「知らなきゃ損する!面白法律講座」第619号
http://www.hou-nattoku.com/
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□□ 知らなきゃ損する!面白法律講座 □□
週1回発行(月曜日)
2012年 4月16日 第619号
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発行部数: 19,871部(まぐまぐ 14,390部、melma! 5,481部)
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■ 目 次
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□ なっとく! 法律相談 第607回
「みなし残業手当とは・・・」
http://www.hou-nattoku.com/consult/1121.php
□ 法律クイズ 第293回 【問題】
「厚労省がパワハラを定義した!」
http://www.hou-nattoku.com/quiz/0605.php
□ 裁判員のための一口判例解説
第百七回 「被害者の転落と殺害行為」
□ 法律用語 「遺骨・遺体は誰のもの?」
□ 法律クイズ 第293回 【解答】
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■ なっとく!法律相談 第607回
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「みなし残業手当とは・・・」
□相談□
仕事を転職して半年になる者です。残業についての質問なのですが、就
業規則では40時間が「みなし」になっています。みなし残業の定義はなに
ですか?はいって1ヶ月目からそうです。
(30代:男性)
□回答□
みなし残業とは、一般的に賃金や手当ての中に、就業規則で定められた
一定の時間までの残業代は、賃金とは別に残業代として支給されない賃金
体系のことです。今回の場合では、40時間までの残業代は賃金とは別に
残業代として支給されません。
みなし残業制度を採用している場合、決められた一定の時間分に関して
は労働基準法で定められている週40時間を超える時間外労働に対する割
増賃金や夜10時から朝5時までの深夜割増賃金、休日に仕事をすることに
対しての割増賃金を支給しないのが一般的です。
労働基準法では、原則として1日8時間、週40時間を超える時間外労
働や午後10時から午前5時までの深夜労働に対しては25%、週1日の
休日労働に対しては35%の割増賃金を支払わなければなりません(37
条1項、4項)。
しかし、労働基準法は、上記の方法により算出された割増賃金を下回ら
ない限り、25%(休日35%)の割増賃金に換えて一定額のみなし残業・
深夜・休日労働手当(以下、これらを一括してみなし手当という)を支払
うことを禁じてはいないと解釈されています(東京地判昭和63年5月27日、
大阪地判昭和63年10月26日など)。
もっとも、以下のような場合には違法なみなし残業制度にあたり無効と
なります(神戸地判昭和62年2月13日)。
1.従来から支払われていた固定給を基本給と営業手当(みなし残業手当)
に分けて名目だけみなし手当としたような場合
2.営業手当(みなし残業手当)を新設しても、基本給を減額することで、
割増賃金が実質的になしとされ、割増賃金を免れるための脱法行為と
認定される場合
みなし残業制を採用する場合、a、実際に働いた残業時間がみなし残業
時間を超えた場合には超えた分の残業代を支払っているか、b.みなし残業
に相応する手当を差し引いた支給額(基本給相当部分)が最低賃金を下
回っていないか(言い換えると、みなし残業手当の計算方法が適切か)な
どがよく問題になります。
aに関しては、未払い残業代金支払い請求をすることになります。(当
サイト内「サービス残業分の賃金を請求できるか?」をご覧ください)
http://www.hou-nattoku.com/shokuba/jikan2.php
bに関しては、まず、月給者の場合には、「基本給+固定的諸手当(残
業手当・通勤手当等の一部の手当は除く)」の総額を月間所定労働時間で
割った金額が時給単価となりますので、この割った金額が最低賃金以上で
なければなりません。
つまり、最低賃金837円(平成23年10月以降の東京都の最低賃金)、1日
8時間、月間22日労働と仮定すると176時間ですので、東京都の企業では
837円(最低賃金)×176時間(労働時間)= 147,312円
が月額の最低賃金となります。
これに月40時間の残業を想定し定額残業手当を検討すると
837円(最低賃金)×1.25(割増率25%)×40時間(想定残業時間)
= 41,850円
となり
少なくとも、189,162円を支給する必要があります。
この計算をしてみて最低賃金を下回る場合には労働基準監督署に相談し
て下さい。
なお、残業に関しては当サイト内「残業とは」も参照して下さい。
http://www.hou-nattoku.com/shokuba/jikan5.php
[関連情報]
・「名ばかり管理職」の残業代
www.hou-nattoku.com/consult/830.php
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■ 法律クイズ 第293回 【問題】
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「厚労省がパワハラを定義した!」
以下のうちパワハラと認定される可能性があるのはどちらでしょうか?
