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企業のリスクマネジメント ~内部告発について(3/3)

第4 内部告発制度の構築方法

1 事業主の遵法宣言

 社内における法令違反や不正行為は、会社の存続・発展を阻害する重大な悪であり、これらを未然に防ぎ、あるいは早期に発見して是正することこそ、会社の利益であり、また会社に課せられた社会的使命であるということを全社員(アルバイトも含む。)の周知しうる方法(パンフレット、掲示板、社報等)により宣言します。

 併せて、社内に内部告発制度を設けることをアピールし、社内の誰もが窓口に気軽に相談・通報することが出来ることを理解してもらいます。
 その際、内部告発者のプライバシーや社内における地位・利益には最大限の保護を与え、一切の不利益が生じないよう配慮することを確約します。反面、法令違反や不正行為を行っていることが判明した者については、徹底的に法的責任を追及することを明記します。

2 内部告発制度の骨組

(1) 内部告発制度の所管は、総務部、人事部、法務部等既存の部署に委ねても構いませんし、新たに専門部署を立ち上げてもよいでしょう。いずれにせよ大切なのは、制度導入に伴い与えられる権限を明確にし、情報管理を徹底するということです。
 ただ、相談・通報の内容が企業経営に重大な影響を与えるようなものである場合には、詳細な調査を待つまでもなく即時に事業主に報告させ、社外の専門家と協議のうえ、全社を挙げて事実関係を調査する方針を社内に打ち出す体制にしておくべきでしょう。

(2) 相談・通報の受付は、社内だけでなく、社外の弁護士事務所等を窓口とすることも考えられます。弁護士には守秘義務がありますので、情報の管理については問題ないでしょう。ただ、この場合、相談者と会社の利益が相反する場合に、会社の顧問弁護士がどこまで相談者・通報者の側に立って相談に応じられるかという問題は生じますので、事前に企業と弁護士との間で協議を行う必要があるでしょう。
 相談・通報の方法は、面談に限らず、電話、ファックシミリ、電子メールなど幅広く受け付けるべきでしょう。匿名の相談・通報も拒む必要はありません。あくまでも相談・通報の内容が重要だからです。
 相談・通報の対象事項は、法令違反と不正行為に限定するべきですが、一般的抽象的な相談であったとしても、背後にある個別具体的な問題の可能性を想定し、真摯に対応する必要があるでしょう。

(3) 相談・通報を受け付けた後の対応が杜撰であれば、相談者・通報者の失望を招き、社外へのリークを誘発することになります。そこで、実名の相談者・通報者に対しては、出来るだけ早期に調査結果等を回答することが重要です。調査に当たっては、相談者・通報者が他の社員に特定されるような方法は絶対に避けるべきです。カモフラージュで複数の部署に複数の調査を行うなどの配慮をする必要があります。
 また、自ら不正に関わっている者が積極的に相談・通報する動機付けを与えるために、事案の軽重等にもよりますが、例えば社内処分を緩和したり、法的責任につき宥恕するなどの柔軟な対応を検討できるようにするとよいでしょう。

(4) 更に、内部告発制度に対する信頼を維持するために、内部告発制度が健全に機能しているかどうかを絶えずチェックする機関を備えることも望ましいと言えます。

3 以上のように内部告発制度を構築しても、いざ社内の重大な法令違反・不正行為が発覚した場合に適切な対応を取ることはなかなか困難です。
 事業主は常に最悪の状況を想定し、弁護士等の専門家と連携して、事実関係の調査・分析・評価の手順を明確化しておき、万が一マスコミへの対応が必要となるような緊急事態においても、十分に企業の説明責任を果たし、不必要な損失を被らないようにするための体制を整えておく必要があると言えるでしょう。(終わり)

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