改正労働者派遣法および職業安定法のポイントをみる3回目です。
前回は、派遣先による直接雇用の申し込み義務等についてみましたが、3回目の今回は派遣先による派遣対象業務の拡大についてみていきます。
3. 派遣対象業務の拡大
- 1) 物の製造業務
- まず、今回の労働者派遣法の改正の目玉とも言えるのが物の製造業務について、派遣が可能となった点です。ただし、平成19年2月28日までは、派遣受入期間は1年間です。平成19年3月1日以降は3年間、スタッフの受け入れが可能になります。
- 物の製造業務の例
→ 原料の溶融、鋳型の製造、製品の加工、組み立て、洗浄、塗装、製造工程中の製品運搬(これに対し製品の設計・製図の業務、原料、製品の搬入・搬出、完成した製品の保管・包装、製造用機械の点検・修理はいわゆる自由化業務にあたり最長3年の派遣が可能です)。
- 1年の派遣期間を超えて派遣スタッフを受け入れ続けた場合、希望する派遣スタッフに対して、直接雇用契約の申し込みをする義務があります。
- 物の製造業務に派遣スタッフを受け入れる場合、受け入れ派遣スタッフの数(50人を超える場合)によって派遣先責任者をそれ以外の業務の派遣先責任者とは別に選任する必要があります。この責任者は安全衛生教育など、派遣元から委託の申し入れがある場合、可能な限り応じなければなりません。
- 物の製造業務の例
- 2) 医療関連業務について 病院等における医業等の医療関連業務について、紹介予定派遣の場合には派遣が可能になりました。
- これまで医療関連業務が適用除外とされてきた理由
- 通常の労働者派遣においては、派遣先が派遣スタッフを特定できない。故に、チーム医療に支障が生ずるおそれがある。
- 派遣スタッフが煩雑に入れ替わることで、医療資格者間の適切な連携に支障が生ずる。
- 雇用関係と指揮命令関係が分離することで患者に対する責任が分散するおそれがある。
- などでした。
- 医療関連業務について派遣を可能とする視点
- 派遣先が派遣スタッフを特定できれば、チーム医療に支障が生ずるおそれは解消される。
- 紹介予定派遣の場合には、直接雇用を実現するものであるから、派遣スタッフが煩雑に入れ替わるという事態は生じない。
- 派遣スタッフが医療事故に関わった場合、ケースによっては派遣元が関係者に加わることがありうる。責任の分散がなされないように対応する必要がある。
このような視点に基づいて、2003年3月28日より、必ずしもチーム医療などを行わない下記のような社会福祉施設等への派遣に限って、医師等の派遣が解禁されました。
- 身体障害者療養施設の中に設けられた診療所
- リハビリテーション施設の中に設けられた診療所
- 養護老人ホームの中に設けられた診療所
- 特別養護老人ホームの中に設けられた診療所
- 原子爆弾被爆者養護事業を行う施設の中に設けられた診療所
そして、2003年、医療分野における規制改革に関する検討会が、医療資格者への労働者派遣を解禁しても差し支えないとする報告書をまとめました。
これは今回の労働者派遣法の改正により、紹介予定派遣に限って派遣前の面接(=事前面接)と、履歴書の送付が可能となったことを受け、派遣労働者の特定が可能であることから、医療分野への派遣を認めることとしたのである。
※ 適用除外業務の状況
現在労働者派遣事業制度の適用除外業務は、法律で規定されている港湾運送業務、建設業務、警備業務となります。政令で規定されている医療関連業務、法律の経過措置的に適用除外とされていた物の製造については解禁されました。