いじめ、虐待、犯罪による被害、子供による犯罪など、子供を取り巻く環境は非常に厳しいものとなっています。こうした問題への対応や少子化対策の観点から、近年、子供に関連した法令の新設や改正が相次いでいます。
それに伴い、行政上の援助なども非常に複雑なものとなっており、「制度がわからなかったので利用できなかった」という声も少なくありません。子供の権利や利益を守っていくためには、どのような法律が存在しているのかを予め知っておくことが大切になってきています。
本連載では、現在の子供をめぐる問題に法律がどのように対応しようとしているかについて、事例などを交えつつ紹介していきます。
今回は、話の大前提となる「子供とはどのような者を指すか?」ということから説明したいと思います。
「子ども」?「児童」?「未成年者」?
実は、子供を指す用語が、法律の中にはいろいろあります。
「子ども」という用語は、一般的な用語として特に定義されずに使われることも多いですが、子ども・子育て支援法では、「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者」と定義されています(同法6条)。
「少年」は、20歳未満の人(少年法2条)、小学校就学の始期から満18歳に達するまでの人(児童福祉法4条)など、法律で異なります。
「未成年者」とは20歳未満の人を指しています(民法4条、未成年者喫煙禁止法1条、未成年者飲酒禁止法1条)。
「児童」については、概ね18歳未満の人を指すようですが(児童福祉法4条・児童手当法3条・児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条・児童の権利に関する条約1条)、一部の法律では6歳以上13歳未満だったり(道路交通法14条)、15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで(労働基準法56条)、20歳未満(母子及び父子並びに寡婦福祉法6条)というように、法律によってまちまちです。
他にも、「乳児」(1歳未満)、「幼児」(満1歳から小学校就学まで/6歳未満)といった言葉もあります。
なお、2015年6月に選挙権年齢を現在の20歳以上から18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が成立しました。
その法律の附則には、選挙権年齢引き下げを踏まえて、民法の成人年齢や少年法の適用年齢などについても検討を行い、必要な措置を講じること、と定められています。
改正公職選挙法の成立を受けて、自民党の特命委員会が9月25日、民法の成人年齢や少年法の適用年齢を18歳に引き下げる提言を首相に行いました。当初は飲酒・喫煙や競馬・競輪といった公営競技の禁止年齢も18歳に引き下げる提言を行う予定でしたが、世論の反発を受け結論を見送り、賛否両論を併記するにとどめました。
それでは上記の定義を前提に、いろいろな法律で子供がどのように扱われているかをみていきたいと思います。
刑法
子供(10歳)が友達に怪我を負わせてしまったけれども、警察につかまりますか?といった質問がされる場合があります。皆さんがご存知のとおり、答えは「いいえ」です。どうしてでしょう?
刑法では、刑事責任を問われる年齢を定めた条文があります。14歳に満たない者の行為は罰しないと定めています(刑法41条)。
14歳に達しない者は、心身ともに未成熟であって、物事の是非や善悪を判断する能力(これを是非弁別能力といいます。)とその判断にしたがって自分の行動を制御することの出来る能力(これを行動制御能力といいます。)を十分にもっておらず、このような年少者に刑罰を加える事によって正常な発育を阻害してしまうことは良くないという趣旨で、このような条文が定められたと言われています。
次回は「少年法」や「民法」等をご紹介させていただきます。