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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第640号

                      http://www.hou-nattoku.com/
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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2012年10月15日                        第640号
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 発行部数: 19,350部(まぐまぐ 13,894部、melma! 5,456部)
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■ 目 次
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  □ 著作権の最新事情 第3回
    「違法ダウンロード処罰3~その行為、違法ダウンロード?~」

  □ 携帯をめぐる法律問題 第8回
    「パケ死に対する携帯会社の責任とは?」

  □ なっとく! 法律相談 第628回
    「父親から相続できなかった家を時効取得できないものか・・・」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1173.php

  □ 法律クイズ 第314回 【問題】
    「就業規則を作成する際に労働者の同意は必要?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0657.php

  □ 民事判例解説 第19回
    「嫌悪の感情を理由に夫との同居を拒否できる?」

  □ 法律クイズ 第314回 【解答】



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■ 著作権の最新事情
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 第3回「違法ダウンロード処罰3~その行為、違法ダウンロード?~」

  2012年著作権法改正により、従来は法的責任を問われなかった違法ダウ
 ンロードに対して、罰則が設けられることになりました。
 今回は、身近な行為が違法ダウンロードにあたるかどうか検討します。

 ■違法ダウンロードの典型例は?
 
  ファイル共有ソフトやオンラインストレージ(オンラインで利用できる
 外部記憶装置のこと。他人とファイルや画像を共有できる機能あり)に無
 断で提供された動画や音楽をダウンロードする行為、違法な着うたサイト
 などから音源をダウンロードする行為などです。


 ■YouTubeなどで動画を見ることは違法?

  違法ダウンロードとは、「違法にアップロードされた有償の著作物」を、
 違法なものと知りつつダウンロードすることです。

 したがって、適法にアップロードされた動画であれば、そもそも違法ダウ
 ンロードの対象にならないので、閲覧しても問題ありません。

 反対に、違法アップロードされた動画を視聴する場合は、YouTubeなどが採
 用しているストリーミング方式の性質上、「キャッシュ」と呼ばれる通信
 効率化のための一時ファイルがパソコン内に保存されますので、形式上は、
 規制対象の違法な著作物ということになります。
 ただ、こうした情報処理に必要なデータ保存であれば、著作権法47条の8で
 適法と認められていますし、前々から文化庁も違法でないとの立場を示して
 いますので、閲覧程度なら、今のところ取締りを受ける可能性は低いでしょ
 う(実際の裁判所の判断が出るまで安心はできませんが…)。


 ■動画をダウンロード・変換してもよい?

  上でも述べたように、適法な動画であれば、無許可でダウンロードしても
 処罰されることはありません。
 しかし、違法動画をダウンロードする行為は処罰対象となり得ます(2年以
 下の懲役か200万円以下の罰金、もしくはその両方。改正著作権法119条
 3項)。
 また、ダウンロードの際に、動画に施されたコピー防止技術を回避するよ
 うなツールを用いた場合は、「技術的保護手段の回避」という違法も生じ
 ます(こちらは刑事罰なし)。

 以上のケースは、私的使用を前提としていながらも違法とされるものです。

 ダウンロード先によっては、また違った評価を受けることもあります。
 たとえば、ファイル交換ソフトを用いてダウンロードする場合などは、入
 手した動画を他人と共有できるようにするのですから、そこに私的使用の
 意思はないと判断されます。

 このような違法ダウンロードは違法アップロードと同視され、より重い10年
 以下の懲役または1000万円(法人は3億円)以下の罰金、あるいはその双方
 に処されることになります。
 刑罰の重さが格段に違うので、ファイル交換ソフトをお持ちの方はうっか
 り使わないように注意しましょう。

 ちなみに、本改正のほとんどは2013年1月1日から施行ですが、違法ダウン
 ロード刑罰化を含む一部規定は2012年10月1日から施行です。




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■ 携帯をめぐる法律問題
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 第8回「パケ死に対する携帯会社の責任とは?」

  携帯とパソコンを接続し、携帯をモデム代わりに使ってパソコンでサイト
 閲覧する「アクセスインターネット」。
 これがパケット料金定額サービスの対象外であることは前回話したとおり
 ですが、その事実を知らずにインターネットを利用して、予想外のパケット
 通信料(パケ死)が発生するケースも少なくありません。
 こうしたパケ死を防ぐには、利用者側が注意するしかないのでしょうか?


