「知らなきゃ損する!面白法律講座」第704号
http://www.hou-nattoku.com/
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□□ 知らなきゃ損する!面白法律講座 □□
週1回発行(月曜日)
2014年04月21日 第704号
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発行部数: 18,518部(まぐまぐ 13,112部、melma! 5,406部)
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■ 目 次
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□ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第59回
「予備校を辞めたのに授業料没収!?」
□ なっとく! 法律相談 第692回
「刑務所から出所後の選挙権はどうなるのか?」
http://www.hou-nattoku.com/consult/1331.php
□ 法律クイズ 第378回 【問題】
「不倫をした夫からの離婚請求は認められるでしょうか?」
http://www.hou-nattoku.com/quiz/0815.php
□ 議事録から見る会社法 第33回
「決議事項の上程及び審議(2) ~剰余金処分の件~」
□ 法律クイズ 第378回 【解答】
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■ 今週の話題 ~法律はこう斬る!
第59回「予備校を辞めたのに授業料没収!?」
中途退学者が事前に収めた学費を返還しない旨を定めた大手予備校の規
定が、消費者契約法に違反するかどうかが争われた訴訟の判決で、大分地
裁は14日、「規定は違法で無効」と判断し、規定の使用差し止めを命じま
した。今回は、この訴訟について取り上げたいと思います。
実はこの問題、相手方が学習塾であれば、比較的簡単に学費の返還を求
めることができるものでした。学習塾や語学学校など特定商取引法上の
「特定継続的役務提供」に該当する場合、損害賠償等の上限額が定められ
ているため、その金額を差し引いた残額について返還を求めることができ
ます。しかし、浪人生のみを対象とする予備校の場合は「特定継続的役務
提供」に該当せず、このような規制が設けられていません。したがって、
予備校側が用意している中途解約規定に従わざるを得ないという状況にあ
りました。
では、予備校の設けた中途解約規定はどのような法律に反する可能性が
あるのでしょうか。契約は自由にできるということから考えると何も問題
がないように感じますが、事業者と消費者の間には力関係に大きな差があ
ります。消費者である生徒側はその予備校に入りたければ、ある程度不利
な契約内容でも結ばざるを得ません。そこで、消費者側を保護するために
定められた規定が消費者契約法です。今回はその中でも特に9条1号と10条
が問題になります。
まず、消費者契約法9条1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償額の予
定又は違約金の定める条項について、同種の消費者契約の解除に伴い事業
者に生ずべき「平均的な損害」を超える部分を無効とすると規定していま
す。納入済みの学費を返還しないということは、解除時の違約金の代わり
に学費をあてるということと同視できるため、同条の適用があるのです。
「平均的な損害」とは、その業種における業界の平均的な損害額ではな
く、当該事業者が同種の契約を解除する場合に、実際に負担する平均的な
損害額をいいます。また、解約の時期なども考慮して平均的な損害額が算
定されるため、一律に返還を認めない条項の場合は、無効とされる部分が
出てくると思われます。
次に、消費者契約法10条は、契約条項のうち、消費者の権利を制限、
あるいは義務を加重し、信義則に照らして消費者の利益を制限する条項を
全部無効としています。そして、判例によれば、そのような条項に該当す
るかどうかは、消費者契約法の趣旨、目的に照らして、条項の性質、契約
が成立するに至った経緯、消費者と事業者との間に存する情報や交渉力の
格差その他の事情を総合考慮して判断すべきとされています。
今回の場合、大手の予備校と生徒との間では、個別的な交渉が入る余地
はなく、あらかじめ用意された契約書に従うしかありません。そして、解
約した場合に、まだ受講していない授業料分も合わせて返してもらえなく
なるのでは、解約しないで欠席するのと変わらず、授業料を没収されてい
るようなものです。このような規定は、信義則に反して一方的に消費者の
利益を害するものといえるでしょう。
今回の裁判の特徴として、個々の予備校生ではなく、「大分県消費者問
題ネットワーク」が原告となり、消費者契約法12条に基づき差止請求訴
