訪問介護事業など介護保険事業を行う場合には、介護保険事業者の指定を受ける必要があり、その指定を受けるための要件の一つに事業者が法人であることがあります。そこで、NPO法人を設立して介護保険事業を行いたいという相談がよくあります。そこで、今回は、このケースを例にいくつかの注意点を述べることにします。
まず、介護保険事業の指定申請をする時点で法人でなければなりませんから、NPO法人の設立が先になります。NPO法人の設立(法人登記)までには、約4ヶ月かかります。また、NPO法人の目的に当該介護事業を行うことが含まれていることが必要になります。できれば、NPO法人の認証申請を行う前に、所轄庁か、NPO法人の認証手続を行う行政書士や介護保険事業の指定申請を業務としている社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
次に、福祉の増進を図る活動をNPO法人の目的として介護事業を行う場合、NPO法上は、当該介護事業を特定非営利活動とすることは可能です。
しかし、法人税法施行令第5条第1項の33業種にあたる場合には、法人税法上は収益事業とされ課税されます。この点、介護事業については通達があり、NPO法人が行う介護事業は課税されます。
また、NPO法人の会計は通常の会社の会計と異なる考え方の部分もありますので、詳しくは、税務署か、NPO法人の会計に詳しい税理士にご相談ください。
最後に、介護保険事業は原則として利用者から1割をもらい、残りの9割は保険者(市町村等)から支払われます。しかし、保険者からの支払いがあるまでにはタイムラグありますので、その間の経費(家賃、光熱費、人件費等)をまかなうだけの運転資金(3か月分程度)が必要です。
もし、有限会社を設立するための300万円がないから資本金の必要のないNPO法人で介護事業を始めようと考えているのであれば、資金計画を見直す必要があります。