 アクセスインターネットにより、1週間ほどの間に20万6571円のパケット料
 金が発生したケースで、利用者が「予測できる料金は普通1万円程度だから
 これを超える19万円6571円については返還してくれ」と携帯会社を訴えた
 事案があります(平成24年1月12日京都地裁判決)。

 ここで原告(利用者)は、

 (1)想定外の高額請求を導くパケット料金条項は、消費者に一方的な不利益
   を与える(消費者契約法10条)、公序良俗に反する(民法90条)

 (2)アクセスインターネットが高額請求につながるおそれがあることについ
   て被告(携帯会社)の説明が不十分だった

 (3)使用料が利用者の意に反して高額になった場合には、利用者への通知等、
   さらなる料金増大を防ぐための措置を講じる義務があった

 などと主張しました。


 これに対し京都地裁は、次のように判断しました。

 (1)料金増加にあたっては、利用者もその分携帯会社からサービス提供を受
   けているのだから、利用者が一方的に不利益を被るとは言えないし、サ
   ービス量によって料金が上がる仕組みは一般的で合理的である
 
 (2)アクセスインターネットについて口頭での説明はなくとも、パンフレット
   等利用者の目に付くもので通知しているため不十分とはいえない

 (3)本件では、被告が原告に料金が高額になっていると通知したのは10万円
   を超えてからだが、ほとんどの利用者は、パケット定額料金の10倍以上
   の料金を支払ってまでサービスを受ける気などないのだから、5万円を
   超えた時点で通知して注意喚起をする義務があった

 以上の理由に原告の確認不足等の過失を相殺したうえで、被告に料金の一部
 (10万7138円)返還を命じました。

 この裁判により「利用料が高額になった場合には事業者側に通知義務があ
 る」と認定されたものの、利用者側が数万円のパケット料金を請求される
 おそれは依然としてあります(上記の裁判でも、原告は結局のところ10万
 円近くを失っていますし)。
 面倒ですが、いつもと違う携帯の使い方をする際は、パンフレット等で逐
 一確認する方が良さそうです。




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■ なっとく!法律相談 第628回
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 「父親から相続できなかった家を時効取得できないものか・・・」

 □相談□

  25年近く前に父が、私が結婚するにあたり家を建ててくれました。土地
 は父名義でその上に家を建てました。建物(家)は父と私の半々の名義だ
 と思っていました。五年前に父が亡くなり、公正証書遺言に共有物件(建
 物)は母に全部相続させると書かれてあり、証書の存在を知らず四年半過
 ぎてやっと半分の権利を失ったと知りました。土地だけは相続しましたが、
 建物も時効により取得しているのではと思います。このような事情のもと
 土地と建物について登記をしても違法ではないですか?まだ土地も建物も
 未登記です。ご回答を御願いします。

 
                          (50代:男性)


 □回答□

  まず、土地に関してはその全部について相談者所有ということですので、
 その通りの登記をすることができます。

 次に、本件建物が共有名義であるのであれば、相談者の父親は自己の持分
 しか母親に相続させることはできません。したがって、建物については、
 相談者と母親がそれぞれ2分の1の割合で共有することになり、その持分
 に従った登記をすることができます。

 そして、母親に父親の共有持分権が相続されたとしても、相談者は共有物
 の全部を従来どおり使用することができます。相談者と相談者の父親との
 間に本件建物に関して、黙示の使用貸借契約が存在していたと考えられ、
 その貸主たる地位を相続によって母親が受け継いだと考えられるからです。
 また、母親から出て行くように求められても出て行く必要もありません
 (最判昭和41年5月19日参照)。

 もっとも、母親が相続した共有持分について、現時点で時効取得すること
 はできませんし、今後も時効取得の可能性は低いといっていいでしょう。
 まず、時効取得するためには自主占有であることが必要です。自主占有と
 は、自ら所有する意思をもって占有することですが、父親が存命の時は共
 有であることを認識していたのですから、自主占有が認められるとしても、
 相続開始後ということになります。そして、時効による権利の取得には、
 最短でも10年かかりますので(民法163条)、少なくとも現時点では
 時効取得していないことになります。
 また、共有物の全体を使用しているというだけでは、他人の共有持分につ
 いて自主占有していたとはいえないため、自主占有の主張そのものが難し
 いといえます(民法249条参照)。

 ですので、建物について相談者の単独所有とする登記をすることはできま
 せん。もし、虚偽の申立てをして不実の登記を作出した場合には公正証書
 原本不実記載罪(刑法157条)に問われる可能性があります。


