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貸し渋り・貸し剥がしに備えるために (3)

 皆様、こんにちは。

 資金調達支援アドバイザーの東川です。

 とうとう今回が最終回となってしまいました。

 皆様に伝えたいことは山ほどあるのですが、その想いの10分の1も伝えきれない自分の筆力のなさにもどかしさを感じてしまいます。直接会ってお話を聞いてもらえれば、もっと説得力があるのになあと思う今日この頃でございます。

 前回は、「なぜ、『貸し渋り』や『貸し剥がし』を行わなければいけないのか」というテーマでお話をさせていただきました。

 説明が多く、もう一つ面白くなかったかもしれませんが、前回の内容を理解した上で一度金融機関の担当者にこのような質問をしてみてください。

 「うちの債務者区分はどこになっているのかなあ?正常先?それとも要注意先?」

 問題ない取引をしていれば間髪入れず担当者は、「社長のところは当然正常先ですよ。」と言ってくるはずです。

 その時に、ちょっとでも言葉を濁すようであれば、「要注意先」以下に区分されていると見ていいかと思います。

 その時には、担当者に、「今後どういうふうな取り扱いを自社に対して考えているのか。」を、あらかじめ聞いておくようにすれば、今後の対策は立てやすくなると思います。

 話がそれましたが、今回のテーマに移りたいと思います。

3.金融機関と交渉するときに話すべきこと

 前々回で述べましたように、今では貸付係職員の業務が多忙になりすぎて、顧客企業のためにとれる時間も微々たる物となっています。

 ですので、以前には言われなかった資料をください要求されることも多くなるでしょうし(お客様にヒアリングをして自分で作っている暇がないか、もしくは、お客様の内容が判っていないので、自分ではうまくつくることができないかのどちらかが考えられます)、冷たく感じるかもしれません。

 ここで、担当者に絶対言ってはいけないセリフをお教えしましょう。それは、「前はそんなことを言わなかったのに、何でいきなりいろいろな資料を欲しいと言ってくるようになったの?今まで見たいにそちらでつくってよ。」ということです。

 貸付担当者も、以前に要求していなかったことを要求していると言う事実は重々承知しています。それをあえて言うのは、上司や本部に言われたり、物理的に時間がなかったりするからなんです。仕方なく言っているのです。

 その企業の為に一生懸命やろうと思っているから、何とかできるように資料を集めて頑張ろうとしているのに、そういう風な一言を口にされると、その気持ちがしぼんでしまいます。

 その案件に対して真剣味がないのでしたら、資料も頼まず、適当に稟議を上げて、「申請いたしましたが本部で否決になりました。」と答えれば担当者は楽に済みます。

 それをしたくないが故に色々な資料をたのまれているのですから、その心情を優しく汲み上げてもらえれば担当者としてはありがたいなあと思うわけです。

 金融機関職員も人間ですので、感情に左右されて仕事を行うことは多分にあります。面にはだしませんが、プライドの高い方が多い分、そういう傾向が強いかもしれません。

 ここで、相手を味方に取り込むことで、その後の展開は楽になることもよくあると思います。逆を言えば、敵にすれば、その後の展開は必ず悪くなります。

 それではここで、金融機関が聞きたい顧客企業の概況をいくつか挙げてみましょう。

1. 自社の所属する業界全体について
 ここでのポイントは、あなたの会社の所属する地域における、あなたの業界の経営環境なのです。
 ただ、単に「不景気でどうしようもない」ということを並べるのではなく、客観的に見た悪い材料・良い材料を教えてあげてください。
 金融機関職員は、あなたの業界についての専門知識はあまりないのです。それをやさしく客観的に補ってあげてください。
 ここで、あまり悪いことばかりを言えば、「終わっている業種」ということになり、金融機関の撤退スピードは上がりますよ。
 
