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企業のリスクマネジメント ~セクハラについて(4/4)

第4 セクハラ対策

1 セクハラ対策には、「セクハラの予防」と「実際に生じたセクハラへの対応」の2つの側面がありますので、順次説明していきます。

2 セクハラの予防について
(1) セクハラ予防の第一歩は、まず事業主が「セクハラは絶対に許さない。」という企業方針を明確に社内に打ち出すことから始まります。
 特に中小企業などにおいては、事業主の力強い言葉には、極めて大きなセクハラ予防効果が期待できます。これは口頭ではなく書面化し(就業規則、社員手帳、掲示板等)、社員に周知徹底することが必要です。
 その際、単にセクハラ防止を宣言するだけでなく、セクハラとは何かから始まって、セクハラ相談窓口や苦情処理手続を説明し、加害者には法的責任追求・懲戒処分等により断固たる姿勢を取ることを明記すると良いでしょう。

(2) そして、セクハラ防止に関する企業方針の明確化と並行して、社内のセクハラの実態を調査することが効果的です。
 これにより、実態に沿った実効性ある対策を可能とするだけでなく、企業姿勢を社員にアピールすることが可能となります。
 また、女性従業員の定着率が悪い企業の場合には、退職者にまで調査の範囲を及ぼすことも視野に入れるべきでしょう。

(3) 更に、社員に対して少なくとも1年に1度はセクハラに関する研修を開催し、企業方針の周知を徹底させることが大切です。
 その際、管理職にはセクハラ対策が人事管理や職場環境整備上の重大問題であり、企業や管理職自身が多大な責任を負担する可能性があるという認識を持たせることが大切です。
 従業員は、管理職とは別にセクハラについての基本的知識とセクハラが生じた場合の対応・手続を説明し、理解させるべきでしょう。
 管理職・従業員問わず、男女間の性に対する意識の相違を理解させるためにも、男女は一緒に受講させ、討議させることが効果的です。

3 実際に生じたセクハラへの対応について

 実際にセクハラが生じた場合、社内で気軽に相談できる制度がなければ、被害者の弁護士等への相談や、告訴・告発、マスコミへのリークを招き、一気に法的問題に発展する可能性が高まります。
 そこで、まず第一段階として、社内にセクハラ専門の相談窓口を設置します。
 そして、この相談段階における相談担当者のアドバイスや相談担当者から加害者への勧告によって問題が解決しない場合に備えて、第二段階として、社内にセクハラ専門の苦情処理機関を設置します。
 この点、セクハラは職場の上下関係に乗じて行われることが多いので、被害者の上司・管理者を相談・苦情処理窓口とすることは好ましくありません。専門の相談・苦情処理担当者・部署を設けたり、社外の専門家(弁護士等)を窓口とする必要があります。

(1) 相談窓口設置の注意点
 まず、相談担当者には、セクハラに対して十分な認識・理解を有した者を複数人選任し、そのうち最低一人は女性とするべきでしょう。公正・客観的な立場で真摯に相談に乗る体制を整えなければ相談窓口設置の意味がありません。相談窓口はセクハラについての法的リスクを軽減・除去するための大切な制度であるという観点から設置することが大切です。
 相談の方法は、面談に限定せず、電話やメール等によるものも受け付け、匿名の相談も受け付けるようにするべきです。
 そして、当然相談者のプライバシー情報の管理は厳格に行い、相談をしたことによって逆に嫌がらせを受けるような二次被害が生じないよう十分に配慮する必要があります。
(2) 苦情処理機関設置の注意点
 相談窓口から苦情処理機関に上げられた事案については、出来るだけ迅速に事実関係の確認・調査が進められるよう準備しておくことが必要です。被害の深刻度や緊急度によっては、調査と並行して、被害者の意思を確認しつつ例えば別の職場への異動や休暇を認めるなどの柔軟性があることが望ましいでしょう。
 事実関係の確認・調査の際には、加害者だけでなく他の従業員からの事情聴取も必要となりますが、その際には、加害者及び被害者の名誉やプライバシーを侵害することがないよう細心の配慮が求められます。
 更に、万が一、被害者が苦情処理に納得せず、加害者や事業主の法的責任を追及する意思を有する場合であっても、決して被害者を責めるようなことをせず、最後まで誠実に被害者の立場に立って事案を処理する態度が重要です。

4 以上のような相談窓口、苦情処理機関を中小企業で設置することは、人員的にも予算的にも困難であるという事情があります。
 しかし、社外の弁護士等を相談窓口、苦情処理機関とすることによって、合理的なセクハラ対策が実現できるでしょう。(終わり)

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