訟を提起したという点があります。消費者契約法12条は、被害者が多数
いる場合について、被害の発生・拡大を防ぐために、一定の要件を満たし
た適格消費者団体が差止め請求をすることができるとする規定です。差止
めが認められれば、同じ契約を結んでいる多数の消費者に効果が及ぶため、
訴訟に踏み切れない消費者も救済することができます。
しかし、消費者契約法12条で団体が原告になり訴訟ができるのは、差
止請求までです。その後、不当利得として金銭の返還請求を求めるために
は、消費者それぞれが訴訟を提起しなければなりません。これがこの制度
の欠点といえます。
なお、2013年12月に公布された「消費者の財産的被害の集団的な
回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」によれば、不当利得返
還請求などの金銭的な請求権についても適格消費者団体が訴訟を提起する
ことができるのですが、この法律は、2016年12月までに施行されることに
なっており、残念ながら、現時点ではこの制度を利用することはできませ
ん。
それでも、予備校の中途解約で返金が認められたのは画期的であり、浪
人生の悩みも一つ解消されるかもしれません。
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■ なっとく!法律相談 第692回
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「刑務所から出所後の選挙権はどうなるのか?」
□相談□
薬物所持使用で、刑務所に2回入った人がいます。1番最後は、4~5年前
に出所したそうです。今は真面目な生活をしていらっしゃいます。その人
が出所してから、選挙権がないそうなのです。家族には選挙のハガキが届
くのに、自分だけにはいまだにハガキが届かないとのこと。以前、ハガキ
が届いてないけど選挙の投票にいったら過去に事件を起こしているので、
投票できませんと言われたそうです。このままずっとハガキが届かず、選
挙権がないままなのでしょうか?出所してどのくらいすれば選挙権が与えら
れるのでしょうか?
(30代:女性)
□回答□
公職選挙法においては、
(1)禁固以上の刑に処せられその執行を終るまでの者、
(2)禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者
(刑の執行猶予中の者を除く)
などは、選挙権と被選挙権を有しないとされています(11条各号参照)。
刑務所から出所後、一定期間選挙権が停止させられる場合としては、選
挙に関連する犯罪、例えば収賄罪などの罪を犯した場合があります(公職選
挙法11条4号参照。この場合、刑期を満了後5年間は選挙権を有しない)。
したがって、相談者の方の事例のように薬物事犯の場合は、刑期を満了
していれば選挙権があることになります。「刑期を満了した日」を基準と
するため、仮釈放の状態であれば刑期を満了する予定の日までは選挙権が
停止されることになります。まずは「いつが刑期の満了日」とされている
かを確認する必要があると思われます。
他方、ハガキが届かなかった理由としては次の2つが考えられます。
1つ目は、タイミングのズレがありえます。選挙のハガキは選挙人名簿に
登載された情報をもとに発送されます。そして、過去に刑務所に収監され
ていた方の場合、登載時期の関係から選挙のタイミングに刑期を満了した
旨の情報伝達が間に合わず、結果的にハガキが届かなかったというケース
も想定されます。
2つ目は、選挙のハガキは住民登録をされている住所に届きます。そのた
め、住民票が現在住んでいる場所とは別の場所にあり、発送されていない
という可能性もありえます。
こうした可能性も踏まえて、お住いの地域の選挙管理委員会にお問い合
わせをなさるのがよろしいかと思われます。
[関連情報]
・前科とは
http://www.hou-nattoku.com/mame/yougo/yougo44.php
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■ 法律クイズ 第378回 【問題】
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「不倫をした夫からの離婚請求は認められるでしょうか?」
夫Xと妻Y、その子供であるZがいました。夫Xは、結婚しているにもかか
わらずAと不倫し、家を出てAのもとに行ってしまいました。妻YはZを引き
取り、夫Xから譲り受けた土地付きの家を売却し、実兄の家に身を寄せ、自
らも仕事をはじめ、細々とではありますが生活をつづけていました。それ
から36年が経ちました。妻Yは女手一つで子供Zを育て上げた後、まだ一人
で生活を続けていたところに、夫Xから離婚をしたいとの申し出がありまし
た。
さて、この状況で夫Xからの離婚請求は認められるでしょうか?
