前回に引き続き、子供への虐待を防止するための法律について取り上げたいと思います。
児童福祉法
児童福祉法は、昭和22年に制定され、子供の福祉の積極増進や子供の健全育成を基本理念として、公的機関の組織や各種施設等の基本原則を定めた、児童福祉の総合法というべき法律です。児童福祉法における「児童」とは、満18歳以下の者となっています。
1章では、児童福祉議会の設置や、児童福祉士・児童委員・保育士の養成や資格要件などを定めています。
2章では、児童の療育や、居宅生活の支援、母子生活支援施設や保育所の入所について、さらに障害児施設給付金や障害児施設医療費の支給など、障害児の支援に関して定めています。
この児童福祉法の中でも、子供を虐待から防止するため規定が定められています。
児童福祉法は、保護者のない児童や虐待など保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を「要保護児童」と定義して(法6条の3第8項等)、そのような児童を発見した場合には、市町村長、都道府県福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならないとされています(法25条)。
児童虐待防止法にも同様の規定がありますが、こちらでも通告義務が課されています。通告を受けた機関は、必要に応じて要保護児童等の状況の把握を行います(法25条の6)。
通告を受けた場合の対応としては、通報があった子供を保護者の元に置いたままで指導を行うほか、子供の保護者の児童家庭支援センターに指導を委託したり、さらには、子供を小規模住居型児童養育事業(ファミリーホームと呼ばれています。)を行う人や里親に委託するという措置をとることも出来ます(法27条等)。
これらの措置をとるために時間がかかりそうなときは、緊急の措置として、児童相談所長が子供を一時保護することもできるようになっています(法33条)。
法は、保護の担い手となる里親やファミリーホームに対して、子供たちを家族の一員として扱い、自主性を尊重し、基本的な生活習慣を確立するとともに、豊かな人間性及び社会性を養い、子供たちの自立を支援することを求めています。
3回にわたって子供の虐待を防止するための法律を見てきましたが、このように法律が定められていても、通報がなければ、虐待を受けている子供を救うことはできません。
他人の家庭の事情に踏み込むことはちょっと...と二の足を踏んでしまいがちですが、虐待されている子供を助けられるのは目撃した人だけということを肝に銘じて、勇気を持って行動する必要があります。
厚生労働省は児童虐待防止に力を入れており、2015年11月に「児童虐待防止キャンペーン」を全国的に行いました。同年7月に児童相談所の「全国共通ダイヤル」を設置し、虐待かと思った時にすぐに児童相談所に通告や相談ができるようにしています。
子どもたちや保護者のSOSをいちはやくキャッチするという意味も込めて、全国共通ダイヤルの番号は「189(いちはやく)」の3桁となっています。
困ったときには、速やかにこの番号にご相談してください。