2. 今のその状況下での自社の現況は
 その地域的な経済環境中であなたの会社がどういう状況であるのか、具体的に言うと、お客様の数の増減や売上単価の上下、購入顧客層の変化、競合先の状況、その中での自社の影響などといった内容になります。
3. 前年の決算書との対比
 今の時代、前年の決算書より良くなっている企業というのは、ほんの一握りだと思います。ほとんどが悪くなっているといっても過言ではないでしょう。
 その前年の決算書と比較してみて、増収増益になったのか、増収減益になったのか、減収増益になったのか減収減益になったのかとその原因や理由を説明します。
 貸付係は、経営者の方との自社の所属する業界全体についての話や今の状況下での自社の現況の話の中から前期比決算との相違の理由を見つけ出そうとします。
 
4. 今後の展開
 貸付係がもっとも知りたいのは、あなたが今後どう取り組んでいくのか、ということです。
 「景気が回復するのを待ちます」というのは問題外。
 私が貸付担当をしていたときに、このセリフを聞くと必ず「それでは景気が回復しなければどうされるおつもりですか」と尋ねました。こういう受身の考えは、対策を講じているとは全然いえないからです。
 「今の古くなった店舗を改装して来店客数を増やし、売上を伸ばそうと考えています。」だとか、「今までと違った新しい仕入先を開拓してコストを抑え収益を伸ばしたい。」というような、工夫して状況を改善しようというお客様に対して応援していきたいと担当者は思っています。
 また、逆に、「新たなバスの路線が開通し、うちの店の前を通行する顧客対象年齢層人口が3倍以上になるので売上は上がります。」という根拠のある材料を提示するのもいいでしょう。
 要は、担当者が申請をするときに支店長や本部を説得する材料を与えてあげればよいのです。そんなに難しく考える必要は無いと思います。
 
5. 金融機関に望むこと
 何を望むかと言えば、お金を借りたいのか、返す額を減らして欲しいのかしかないと思います。
 現実的には、3.の前年の決算書との対比を最初に話すことになると思います。
 しかし、借りたいために、自分に都合のよい今後の展開ばかり話をしていては「この人何夢みたいなことばかり言ってるのだろう?」と思われます。
 だからといって、返済を減らしたいばかりに「いかに自社の現状が苦しいか」や業界の状況の悪さ、消費者動向・競合企業の様子の暗い話ばかりでも、相手が回収を急がねばという決心をさせるだけなので、よくありません。
 

 そして、ここで今まで述べてきた話を根拠にして実際に必要な金額や期間、なぜ、それが必要なのかという具体的な理由を伝えます。

 いくら借りたいからといって、「いくらでもいいから貸して」という態度は絶対ダメですよ。

 金融機関の立場からすると、「そこまでせっぱ詰まっているのか。」という風にしかとりませんので、少し余裕のある態度で接した方が、貸す方も安心します。

 かといって、「借りてやるのだ」という態度をとれば、逆効果以外の何物でもないのでご注意のほどを。

 上手に金融機関と取引をされているなあと感じるお客様は、やはり、自分の企業の情報を上手に金融機関に伝えておられます。

 今までは、担当者がアンテナを高くしていたため、小さな情報も見逃さず、融資に反映させていましたが、これからはそんな態度は臨むべくもありません。今後は金融機関に対しての情報伝達が最重要になってきます。

 そのためにも、上記の1.?5.の内容は定期的に資料として金融機関に提出するようにすればなお良いでしょ

 今回、発表させていただいた、金融機関とのつきあい方のノウハウは全体の中のほんの一部です。

 出来る限り多くを皆様にお伝えしたかったのですが、文章力がついて行かず、ご期待に添えなかったことも多いかと思います。

 もし、ご興味があれば是非直接お話を聞いていただければ、もっと説得力のあるお話をお聞かせできることだと自負しています。

 また、何か資金調達や借入返済の減額に対するご意見やご質問等ございましたら、このメールマガジンまでお願いします。

 3回に渡りへたくそな文章におつきあいいただき誠にありがとうございました。

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