前回は整理解雇の4要件についてご説明いたしました。今回は平成15年労基法改正のうち解雇に関するその他の改正点についてご説明いたします。
1. 就業規則への解雇事由の記載 (労働基準法89条3号)
平成15年労基法改正により就業規則の絶対的必要記載事項(就業規則に必ず記載しなければならない事項)の「退職に関する事項」に解雇の事由を含むことが明記されました。
この改正の趣旨は就業規則上に解雇事由が明記されることにより労使間での解雇に関する予測可能性が高まり、解雇をめぐるトラブルを未然に防止できるという点にあります。
従来から、解釈上「退職に関する事項」の中には解雇事由も含むと考えられていました。このためほとんどの就業規則には既に解雇事由が記載されているものと思います。
しかし、労使間のトラブルを未然に防止するためにも、この改正を契機に従来の解雇事由をもう一度労使間で見直してみるのも良いかと思います。もちろん、解雇事由が全く記載されていない場合には早急に解雇事由を定めた上で、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
既存の解雇事由を見直して届け出る場合、あるいは新規に解雇事由を定める場合、いずれの場合でも労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、そのような労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴取し、届出に当たってはこの意見を記した書面を添付しなければなりません(労働基準法90条1項2項)。
なお、就業規則上での解雇事由の明示義務のほかにも、労働者を雇用する際に使用者が交付する「労働条件通知書」上でも解雇事由を明示すべきことが今回の改正により明確化されています(労働基準法施行規則5条4号)。
2. 解雇理由の証明 (労働基準法22条2項)
従来から労働者が退職した場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(解雇理由含む)について証明書を請求した場合には使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないとされていました(22条1項)。これに加えて平成15年改正労基法では予告解雇の場合には労働者は予告後直ちに証明書の交付を請求できるとしました。この改正の趣旨は解雇をめぐるトラブルを未然に防止し、その解決を図るために、解雇をめぐる争点(多くは解雇事由)を明確にし、予告後解雇予定日までに労使当事者間で協議を重ねることによる自主的解決の促進を図る点にあります。
解雇理由についてどの程度記載すればよいかという点については厚生労働省の行政通達が参考になります。これによると「解雇の理由については、具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならない」としています(平成11年1月29日基発45号)。解雇理由証明書の記載例については各労働局のホームページなどで公開されています。
なお、解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求した場合、労働基準法22条3項において「証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない」と規定されているため、使用者は解雇の理由を証明書に記載してはならず、解雇の事実のみを証明書に記載することになりますので注意が必要です。
次回は裁量労働制をめぐる改正点について解説します。