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娘を探して ─ 誘拐と詐欺の狭間で 第十回

 老人は含み笑いをした。

 「実を言うと、私には心当たりがあるのじゃ。娘さんは生きておられますぞ」
  「え!ほ、本当ですか!どうして分かるのですか!?」
  「おやおや、困った父親じゃな。娘さんの生存を信じておられるのではないのか?」
  「そ、それはそうですが・・いや、私は信じています。
   しかし、周囲はそうは思っておりません。でも私は信じています、だから、だから毎週、娘を探しに・・・」

 私は混乱し、言葉に詰まった。しかし、思わず涙が零れた。昂ぶる感情をどうすることもできなかった。
  男はしばらく黙っていたが、やがて言った。

 「実は、全国にあなたのような方がおられるのじゃ。
   申し上げたように、娘さんは生きておられる。そして家に帰りたがっておられる。しかし、娘さんを連れ戻すには、些か時間と費用がかかることも事実じゃ」
  「全国に?他にも私のような人がいるのですか?」
  「ここだけの話じゃが―この事件にはおそらく、ある男が関わっている。手口を見ればわかる」

 私は絶句した。興奮で足が震えた。
  やっと来た。これこそ待ち続けた情報だ。4年目にして、やっと手がかりを得ることができたのだ。真帆は、娘は生きている!

 「信じられんとおっしゃるならば、それまでのことじゃ。早々に去って、他の被害者の手助けをしたい。私は老人じゃからな、残された時間はあまりない」
  「すみません、疑うわけではありませんが・・・その男はどこにいるのです?なぜ真帆を連れ去ったのです?」
  「申し訳ないが、今は言えない。悪く思わんでほしい。
   何故かというに、親御さんが勝手に動かれると危険なのじゃ。相手は善人などではありませんからな。
   奴の相手になれるのは、場数を踏んだ猛者だけじゃ。素人を危険に巻き込むわけにはいかんのじゃ」

 その言葉は毅然としていた。
  何という強さだろう。こんな人が警察にいられないのは道理だ。私はこの人を待っていたと思った。

 「わかりました。一度お目にかかりたい。今どちらにおられるのですか?」

 老人はホテルPの名を言った。
  30分後、私はPホテルに到着していた。

(続く)

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