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不正競争防止法 Q&A

(2) 不正競争防止法に関するQ&A

Q.

 私は「ラーメン十番」という名前のラーメン店を経営しています。順調に支店も増え、新聞やテレビでも取り上げられるほどになりました。ある日、隣町に「10番ラーメン」というラーメン店ができたことを知りました。何か対応をとることはできないでしょうか?

A.

 「10番ラーメン」という名称で営業することは、周知表示混同惹起行為2条1項1号)にあたる可能性があります。

 周知表示混同惹起行為にあたるかどうかは、

  1. 他人の氏名、商号、商標など商品または営業を表示するもの(商品等表示)であること、
  2. 需要者の間に広く認識されていること(周知性)、
  3. 他人の表示と同一または類似であること(同一・類似性)、
  4. 他人と同一・類似の表示をすることで他人の商品または営業と混同させること、

の4つの要件を満たすかで判断されます。

 このケースの場合、周知性(2の要件)と同一・類似性(3の要件)が問題となりますが、周知性については、全国的に国民の間で周知である必要はなく、同一・類似表示の使用者の営業地域において、その顧客層の間で周知であれば足りるとされています。このケースの場合、新聞やテレビでも取り上げられており、隣町のラーメンを食べる人にも「ラーメン十番」という名前がよく知られていたのであれば、周知性は認められると考えられます。

 また、同一・類似性については、取引の実情の下において、需要者が両者の外観、呼称、または観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かで判断されますが、「ラーメン十番」と「10番ラーメン」では、顧客が類似のものとして受け取るおそれがあると思われます。よって、同一・類似性も認められると考えられます。

 以上から、周知表示混同惹起行為にあたると考えられますが、その場合に「10番ラーメン」側に請求できることとして、

  1. 差止請求(3条)、
  2. 損害賠償請求(4条)、
  3. 信用回復措置請求(14条

が認められています。

 まず、1. 差止請求とは、営業上の利益を侵害されたり、侵害されるおそれがある者は、侵害の停止・予防及びこれらに必要な行為を請求することです。例えば、名称の使用を中止させたり、看板の撤去などがこれにあたります。

 次に、2. 損害賠償請求は、相手方に故意または過失があることが必要です。損害額については、立証が困難であることから、不正競争行為によって利益を受けている者の利益をもって損害額と推定されます(5条)。

 最後に、3. 信頼回復措置請求ですが、相手方に故意または過失があるときに、損害賠償に代えて、または損害賠償とともに、その信用の回復に必要な措置(謝罪広告の掲載など)を請求できます。

Q.

 不正競争防止法では、営業秘密が保護されていると聞きました。どのようなものが営業秘密にあたるのでしょうか?

A.

 営業秘密とは、

  1. 秘密として管理されていること(秘密管理性)、
  2. 事業活動に有用な情報であること(有用性)、
  3. 公然と知られていないこと(非公知性)

という性質を有する情報をいいます。

 このうち、過去の裁判例でもっとも認められにくいのは秘密管理性です。秘密管理性が認められるためには最低限、

  1. 当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるようにしていること(客観的認識可能性)、
  2. 事業活動に有用な情報であること(有用性)、
  3. 当該情報にアクセスできる者が限定されていること(アクセス制限)

が必要とされています。

 例えば、「マル秘」「部外秘」など機密事項であることの表示がない場合には、客観的認識可能性が欠けていることになりますし、営業秘密が他の一般情報と区別されていない場合や保管場所を施錠していない場合、パソコン内のデータについてはパスワードの設定がなされていない場合などには、アクセス制限が欠けているということになります。

○ 今回のまとめ

  • 周知表示混同惹起行為における周知性の判断基準は「同一・類似表示の使用者の営業地域において、その顧客層の間で周知であるか否か」、同一・類似性の判断基準は「取引の実情の下において、需要者が両者の外観、呼称、または観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否か」で判断されます
  • 営業秘密といえるためには、最低限、客観的認識可能性・アクセス制限が必要です。これらを欠いている場合、有用性、非公知性が認められても営業秘密とは認められません

 今回で知的財産権特集は終了です。長い間、ご愛読いただきありがとうございました。

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