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本人の意識不明の間に受理された婚姻届の効力

最高裁昭和45年4月21日第3小法廷判決

はじめに

 結婚を誓っていた二人。にもかかわらず、一方が突然病魔に襲われ、意識不明に陥ったら...。

 幸い、意識あるうちに代書した婚姻届がある場合、これを提出すれば結婚をすることができるのでしょうか。

 当事者としては、何とか生きているうちに、結婚を遂げたいはず。しかし結婚は「相続関係」という法律問題に変化を及ぼします。

 こんな時点で婚姻届を提出されると黙ってはいられない遺族がいる場合があるのです。

どんな紛争か?

 木村拓郎と工藤静子は、将来婚姻する約束で性的交渉を重ねてきたものの、同棲まではしていなかった。

 ある日、木村拓郎は外出中突然吐血して倒れ、手術を受けはしたが、肝硬変による食道動脈瘤の破裂のため、手の施しようがない状態であった。

 拓郎は入院中、静子や拓郎の兄に対して、正式に婚姻届をなすことの同意を求めたので、拓郎の兄は拓郎の頼みにより婚姻届に拓郎の名を代書して実印を押捺した。

 これに、静子も署名捺印して区役所に提出された。

 その後、拓郎は息を引き取った。ところが、拓郎の母は後日この事実を知り、拓郎の年金や共済給付金目当ての婚姻だと考え、「婚姻届の提出された時刻には、拓郎は瀕死の状態であり、婚姻意思はなかった。」として、この婚姻の無効を確認する訴えを提起した。

裁判所の判断

 受理前に翻意したなど特段の事情がないかぎり、婚姻は有効。

コメント

 婚姻(=結婚:法律では婚姻という言葉が使われます)は婚姻届が受理されることが要件であり、さらに両当事者に結婚したいという意思(婚姻意思)が必要です。

 この婚姻意思の必要とされる時期として、従来、結婚届の作成時と届書提出・受理時の双方の時点で必要とされてきました。

 ところが、本判決では、翻意がない限り、届書作成時の婚姻意思の存在でも足りるとの姿勢を明確にしたとみる余地がある点で注目されています。

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