、Pが病に苦しんでいても、Qは、家族でないという理由から、病状を教えてもらったり、治療方針決定に参加したり、様子を見に行けるとは限りません。
対応は各医療機関に任されており、病院によってはこうした関わりを拒否されることもあるのです。
■財産が受け取れない
カップルの片方が死亡したとき、よく問題になるのが財産の配分です。
既婚のA・Bであれば、Aが死亡しても遺された配偶者Bに法定相続権があるため、2人で築いた財産の少なくとも2分の1はきちんとBに配分されます(法定相続人の人数・関係性によって配分は変わります)。
しかし、同性のカップルの場合、Pが死亡しても、法律上の配偶者でないQには法定相続権が認められません。
この点、Pが遺言で「Qに遺贈する」と書いておけば、Qも財産を受け取ることができます。
ただし、遺言は絶対のものではなく、もしもPの親族が自分の相続分(「遺留分」、民法1028条以下)を主張すれば、これらの親族にも法定の割合で財産を配分せねばなりません。
当然ですが、これはQの受け取る財産額にも影響を及ぼします。
このように、実質的にA・Bと変わらぬ生活を送ってきたとしても、法の後ろ盾がないP・Qの関係には十分な保護がなされない現実があります。
次回は、同性カップル保護のための世界の取り組みについて説明します。