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娘を探して ─ 誘拐と詐欺の狭間で 第十二回

 私と高田はホテル内の和食店に入り、懐石料理を共にした。その席で、犯人の手口を説明された。
  高田によると、真帆を拉致したのは裏世界では有名な誘拐犯だという。犯人は子どもを誘拐するが、すぐに身代金を要求することはせず、手元に置いて月日がたつのを待つ。隠れ家は国内に何箇所かあるが、警察も正確に把握できていないらしい。
  3、4年もたてば、被害者家族は子どもさえ戻ればいいという気持ちになっている。警察にも不信感を抱いているので、通報されずに交渉できるという。
  何という巧妙さであろうか。私は舌を巻いた。

 「しかし、奴の言いなりになることはない。交渉次第なのじゃ。
   こう言っては何だが、安く取り返せればそれに越したことはないのじゃからな」

 私はその一言一言を、神の言葉のように聞いた。

 「おぬしが娘を可愛がっておることは、マスコミが喧伝しておる。足元を見られぬようにせねばな。しかし」

 高田は急に声を潜めた。

 「・・奴を怒らせてはならぬ。警察には絶対に売らんように・・・何と言っても、娘さんの命は奴の掌中にあるのじゃからな」
   私は戦慄しつつ、しかし確信した。
   犯人は冷静沈着、私などの手には負える者ではない。しかし高田なら戦うことができる。そして、決して出し抜かれることはないと。
  「お任せしました。どうぞよろしくお願いいたします」

 私は深々と頭を下げた。

 高田は健啖であった。被害者のために働くのが私の使命だ、信じてもらえたのが嬉しいと、吟醸酒の杯を重ねた。私もしたたかに酔った。
  何と楽しく美味な会食だったことだろう。天にも昇る気持ちとはこのことだ。
  高田は宿を決めていないということだったので、ホテルの一室を用意させた。食事と宿泊代で9万円近くになったが、惜しいとも思わなかった。
  明日またロビーで会うことを約束して、私は自宅に帰った。

(続く)

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