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改正労働基準法のポイント「裁量労働制に関する改正点 その2」

 前回は専門業務型裁量労働制に関する改正点について解説致しました。今回はもう一つの裁量労働制である企画業務型裁量労働制に関する改正点について解説します。

1. 対象事業場の要件の緩和 (労働基準法38条の4第1項)

 従来から企画立案型の業務についても裁量労働制が認められていました。しかし導入ができる事業場は「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」とされ、具体的には本社や本店のほか地域本社・事業本部と呼べるような役員が常駐している重要な支社・支店でなければ導入が出来ませんでした。

 今回の改正では「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」という要件を削除し、対象業務が行われている事業場であればどこでも導入が可能となりました。具体的には次のような業務を行っている支社・支店、事業本部等が該当します(労働基準法38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針:平成15年10月22日厚生労働省告示353号より)。

  1. 当該事業場の属する企業等が取り扱う主要な製品・サービス等についての事業計画の決定等を行っている事業本部である事業場
  2. 当該事業場の属する企業等が事業活動の対象としている主要な地域における生産、販売等についての事業計画や営業計画の決定等を行っている地域本社や地域を統括する支社・支店等である事業場
  3. 本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場の属する企業等が取り扱う主要な製品・サービス等についての事業計画の決定等を行っている工場等である事業場
  4. 本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場を含む複数の支社・支店等である事業場に係る事業活動の対象となる地域における生産、販売等についての事業計画や営業計画の決定等を行っている支社・支店等である事業場
  5. 本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場のみに係る事業活動の対象となる地域における生産、販売等についての事業計画や営業計画の決定等を行っている支社・支店等である事業場

 以上から明らかな通り、支社・支店等が対象事業場といえるためには本社・本店からの独立性を有しており、独自の営業計画や事業計画を策定しえるだけの決定権限を与えられていることが必要です。

2. 労使委員会の各種要件の緩和 (労働基準法38条の4第1項2項)

 企画業務型裁量労働制を導入するためには労使委員会を設置しなければなりません。従来は労使委員会の設置について労働基準監督署長への届出が義務付けられ、委員については「労働者の過半数の信任」を受けていること、委員会の決議要件については「委員全員の合意」が必要であること、といった厳しい要件が設けられていたため、制度の導入を行うのが困難であるとの指摘がなされていました。

 今回の改正により、労使委員会設置届の労働基準監督署長への提出は不要となりました。また、「労働者の過半数の信任」という委員の要件は廃止され、労使委員会の決議要件については「全員の合意」から「委員の5分の4以上の多数決による合意」という形に要件が緩和されました。

 なお、設置時の決議要件の緩和に合わせて各種労使協定を労使委員会決議で代替する場合の決議要件も委員の5分の4以上の多数決で足りることとされました(労働基準法38条の4第5項)。

3. 定期報告事項の改正 (労働基準法38条の4第4項)

 従来、企画業務型裁量労働制を導入した事業場では、「労働者からの苦情の処理に関する措置の実施状況」、「労使委員会の開催状況」について定期的に労働基準監督署長へ報告することが必要でした。

 これらは事務処理上煩雑であるとの批判があったため、今回の改正により上記の報告義務については廃止されました。しかし、制度導入による過重労働の有無を監視するため「労働者の労働時間の状況及び労働者の健康及び福祉を確保するための措置の実施状況」については従来と同様に労働基準監督所長に対して定期的に報告しなければなりません。


 以上のように企画業務型裁量労働制について、導入が進むように要件が全般的に緩和されました。今後は企画業務型裁量労働制の導入も進むと思われますが、使用者側としては裁量労働制の趣旨を踏まえて、裁量労働制の採用がかえって過重労働につながることのないように十分な配慮が必要です。

 次回は有期労働契約等その他の改正点について解説します。

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