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実子として届けた他人の子

Q.

 私達夫婦は子宝に恵まれなかったため、医師の仲介で、よその子供を自分の子供として出生届を出して育ててきました。ところが、そうして育てた息子は、大学まで出してやったのに、家業を継ごうともせず、ぶらぶらしています。お金の無心はしょっちゅうですし、気に入らないと、私達に暴力をふるうこともあるのです。

 怒った夫は、「出生の秘密をばらして、こんなやつとは縁を切ってやる。」とまで言っています。今さら、そんなことができるのでしょうか。

A.

 まず、採りうる手段としては、家庭裁判所に対して親子関係不存在の調停を申し立てる必要があります。

 これでうまくいかなければ、地方裁判所に対して、親子関係不存在確認の訴えを提起できます。

Q.

 事実を知った息子は、「出生届まで出している以上、養子縁組としての効力は認められるはずだから、養子としての身分まで否定できるはずがない。」と開き直っています。
  このような息子の言い分は通るのでしょうか。

A.

 これは、わらの上の養子が認められるか、すなわち、虚偽の出生届に養子縁組としての効力が認められるか、という問題です。

 最高裁判所の判例によると、認められないということになります。

 とすれば、あなたのご主人が親子関係不存在確認の訴えを提起された場合、あなたの息子さんの言い分は通らず、親子関係がないという判決がなされることになります。

 したがって、あなたのご主人のいうように、縁を切ることはできるのです。

Q.

 しかし、そうなると、息子が孝行息子だった場合にも、親からこのような仕打ちができることになりませんか。

 それはあまりにひどいことだと思いますが...。

A.

 そうですね。このため、わらの上の養子であっても、親子らしい生活事実が存在する場合には、養子としての身分を子供に認めようという学者も多いのです。しかし、このような考え方は判例では採用されていません。

 もっとも、相続争いの際にたまたまこのような事実が発覚して、子供に相続させないがために、親子関係不存在確認の訴えが提起されるような場合には、権利の濫用としてこのような訴えが認められない場合もあるでしょう(民法1条3項)。あるいは、事実上の養親子関係の不当破棄として子供に慰謝料を払うことになる場合もあるでしょう(民法709条710条)。

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