債権回収に備えてとる行動には、ここまでで十分ということはありません。事案に応じて数限りなくあります。しかし、それらを全部実行する必要もないわけです。限られた時間と人手の投入でその会社にとって効果の大きい方法を選択して行うことが必要なのです。また、契約書の整備は中小企業にとって、リスク回避に大きく貢献することは言うまでもありません。
今回は、その中でも比較的手間が掛からずそれでいて違った効果が期待できる方法を二つご紹介します。
債権残高確認書の運用
貴社では、残高確認書を利用されているでしょうか?私の経験上、中小企業で債権残高確認書を定期的に運用している会社はそうたくさんなかったように記憶しています。すでに実行されている会社があればここでは、その運用について再考して下さい。これは、往復はがきを使用すると通信費だけで一件当たり100円と経費はかさみますが、それ以上の効果も期待できます。
まず、確認書に記載した日付時点での債権残高がこの金額であるという事を相手が承認している証拠書類です。しかも会社名、社印、担当者(責任者)の印まで押してあります。これは、立派な証拠となります。また、違算がある場合には解決の糸口にもなります。
相手から返信がなかった場合には相手の計上している残高を記入して返信するよう催促します。返信に応じないとか返信を渋るような相手は帳簿の管理に問題があると見なし、債権管理上注意を要する取引先と認識しておきます。残高確認の返信は全件回収するようにします。余談ですが、税務調査があった場合、残高確認書の適切な運用があれば調査官の心証がいいようです。
取引先の情報を集める
? 雑談の心得
営業マンが取引先との雑談の中で得た情報が、債権回収や債権管理に大きな効果をもたらすことがあります
取引先に売掛金の焦付きがあったとき、その金額もさることながらそれが取引先にとってどの程度のダメージなのかという判断をすることが重要です。その判断のために最低必要な情報は、取引先の年商と焦付き先に対する売上依存度です。決算書があれば年商はわかりますが、これらの情報は事故が起こった後ではまず入ってきません。
取引先の取引先(できれば優良取引先や取引高)、経営者個人の資産状況、親戚筋等についての情報などもいい関係である間であるからこそ、雑談の話題にできることなのです。このような情報は、債権譲渡、担保設定、債務保証等の際に生きてきます。
以上二つ例をあげました。雑談の中に欲しい情報の話題をそれとなく入れて情報を得ること。それによって得た情報が、いざ債権回収という緊急時に大きく影響してきます。また、それらの情報は持ち帰って報告しても、会社内で共有できる体制がなければ、十分に生きてこないということは言うまでもありません。
また逆に、債権業務で必要な情報を雑談の中で聞き出してくるよう指示することも考えられます。そうして得た情報は非常に有益なものとなるでしょう。(つづく)