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「中小事業主の仕事中のけがや病気」 特別加入制度

 労災保険制度のなかに、労働者と同じように働く中小事業主にも、その業務や通勤の実態、災害発生状況等からみて保護が必要な場合は、労災保険本来の建前をそこなわない範囲で、労災保険の加入を認めようとする特別加入制度があります。その他、1人親方や海外派遣者の加入も認められています。

 特別加入をすることができる中小事業主は、常時300人以下(金融・保険・不動産・小売業は50人、卸売業・サービス業は100人以下)の労働者を使用する事業主で、労働保険事務組合に委託している場合となります。

 ただし、特別加入者は一般の労働者と異なり、労働契約等によって業務内容が特定されないため、業務災害や通勤災害の認定については、特別加入に係る申請書に記載された業務または作業の内容を基礎とし、厚生労働省労働基準局長が定める基準によって行われます。

 特別加入をされていた飲食・旅館業の事業主の方が、お膳をもって階段から落ちたケースを扱ったことがありました。夕飯時の繁忙な時間帯にこういった事故がおきやすいわけです。また、従業員だけでは手が足りないなど、工場で働かれる事業主の方も同じでしょう。旅館業といえば、会社などの通常勤務時間と違って、従業員の方の就業時間もシフト勤務や交替制となっております。業務中であったことの立証が難しいとされていますが、1人だけでなく、他の労働者といっしょに作業を行っていた、営業時間中であったなどの客観的証拠がある場合や立証が出来る場合は、業務災害の認定基準に該当していれば労働者と同じように補償されるわけです。

 このメールマガジンの読者の方から、業務中のけがなのに健康保険で治療を受けた場合は、労災申請が面倒になるのはなぜでしょうか?というご質問をいただきました。

 健康保険は、業務外のけがや病気に対する保険です。労災とは本来の目的が違いますので、業務中である証明や状況説明はもちろんのこと、治療を行った病院等のレセプト)の請求処理も健康保険と労災保険では違います。

 通常、レセプトは、病院等では翌月10日までに処理され、請求されます。いったん健康保険で治療を受け、病院等がレセプト請求された後の場合は、変更の処理を行わなければならないのです。また、国公立病院などで、ご自身がすでに窓口で自己負担金を支払っていらしたら、すぐに連絡して、10割から自己負担額(通常2割)を除いた残り全額を病院に支払い、領収書をもらってから、療養の費用請求書で管轄の労働基準監督署に提出してください。

 いままで労災保険についてのお話をしてまいりましたが、こういった立証に必要な資料は、タイムカードや出勤簿、賃金台帳、労働者名簿などの完備はもちろんのこと、就業規則等の整備も行うことで、規律を定めること以外に会社を「守る」こともできるのです。そして、会社が守ってくれること、働く側が守ること以外にも、労使共に「人材」から「人財」に変わることを望む時代ですね。お互いのニーズをより明確にし、企業という社会のルールとして労使ともに納得していける人事制度づくりのお手伝いも私共はいたします。


※レセプト...病院が健康保険などの報酬を公的機関に請求するために提出する明細書

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