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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第732号

                      http://www.hou-nattoku.com/
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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2015年01月05日                        第732号
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 発行部数: 18,100部(まぐまぐ 12,718部、melma! 5,382部)
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■ 目 次
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  □ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第87回
   「罰金を支払わないとどうなる?逃げ得を許さない労役場留置制度とは」

  □ なっとく! 法律相談 第720回
   「交際相手に対するストーカー行為をやめさせるには?」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1405.php

  □ 法律クイズ 第406回 【問題】
   「ビルの写真を撮影したら著作権の問題がある?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0891.php

  □ 議事録から見る会社法 第61回
   「決議事項 ~計算書類等の提出及び業績開示の承認1~」

  □ 法律クイズ 第406回 【解答】


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■ 今週の話題 ~法律はこう斬る!


  第87回「罰金を支払わないとどうなる?
      逃げ得を許さない労役場留置制度とは」

  さいたま地検は県警と協力して、道交法違反などで罰金を納付していな
 い悪質な未納者の一斉収容を実施し、12月17日までに、未納者30人を労役
 場に留置したと発表しています。
  対象となったのは2006年9月から今年6月までに罰金の略式命令を受けた
 未納者。何度も納付を督促したにもかかわらず、罰金を納付してこなかっ
 た悪質な未納者57人に収容状を発布したそうです。うち納付の見込みがな
 い未納者30人をさいたま県内三つの労役場に留置しました。さいたま地検
 は「納付した人との不公平が生じる。逃げ得は許さない」とのコメントを
 出しています。今回は、労役場に留置とはどういうことか、見てみたいと
 思います。

  労役場とは、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に規定さ
 れていますが、法務大臣が指定する刑事施設に附置しています(法287条
 1項)。刑務所や拘置所内にあります。

  労役場留置とは、資力がないなどの理由により罰金や科料を納めない場
 合に、その人を刑事施設内の労役所に留置して作業をさせることをいいま
 す。留置される日数は裁判で決められますが、最長の期間は、罰金の場合
 は2年、科料の場合は30日となっています(刑法18条)。労役場留置一日あた
 りの金額は裁判官の裁量により決められますが、現在は多くの裁判におい
 て1日の留置を罰金5,000円相当と換算されているようです。しかし、脱税
 など罰金が高額な犯罪の場合では、1日5,000円では2年以内におさまらない
 ため、2年以内に収まるように1日あたりの金額を大きくして判決を言い渡
 される例もあります。最近では、相続税を約29億円脱税したと認められ罰
 金が5億円となった事件で、1日200万円に換算した期間被告人を労役場に留
 置するという判決が出されています(大阪地判平成23年5月25日)。

  労役場内の処遇としては、性質に反しない限り懲役受刑者と同じように
 扱われるようになっています(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する
 法律288条)。したがって、労役場に入る際には身体検査が行われますし(同
 法34条)、面会も原則として親族等に限られます(同法111条)。労役場留置
 には非常に多くの制約があります。

  もっとも、労役場留置を執行するには時間や費用がかかるため、検察庁
 としてもなるべく避けたいものではあるようです。

  労役場留置を避けたいけれども、罰金全額は支払えない・・・といった場合
 にどうするかですが、罰金は刑罰ですので、定められた期間内に一括納付
 が原則とされています。検察庁の案内によれば、定められた期間に納付で
 きない場合には、納付の通知をしている検察庁の徴収事務担当者に相談し、
 分割できる場合もあるようです。しかし、検察官の許可が必要です(徴収事
 務規程17条)ので、認められるケースはあまり多くはなさそうです。


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■ なっとく!法律相談 第720回
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 「交際相手に対するストーカー行為をやめさせるには?」

 □相談□

  私の彼は40代のミュージシャンで50代女性のストーカー被害に遭ってい
 ます。女性は毎日のようにメールを送りつけ、今まで購入したCDやDVDの代
 金を支払わないと被害届や告訴状を出すと言っています。警察に相談して
 も、埒があかず、逆に彼を逮捕するようなことを言われました。彼に落ち
 度は全く無く、精神的にもかなり参っています。何か良い解決法は無いも
 のでしょうか?