ちなみに、夫Xから妻Yに対しては、長年の別居期間中、財産の給付とし
て1度、約500万円が支払われています。また、妻Yは一人で生計を立てられ
ています。
1. 不倫をした夫が、長年妻をほったらかしにしていて離婚請求なんて
認められるはずがない!
2. 子供も独立しているし、事実上結婚生活が破たんしているから離婚は
認められる
▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼
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■ 議事録から見る会社法
第33回「決議事項の上程及び審議(2) ~剰余金処分の件~」
前回は決議事項の上程及び審議についての上程・審議の方法について、
個別審議方式と一括審議方式があることを説明しました。今回からは株主
総会の典型的な議案を見ていきたいと思います。
■剰余金処分の件
株式会社は、剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会
の決議によって、配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び
帳簿価額の総額、株主に対する配当財産の割当てに関する事項、当該剰余
金の配当がその効力を生ずる日を定めなければなりません(会社法454条
1項、453条)。この株主総会決議は普通決議で行うこととなります(会社
法309条1項)。
配当財産については、株主の有する株式の数に応じて割り当てることを
内容とするものでなければなりません(会社法454条3項)。
配当というと金銭(配当金)をイメージする方も多いと思いますが、金
銭だけでなく現物配当によることも可能です(454条4項)。ただし、株主
に対して金銭分配請求権(当該配当財産に代えて金銭を交付することを株
式会社に対して請求する権利(会社法454条4項1号))を与えない場合には、
株主総会決議は特別決議となります(会社法309条2項)。
○記載例
┌───────────────────────────────┐
│ 議長から「第×期の剰余金処分の内容について、当期の配当金 │
│ を○円(総額○億円)、期末配当の効力発生日を平成○年○月○日│
│ とする」等原案の説明があった。次いで、議長が本議案について │
│ の賛否を議場に諮ったところ、議決権行使書を含め、出席株主の │
│議決権の多数の賛成をもって原案どおり承認可決した。 │
└───────────────────────────────┘
配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額、
株主に対する配当財産の割当てに関する事項、当該剰余金の配当がその効
力を生ずる日を定めることとなりますが、株主に分かりやすく記載するた
めに、配当金がいくらか、総額がいくらか、いつ配当金が貰えるかを簡潔
に記載すれば十分であると思います。
次回は、取締役及び監査役の選任についての説明をしたいと思います。
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■ 法律クイズ 第378回 【解答】
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「不倫をした夫からの離婚請求は認められるでしょうか?」
□解答□
2. 離婚は認められる
民法770条1項1号では「配偶者に不貞な行為(配偶者以外との姦通)があっ
たとき」は離婚請求が可能だとされていますが、これは不倫を「された」
側の配偶者のみを対象とする条文です。ところが、民法770条1項5号では、
「婚姻を継続し難い重大な事由があるときは離婚の訴えを提起することが
できる」とされています。そこで、この条文を用いれば、不倫をした張本
人から「倫理的には悪いが、不倫が婚姻を継続できない重大な事由だ」と
して離婚請求できそうにも見えます。
心情的には、婚姻関係が破たんする原因を作った夫Xからの離婚請求です
から、「認められない!」と言いたいところです。実際、昔の裁判所での判
断では、「法はかくの如き不徳義勝手気儘を許すものではない」として不
倫をした配偶者(有責配偶者)からの離婚請求を認めませんでした(最高昭和
27年2月19日第三小法廷判決)。
ところが、時代がうつり、設例のような事件が起こった時に、裁判所の
判断が変わりました。有責配偶者からの離婚請求であっても、
(1)相当長期間の別居
(2)未成熟子の不存在
(3)妻が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて過酷な状況に置かれ
る等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような
特段の事情がないこと
が認められれば有責配偶者からの離婚請求であっても肯定されるようにな
りました(参照:最高裁昭和62年9月2日大法廷判決)。
現実に破たんしているのだから、その実情を優先して判断しようとする
流れが、この判決から生まれたとされています。法は、時として道徳や倫
理と正面から向き合うことを要請される。そんな事件となったのです。
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┃ (株)リーガルフロンティア21 担当 石井・柳下
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┃ 東京都千代田区神田神保町3丁目10 神田第3アメレックスビル7階
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