2004年11月30日、「法、納得!どっとこむ」を運営するNPO法人リーガルセキュリティ倶楽部より、日本放送協会(NHK)会長およびNHK関連労働組合連合会(NHK労連)議長宛に、読者の皆さまからお寄せいただいたご意見とともに「公開質問状」を送付いたしました。
これに対し、2004年12月15日にNHK労連、20日にNHKより回答をいただきましたのでご報告いたします。
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- NHKの受信料問題に関する公開質問状
- NHK・NHK労連からの回答比較記事(2004年12月21日)
- 「再び、NHK問題! ──受信料不払者に対する法的措置の導入について」(2005年10月11日)
なぜいまNHKの受信料が問題となっているのか?
以前からNHKの受信料については、その支払いの根拠について受信料の契約や集金を担う地域スタッフの説明が不十分である等の問題が指摘されていましたが、今年に入ってから職員の経費着服などの不祥事が相次ぎ、また、その調査や処分がなかなか進まなかったことから、これまで受信料を支払ってきた人からも集められた受信料の使途、さらには受信料制度そのものについて問題が投げかけられています。この意味では、一般企業で問題となっているコンプライアンス(法令遵守)と共通の面があります。
そこで今回は、NHKの受信料問題について取り上げることにしました。
そもそも受信料とは何なのか?
NHKの受信料は、放送法32条1項に基づき、日本放送協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者が締結しなければならない受信契約に基づき、NHKに支払う料金のことです。
NHKは、放送法46条1項によって「他人の営業に関する広告の放送」をすることが禁じられているため、業務に必要な費用を受信料という形で徴収することが認められているのです。誤解されがちな点ですが、原則としてNHKは国から費用を受け取っていません(例外的に、国際放送と選挙放送については、放送法が放送を義務づけているため、その費用を国が交付金の形でNHKに支払っていますが、全体の0.3%ほどです)。
では、なぜNHKには広告放送が認められていないのでしょうか。これは、NHKの設立目的と関わってきます。
放送法7条は、NHKの目的について、「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行」うことと規定しています。また、番組の編集について、
- 豊かで、かつ、良い放送番組を放送し又は委託して放送させることによって公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように、最大の努力を払うこと、
- 全国向けの放送番組のほか、地方向けの放送番組を有するようにすること、
- 我が国の過去の優れた文化の保存並びに新たな文化の育成及び普及に役立つようにすること、
を要求しています(放送法44条1項)。これらの要求を満たすためには、NHKが経済的に自立し、他からの干渉を受けないようにする必要があるというわけです。
平成16年度の受信料の収入見込額は6,550億円となっています。
外国にも受信料制度はあるのか?
各国の公共放送の中にも、受信料制度をとっているところがあります。
まず、英国の公共放送であるBBCには、受信料に類似した制度として「受信許可料(TVライセンス)」という制度があり、BBCの収入の95%はこの許可料収入によってまかなわれています。テレビ放送が受信または録画できる機器(テレビやDVDレコーダー、パソコンなど)を使用している世帯が購入の対象で、人口の98%が支払っています(75歳以上は無料)。カラー契約の場合、年間121ポンド(約2万3,500円)で、購入せずにテレビを視聴していることが判明した場合には、最高で1,000ポンド(約19万5,000円)の罰金が科されます。探査車や携帯式の調査機を使って違法利用者をチェックすることもしているようです。
フランスやドイツでは、受信料を主な財源としつつも、補完的に広告放送による収入も得ています。フランスでは「テレビ受信機使用権料」という名目で年間116.5ユーロ(約15,800円)、ドイツでは受信料として月額16.15ユーロ(約2,200円)を徴収しています。
アメリカやカナダには、受信料を徴収して運営されている公共放送はありませんが、交付金や寄付金で運営されている放送局があります。
受信料を支払うのは義務なのか?
法律上、受信料を支払うことが直接に義務づけられているわけではありません。上でも述べたように、放送法32条1項は、受信設備を設置した者にNHKと受信契約を締結することを義務づけていますが、受信料を支払うこと自体は義務づけていないからです。
ただし、NHKと受信契約を締結した場合、受信料を支払うことは契約上の義務となりますから、その意味では「受信料を支払うことは義務」ということになります。
なお、受信料については免除制度が設けられており、約170万件(平成16年度末見込)が支払の一部または全部を免除されています。
実際のところ、どのくらいの人が受信料を支払っているのか?
受信契約件数は、平成16年8月末現在で、38,284,792件となっています(NHKの資料による)。
平成16年3月18日の衆議院総務委員会での質疑によると、事業所等(事業所等では1部屋ごとに1契約)を除いた世帯契約総数は約3,500万世帯、本来契約をしなくてはならない有料契約対象世帯から考えると、契約率は82%、単身世帯では60%と低く、780万世帯以上が未契約で受信をしている計算になります。受信料は月額1,395円(カラー契約の場合、沖縄県は1,240円)ですから、未契約受信者のために毎月100億円以上の収入が失われていることになります。
10月7日、NHKの海老沢会長は、今年9月末時点でおよそ3万1千件(契約数の約0.1%)の支払い拒否・保留表明があったことを定例記者会見で明らかにしました。
- 「法、納得!どっとこむ」に寄せられた読者からの意見を読む(2004年11月2日~2004年12月3日)
- 「NHKの受信料問題に関する公開質問状」(2004年11月30日)
- 「公開質問状」に対するNHKおよびNHK労組からの回答比較記事(2004年12月21日)
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