法律上、どのような行為がセクシュアルハラスメント(セクハラ)とされているのですか?
セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、法律上、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題」といった形で取り上げられています(男女雇用機会均等法21条)。
同法を受けて、厚生労働大臣が定めた指針によると、職場におけるセクシュアルハラスメントには、
- 職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(以下「対価型セクシュアルハラスメント」という。)
と、
- 当該性的な言動により女性労働者の就業環境が害されるもの(以下「環境型セクシュアルハラスメント」という。)
があるとされています。
ここにいう「職場」とは、「事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、『職場』に含まれる」とし、「性的な言動」とは、「性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この『性的な内容の発言』には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、『性的な行動』には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれる」とされています。
以上から、
- 出張中の車中において上司が女性労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、当該女性労働者について不利益な配置転換をすること
- 営業所内において事業主が日頃から女性労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該女性労働者を降格すること(以上は対価型セクシュアルハラスメントの例)
- 事務所内において事業主が女性労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該女性労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること
- 同僚が取引先において女性労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該女性労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと(以上は環境型セクシュアルハラスメントの例)
といった行為がセクハラの典型例にあたるといえます。
また、容姿やライフスタイル(結婚・妊娠など)に関する発言も、発言者の意図がどうであれ、それを聞いた側が不快に思い、就業環境が害されたといえる場合には、その程度に従い、セクハラにあたる場合もあると考えられます。
セクハラの被害者が加害者に対して、人格権侵害に基づく不法行為責任(民法709条)を追及できるのはもちろんですが、セクハラ行為と会社の業務との間に関連性が認められる場合には、会社も加害者とともに不法行為責任を負います(民法715条:使用者責任)。さらに、こうした関連性が認められない場合であっても、使用者には労働者が働きやすい職場環境を保つ労働契約上の付随義務があるとして、使用者に債務不履行責任(民法415条)を認めた裁判例もあります。