最近、風営法とダンスをめぐる動きが活発になっています。ひとつは、ダンス教室が風営法の規制対象となるのかという話、もうひとつは、クラブ(DJが音楽をかけ、客がダンスをしたり、お酒を飲んだりする場所)に関する問題です。今回は前者について取り上げます。
どちらの問題も、法律上の根拠は風営法2条1項4号です。同条項は、「ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業」を風俗営業とし、許可なく営業することを禁止しています(同法3条)。
風営法がこれらの営業を規制しようとしているのは、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する」ためですから(同法1条)、ダンス教室などは本来対象外とされるはずなのですが、男女がペアになって行うダンスの中には男女が密着して踊るものもあり、「間違い」が起きる可能性があるということで、必要な講習を受けた指導者の下で行われるものだけが適用除外とされています(同法2条1項4号かっこ書き)。
立法当時、規制対象として想定されていたのは、社交ダンス教室で、指導者がいない状態では「間違い」が起きると考えられていたようです。そのため、全日本ダンス協会連合会など、社交ダンス関連団体の講習を受けることが指導者の要件とされてきました。
しかし、社交ダンス以外のダンスが盛んになり、教室が開かれるようになると、ややこしい問題に直面することになります。社交ダンス以外については、適用除外となる方法がなく、ダンス教室を開こうとする場合、教えようとするダンスとは関係のないダンスの講習を受けたうえで、風営法上の適用除外を受けるか、違法状態でダンス教室を開くしかないのです。
これに対して、当局も、昨年11月に社交ダンス以外の団体による指導者の認定を可能にする風営法施行令及び風営法施行規則の改正を行ったほか、昨年12月にヒップホップや盆踊りなど男女がペアになって行わないダンスについては、規制の対象外とする旨の通知を出すなどの対応を行っています。
しかしながら、上記の改正に従って指導者講習を行う場合、教えるべき「型」の存在が前提となりますが、ダンスの種類によっては、そのような「型」がないものもあります。そこに無理やり「型」を作ることになれば、国が「正しいダンス」を強要することにもなりかねません。世界各地で自然発生的に生まれたダンスについて、日本が標準を定めるというのも、おかしな話でしょう。
結局のところ、条文の原則・例外が変わらない限り、この問題の根本的な解決は難しいといえます。
次回は風営法とクラブの関係について取り上げます。