前回に引き続き、子供への虐待を防止するための法律について取り上げたいと思います。
児童虐待防止法
前回、児童虐待防止法では、児童虐待を受けたと思われる子供を発見した場合は、「通告」する義務があるところまで述べました。
通告を受けた市町村長、福祉事務所や児童相談所は、必要に応じて近隣住民や、学校の教職員等の協力を得ながら、虐待を受けている子供との面会その他子供の安全の確認を行うための措置を講じます(児童虐待防止法8条)。
都道府県知事は、児童虐待が行われているおそれがあると認める場合は、保護者に対して子供を同伴して出頭することを求めることができ(法8条の2)、子供の住所又は居所に立ち入って、必要な調査をすることができます(法9条)。
さらに、保護者が出頭や立入調査を拒み続けるような場合は、都道府県知事は裁判所の許可を得て、解錠等を伴う立入り(臨検捜索)をすることができます(法9条の3)。子供の安全の確保のために、鍵や扉を壊して中に入ることができる場合があるということです。
平成20年度から平成25年度までの6年間で、出頭要求が187事例、再出頭要求が19事例、臨検・捜索は7事例となっています。
このような手段を講じて虐待を受けている子供を無事保護しても、一時保護を行った直後に保護者が強引に児童を連れ去ろうとするケースが多発しました。
また、保護者の同意を得て、施設に入所させる場合に、子供の心身の状態から判断して保護者との面会や通信を制限することが望ましい場合もあります。
法は一時保護や保護者の同意による施設入所等の間、児童相談所長が保護者に対して面会や通信を制限することができるようにしています(法12条等)。
さらに、面会・通信を制限している場合でも、制限に反して保護者が子供の学校への登下校時に接触する、強制的に家に連れ帰ろうとするなど、施設外での接触や強制引取といったケースが後をたちませんでした。
そこで、法は、都道府県知事に一定の要件が満たされる場合には、6ヶ月を超えない期間で、保護者に対して子供への接近禁止命令ができるようにしています(法12条の4)。この命令に反した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金と重い罰則が定められています(法17条)。
また、施設入所の措置解除が行われ、子供が保護者の元に戻った後、再度虐待が行われて死亡するという痛ましいケースが見られたことから、法は、施設入所等の措置を解除するにあたっては、児童福祉司等の専門家の意見も聴いた上で慎重に行うことを求めています(法13条)。