老人は含み笑いをした。
「実を言うと、私には心当たりがあるのじゃ。娘さんは生きておられますぞ」
「え!ほ、本当ですか!どうして分かるのですか!?」
「おやおや、困った父親じゃな。娘さんの生存を信じておられるのではないのか?」
「そ、それはそうですが・・いや、私は信じています。
しかし、周囲はそうは思っておりません。でも私は信じています、だから、だから毎週、娘を探しに・・・」
私は混乱し、言葉に詰まった。しかし、思わず涙が零れた。昂ぶる感情をどうすることもできなかった。
男はしばらく黙っていたが、やがて言った。
「実は、全国にあなたのような方がおられるのじゃ。
申し上げたように、娘さんは生きておられる。そして家に帰りたがっておられる。しかし、娘さんを連れ戻すには、些か時間と費用がかかることも事実じゃ」
「全国に?他にも私のような人がいるのですか?」
「ここだけの話じゃが―この事件にはおそらく、ある男が関わっている。手口を見ればわかる」
私は絶句した。興奮で足が震えた。
やっと来た。これこそ待ち続けた情報だ。4年目にして、やっと手がかりを得ることができたのだ。真帆は、娘は生きている!
「信じられんとおっしゃるならば、それまでのことじゃ。早々に去って、他の被害者の手助けをしたい。私は老人じゃからな、残された時間はあまりない」
「すみません、疑うわけではありませんが・・・その男はどこにいるのです?なぜ真帆を連れ去ったのです?」
「申し訳ないが、今は言えない。悪く思わんでほしい。
何故かというに、親御さんが勝手に動かれると危険なのじゃ。相手は善人などではありませんからな。
奴の相手になれるのは、場数を踏んだ猛者だけじゃ。素人を危険に巻き込むわけにはいかんのじゃ」
その言葉は毅然としていた。
何という強さだろう。こんな人が警察にいられないのは道理だ。私はこの人を待っていたと思った。
「わかりました。一度お目にかかりたい。今どちらにおられるのですか?」
老人はホテルPの名を言った。
30分後、私はPホテルに到着していた。
(続く)