  [関連情報]
  ・亡くなった息子の嫁から家を出て行けと言われています。
   http://www.hou-nattoku.com/consult/626.php



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■ 法律クイズ 第314回 【問題】
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 「就業規則を作成する際に労働者の同意は必要?」

 X社では、就業規則を作成するにあたり労働者の代表者から意見を聴取した
 ところ、全面反対の意見が述べられました。この場合、X社の就業規則は効
 力が生じないことになるのでしょうか。

 1. 有効な就業規則として扱われる
 2. 無効な就業規則として扱われる



 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



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■ 民事判例解説
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  第19回「嫌悪の感情を理由に夫との同居を拒否できる?」
     ~東京高裁平成12年5月22日決定~

  性格の不一致、相手の浮気、暴力に金銭トラブル…夫婦が別居する理由は
 さまざまです。
 どんなにささいな理由でも、意見が一致していれば別居に支障はありません。
 しかし、一方が別居を、もう一方が同居を望んでいる夫婦の場合、法的に
 はどのような理由があれば別居が認められるのでしょうか。

 夫Xと妻Yは、1988年に婚姻し、翌年、長女Aをもうけました。
 XとYは、1997年までは特に大きな問題もなく、Xの住所地で同居していたの
 ですが、次第にYがXに対する嫌悪を募らせていきます。
 理由は、

 ・時と場合を考えないで発言する
 ・Yの友人関係にまで干渉する
 
 といったXの言動でした。

 YはXの世話を拒んだうえ、会話もしなくなり、別居や家出をほのめかすよ
 うになりました。
 Xは、わがままで自己中心的なYに不満を抱きましたが、家庭崩壊を防ぐた
 め、苦情や不満が出される度に、Yに旅行や帰省をさせるなどしてなだめて
 いました。

 また、Yは、1998年に2回家出をし、このうちの1回では、XがYに「同居を継
 続する条件」として300万円を渡し、帰宅させています。

 1999年、YはAを連れてXの住所地から徒歩10分程のアパートに転居し、以後
 Xとの別居生活を始めました。
 XはYに「生活費」として最初の3、4か月は月19万円、それ以降は月10万円
 を送金しているほか、Yの求めに応じて追加の5万円を渡したこともありま
 した。

 XはY・Aに対し同居審判を申立てましたが、原審がこれを却下したため、X
 が即時抗告しました。

 東京高裁は原審判を取消し、Xの抗告を認容しました。

 「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とする民法752条
 から、同居を「夫婦の共同生活における本質的な義務」と位置付け、夫婦
 関係の実を挙げるために不可欠なものと考えました。
 そのため、同居を拒否する正当な理由がない限り、夫婦の一方は他方に対
 し、同居の審判を求めることができるという基準を提示します。

 まず、Xの言動に嫌悪し、同居の意思を失ったというYの言い分から、高裁
 は、Xには自己反省とYの心情を理解しようとする姿勢が欠けていたと分析。
 これが家出や別居につながったとYに一定の理解を示しました。

 しかし、Xに暴力等の非行は全くなく、Yが嫌悪するXの身勝手な言動という
 のも抽象的です。
 Yが具体的エピソードとして挙げた話も、Xの是正が見込めるものばかりで、
 夫婦関係に深刻な影響があるとは思えませんでした。

 また、Xは、旅行や帰省に関するYの希望を聞き入れたり、生活費を送金し
 たりと、自分なりに家庭維持の努力を続けています。

 さらに、Yは長女Aが高圧的なXを嫌っていると主張しましたが、この手の話
 も通常の親子関係なら珍しくないため、正当な理由にはなり得ませんでした。

 Yも離婚する気はなく、比較的別居期間も短い現在の段階では、X・Yの関係
 は回復の余地があると判断。
 高裁は、「Xがつくった原因以上に、夫婦は互いに協力し扶助するという姿
 勢を放棄し、自分本位に振る舞ってきたYの態度が今日の事態を招いた」と
 指摘し、Yは同居に応じるべきと結論付けました。




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■ 法律クイズ 第314回 【解答】
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 「就業規則を作成する際に労働者の同意は必要?」

 □解答□
 1. 有効な就業規則として扱われる

  使用者は、就業規則の作成・変更については、当該事業場の労働者の過
 半数で組織する労働組合(それが無いときは当該事業場の労働者の過半数
 を代表する者)の意見を聞く必要があります。もっとも、その者の同意を
 得ることや協議をすることまでは求められていません。

  反対意見が出たことを添付して届け出ることによって有効な就業規則と
 して通用します。




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