                        (40代:女性)


 □回答□

  ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下ストーカー規制法)では、
 「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなか
 ったことに対する怨恨の感情を充足する目的で」「つきまとい等(メールの
 送信も含まれます)」が行われていた場合、ストーカー行為となり、処罰の
 対象となります。
  ご相談内容からは詳細はわかりかねますが、上記のような目的で毎日メ
 ールを送信されているような状況であれば、50代女性がなさっている行為
 はストーカー行為として処罰対象となる可能性はあります(ストーカー規制
 法2条5号)。
  にもかかわらず、警察機関に相談をしてもないがしろにされているとい
 うのがお困りの点だろうと拝察します。

  これまで述べたように、ご相談いただいたケースではストーカー規制法
 における処罰も考えられる状況ですが、ストーカー行為に関する罪は「親
 告罪」であることに注意が必要です(ストーカー規制法13条2項)。ストーカ
 ー行為に対する警告を求める申出(同法4条)やストーカー行為の禁止命令を
 求める申出(同法5条)については、誰が行うことができるのか、法令上明確
 ではありませんが、こちらについても、立法趣旨、経緯から被害者本人だ
 けが行うことができると考えられます。
  ご相談内容から拝察すると、警察への相談は交際相手であるご相談者様
 からなされているのではないかと思われます。まずは、交際相手を諭して
 警察へ真摯に相談されるように促してみてはいかがでしょうか?

  通常であれば警察が被害を確認すると、ストーカー行為を行う人物に対
 して警告や禁止命令(被害者に近づいてはならないとする内容など)などを
 出すという対応がなされます。
  万が一、警察が相談に応じない場合の対応策としては、メールの受信画
 面などをコピーしたり、写真に撮る等して証拠を収集する。その際、メー
 ルの頻度がわかるように(受信回数が多いほど、ストーカー行為としての性
 質は強まります)、日時なども記録しておく。それらをまとめた上で、警察
 へご相談されることがよいのではないかと考えます。
  それでも警察機関の対応が無い場合は、例えば各地域に設けられている
 法テラスの窓口などを頼ってみるのもひとつの方法ではないかと考えられ
 ます。
 (参照:法テラス犯罪被害者支援
 http://www.houterasu.or.jp/higaishashien/higai_naiyou/stalker/)
 ストーカー行為は犯罪行為であり、刑事事件の手続きについての説明や、
 犯罪被害者支援制度に明るい弁護士などの紹介を受けることも可能です。


  [関連情報]
  ・元カレにいたずらメールを送ったところ、「訴える」と言われたが...
   http://www.hou-nattoku.com/consult/222.php



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■ 法律クイズ 第406回 【問題】
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 「ビルの写真を撮影したら著作権の問題がある?」

  Bさんは、最近できた高層ビルを見学にいきました。このビル、有名な建
 築家の設計によるもので、高さ300mを誇る、最新鋭のオフィスビルです。
 そこで記念撮影にと、ビルの外観写真を撮りました。
  Bさんが撮影した写真は、有名な建築家のビルだから著作権法上違法なも
 のとなるでしょうか?

 1. 基本的に問題にならない

 2. 違法なものである


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼





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■ 議事録から見る会社法


 第61回「決議事項 ~計算書類等の提出及び業績開示の承認1~」

 ■計算書類等の提出及び業績開示の承認

  株式会社は、事業年度ごとに、計算書類・事業報告とその附属明細書を
 作成しなければなりません(会社法435条2項)。計算書類とは、貸借対照表、
 損益計算書、株主資本等変動計算書、及び、個別注記表を指します(会社法
 435条2項、会社計算規則59条1項)。これらの計算書類・事業報告等は、会
 社によって作成され、監査を受けた後に、取締役会の承認が受けた上で(会
 社法436条3項)、定時株主総会に提出されます(会社法438条1項)。
  したがって、取締役会の承認が必要である以上、計算書類・事業報告等
 の承認が取締役会でなされた場合には、取締役会議事録の決議事項にその
 承認があった旨を記載する必要があります。

 ■誰が計算書類・事業報告等の書類を作成するのか?