1. 上司(部長)Aが遅刻をした部下B(平社員)に軽く注意をする
2. 営業成績1位の部下Bが万年係長の上司Aを無視する
▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼
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■ 裁判員のための一口判例解説
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第百七回 「被害者の転落と殺害行為」
~東京高裁平成13年2月20日判決~
被告人Xは、妻Aからヒモ呼ばわり等されて激昂し、出刃包丁でAの左胸
部等を数回突き刺したうえ、重傷を負ったAが玄関から逃げ出そうとする
のを連れ戻しました。
XがAの出血死を狙って救護措置も講じずに放置し、手にしていた包丁を
台所へ戻している隙に、Aはベランダ(マンション9階)に飛び出し、ベラ
ンダの手すり伝いに隣室へ逃げ込もうとしました。
Aを部屋の中に連れ戻してガス中毒死させようと考えたXは、ベランダ上
で不安定な姿勢でいるAの腕に掴みかかりましたが、Aはそれを避けようと
してバランスを崩し、転落して、落下による外傷性ショックが原因で死亡
しました。
1審はXに殺人罪(刑法199条)を成立させました。
これに対し弁護側は、Xには殺意がなく傷害罪(同204条)が成立する
に過ぎないとしたうえで、Aの転落は事故なので、XにA死亡の責任はない
として控訴しました。
東京高裁は控訴を棄却。
まず、Xの犯意の内容は、刺突行為時には「刺し殺そう」というもので
あり、刺突行為後は「自分の支配下に置いて出血死を待つ」「ガス中毒死
させる」というもので、殺害方法は事態の進展に伴い変わっているものの、
殺意としては同一だとしました。
したがって、刺突行為からベランダでAを捕まえようとする行為まで、X
の殺意は継続していると判断したのです。
次に、行為の評価については、手すり上のAを捕まえようとする行為は
一般的に暴行であって殺害行為とは言い難いものの、Xの意図(Aを連れ戻
しガス中毒死させる)から、「Xに掴まれれば死ぬのは必至」と考えたAが、
転落の危険も省みずに手で振り払ったものと分析しました。
以上から、
(1)刺突行為から手すり上のAを捕まえようとする行為は一連のものである
(2)Xには、具体的内容は異なるものの殺意が継続している
(3)Aを捕まえる行為は、ガス中毒死させるために必要不可欠であり、殺
害行為の一部である
との3点を認定し、XのAを捕まえようとする行為とAの転落行為の間には因
果関係があると指摘して、Xに殺人罪の成立を認めました。
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■ 法律用語
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法律用語 「遺骨・遺体は誰のもの?」
人が亡くなったとき、「故郷にある実家の墓に入れろ」「現在の住まい
に近い墓に入れたい」などと、親族同士で納骨の場所をめぐり対立してし
まうことがあります。
遺骨や遺体もかたちあるものですから、一般的に所有権の対象になると
されています。
ただし、その性質は普通の財貨と大きく異なりますので、埋葬・管理・
祭祀・供養という目的の範囲でしか所有権は認められません(大審院判例
大正10年7月25日等)。
では、この遺骨・遺体の所有権が誰にあるのか?というと、実は確定し
ていないのです。
現在、次の3説が有力に主張されています。
1説目は、相続人にあるとするもの。
これは、遺骨や遺体も所有権の対象になる以上、相続人が相続で受け取る
べきという考え方です。
2説目は、喪主にあるとするもの。
慣習・条理上、被相続人の遺体や火葬した燃骨は相続財産にはならず、被
相続人との身分関係が最も近い者の中で、その喪主となった者に当然帰属
すると考えます(東京地裁昭和62年4月22日判決)。
3説目は、祭祀主宰者にあるとするもの。
こちらは、系譜や祭具、墳墓の所有権を祭祀主宰者に承継させるという
「祭祀財産の承継に関する規定(民法897条)」に準じて、遺体・遺骨も
祭祀主宰者が承継すべきとします(最高裁平成元年7月18日判決)。
この条文からは、「慣行上の喪主は葬儀に必要な範囲で関係財産の管理
処分権をもつにすぎない」とも読めるため、遺骨・遺体の最終的な所有権
は祭祀主宰者に委ねることになります。
また、埋葬・祭祀の目的である遺体や遺骨が、埋葬道具・施設の墳墓に
収容されるという一連の流れからみても、これらをバラバラに扱うべきで
はないと考えられているようです。
以上3説のうち、最も有力とされているのは3説目の祭祀主宰者ですが、
普通は相続人・喪主・祭祀主宰者が同一の場合が多いです。
故人に心配をかけないよう、遺された者たちは仲良く供養したいもので
す。
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■ 法律クイズ 第293回 【解答】
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「厚労省がパワハラを定義した!」
□解答□
2. 営業成績1位の部下Bが万年係長の上司Aを無視する
厚生労働省が平成24年1月30日に公表した「職場のいじめ・嫌がらせ問
題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」においてパワハラの定義
がされました。
それによると、「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に
対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(※)を背景に、
業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を
悪化させる行為をいう。※上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・
後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行
われるものも含まれる。」と定義されています。
(1)に関しては、上司Aは遅刻をした部下Bに注意をしたにすぎず、業務
の適正な範囲を超えたとは言えずパワハラにはあたらないでしょう。
(2)に関しては、部下Bは営業成績1位の有能な従業員であり、他方上司A
は万年係長ということですので「部下から上司に対して様々な優位性を背
景に行われるもの」に該当すると考えられます。
したがって、解答は(2)となります。
参考:職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ
報告(厚生労働省HP)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021hkd.html
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