以下の費用のうち、医療費控除を受けることができるのはどれでしょう?
- 将来の就職や結婚を考慮して歯並びを矯正するための費用
- 出産費用
- 角膜矯正療法(オルソケラトロジー)による近視治療にかかる費用
正解 (2)と(3)
自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といい、控除対象額は以下の通りとなります。
(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円
問題は何が医療費にあたるかですが、以下の費用が医療費にあたるとされています(所得税法施行令207条)。
- 医師又は歯科医師による診療又は治療
- 治療又は療養に必要な医薬品の購入
- 病院、診療所又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
- あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師または柔道整復師による施術
- 保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話
- 助産師による分べんの介助
以上をもとに、各項目を検討してみます。
(1)は、治療目的ではなく、容姿を美化しまたは容ぼうを変えることを目的としているため、医療費にあたりません。なお、不正咬合の歯列矯正のように、社会通念上歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象となります(所得税基本通達73-4)。
(2)は、上記の(a)または(f)にあたるので、医療費にあたりますが、出産費用の全額ではなく、出産育児一時金の金額を引いた金額が控除の計算の際に用いられます(上記の「保険金などで補てんされる金額」にあたります)。なお、出産手当金は差し引く必要はありません(所得税基本通達73-8、73-9)。妊婦検診、出産後の検診も医療費にあたります(所得税基本通達73-7)。
(3)は、角膜を矯正して視力を回復させる治療の対価として支払われるものなので、(a)にあたり、医療費にあたります。
なお、近視等の眼の屈折異常を矯正するために眼鏡及びコンタクトレンズを購入した場合のその費用、眼の屈折検査、眼鏡及びコンタクトレンズの処方の費用は、視力を回復させる治療の対価に該当しませんので、医療費控除の対象となりません(最高裁平成3年4月2日判決)。