  計算書類・事業報告等の書類を作成するのは、会社法や会社法施行規則
 等に定めはありませんが、一般的には代表取締役であると考えられていま
 す。なお、委員会設置会社においては、取締役会の決議によって計算書類
 ・事業報告等の書類を作成するという業務執行の決定を執行役に委任する
 ことができるとされています(会社法416条4項本文)。

 ■計算書類・事業報告等の監査を受けるために取締役会決議は必要か?

  計算書類・事業報告等を作成後に監査を受けるために取締役会の決議が
 必要か否かについて会社法上、特に規定は置かれていません。この点、計
 算書類・事業報告等の監査を受けるために監査役・会計監査人に提出する
 行為がどのような性質を有するかで、取締役会決議の要否が変わってきま
 す。

 1.代表取締役の業務執行権限と考える見解
  計算書類・事業報告等の監査を受けるために監査役・会計監査人に提出
  する行為が代表取締役の業務執行権限と考えた場合には、計算書類・事
  業報告等の提出をするか否かは、取締役会の決議なしに代表取締役の業
  務執行権限として代表取締役が判断することができることとなります。
 2.会社法362条4項柱書「その他の重要な業務執行」と考える見解
  計算書類・事業報告等の監査を受けるために監査役・会計監査人に提出
  する行為が会社法362条4項柱書「その他の重要な業務執行」と考えた場
  合、計算書類・事業報告等の提出行為は、重要な業務執行として、その
  決定を代表取締役に委任することはできず、取締役会決議によって決め
  なければなりません(会社法362条4項)。

  会社法の前身である旧商法では、附属明細書の作成を取締役に委任する
 ことができないとするのが通説であったことや、同じく旧商法では監査の
 前に取締役会の承認を義務付けていたことからすると、現在においても計
 算書類・事業報告等の提出行為は、「重要な業務執行」として取締役会の
 承認が必要であると考えるべきです。
  したがって、計算書類・事業報告等の提出行為について取締役会の承認
 を得た場合には、取締役会議事録についてもその旨の記載をする必要があ
 ります。

 ■上場会社における業績予想や役員人事等

  上場会社においては、証券取引所に業績説明を行うと同時に記者クラブ
 にも「決算短信」を配布して発表をしています。そして、「決算短信」に
 は、来期の業績予想や役員人事等の重要事項が記載されています。来期の
 業績予想や役員人事等の重要事項は、計算書類・事業報告等と同じく「重
 要な業務執行」(会社法362条4項柱書)に当たることから、取締役会での承
 認を得るべきです。そして、取締役会での決議がなされた場合には、その
 旨を取締役会議事録に記載することとなります。

  次回は、今回の続きとして具体例を交えつつ説明をしていきたいと思い
 ます。
 
 
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■ 法律クイズ 第406回 【解答】
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 「ビルの写真を撮影したら著作権の問題がある?」

 □解答□
 1. 基本的に問題にならない

  建築物を写真撮影する場合、基本的には著作権法上の問題は生じません。
 そもそも建築物は、「建築の著作物」に分類されるものの、すべての建築
 物に著作権が認められるわけではなく、「文化的精神性の表現として建物
 の外観を中心に検討すべき」だとされ、芸術性のある一部の建物にしか認
 められません(福島地判平成3年4月9日など参照)。
  したがって、オフィスビルなどを撮影したとしても、著作権で保護され
 ていないため、問題はありません。

  加えて、建築の著作物であっても写真撮影をする事は著作権法46条にお
 いて認められているため、結局のところ問題になることはありません。


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