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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第744号

                      http://www.hou-nattoku.com/
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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2015年04月06日                        第744号
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 発行部数: 18,085部(まぐまぐ 12,702部、melma! 5,383部)
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■ 目 次
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  □ ある弁護士の獄中体験記 第1回
   「はじめに」

  □ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第99回
   「相次ぐリベンジポルノ摘発」

  □ なっとく! 法律相談 第732回
   「公務員が役所の人事案を盗み見した場合は罪に問われますか?」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1431.php

  □ 法律クイズ 第418回 【問題】
   「乱闘に巻き込まれた国会職員に手当が出ていたってホント?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0916.php

  □ 議事録から見る会社法 第73回
   「決議事項 ~利益相反取引の承認2~」

  □ 法律クイズ 第418回 【解答】


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■ ある弁護士の獄中体験記
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 山本 至(やまもと いたる)
 元弁護士。昭和29年生まれ。昭和51年早稲田大学卒業。金融機関勤務後平
 成元年司法試験合格、同2年司法研修所入所(修習44期)。平成4年弁護士
 登録(東京弁護士会)。
 平成18年に証拠偽造、証人威迫容疑で逮捕。無罪を主張したにもかかわら
 ず、平成24年10月に最高裁判所で懲役1年6月の実刑判決が確定。宮崎刑務
 所、大分刑務所で服役し、平成26年4月出所。現在は自身の体験談などの執
 筆活動中。
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  第1回「はじめに」

  平成18年当時の私は弁護士としてある暴力団の関係者Aを被疑者・被告
 人とするオレオレ詐欺で使用する銀行通帳譲受という刑事事件の弁護人を
 していた。これが私の事件の発端であるが、詳細は後日に譲り、ここでは
 ごくごく簡単に事件を振り返る。

  この事件で複数の通帳譲渡人関係者は通帳の譲渡先はAであるというい
 わば目撃証言をしていた。普通に考えれば完全に有罪である。ところが、
 被告人は完全否認でまったく身に覚えがないという。さっさと認めれば執
 行猶予だろうし、暴力団関係者だから前科など関係のないことであるにも
 かかわらず完全否認である。

  そこでいろいろ調査すると依頼者の兄貴分Bのさらに兄貴分にあたる者
 の関係者Cが通帳売買に関与していることが分かり、そのCと会った私は
 さらに詳しい事情を聞いた上での自首をすすめていた。その最中に、Bは
 Cに対して私の弁護士費用を請求しこれを受領していたらしい。そして、
 Bはそれが恐喝と言われないために、Cに恐喝ではいとの念書を差し入れ
 させたのであるが、その念書を作成した際に、私は念書作成とは無関係に
 Cから事情を聴くために同席していた。

  裁判はすすんでいったが、Cらがまともな証言をしないことから弁護は
 行き詰っていた。ふと念書の存在を思い出した私がこれを確認すると「私
 がやったことで・・・」との記載があり、この念書を、この念書で自白し
 ているCが犯人であるとの証拠として提出した。ところが、この念書はA
 を無罪としたい私が無理矢理にCに書かせた内容虚偽の文書であるとして、
 私は証拠偽造犯人にされた。

  また、その後別の刑事事件で接見をした被疑者を「共犯者を隠せ」と脅
 したとの証人威迫・脅迫の犯人ともされた。この第二の事件は、「第一の
 事件では私に動機がなく裁判の維持が難しい。第二の事件は激情犯だから
 動機は不要でこれで有罪にできる」と捜査検事が私に語ったように、第一
 の事件が無罪となった場合に備えて作られた事件であった。

  あり得ないことだと多数の弁護士が弁護人となり弁護活動に邁進してく
 れたが、宮崎地裁は有罪判決を下した。私たちは最高裁まで頑張ったが平
 成24年10月に有罪が確定した。声を大きくして言いたい。私は何らの罪も
 犯していない。冤罪が問題となっている今でも、裁判所が有罪としたから
 やったんだろうと盲目的に思う人が多いと思う。しかし、私の有罪判決は
 冤罪である。弁護士の犯罪はそのすべてといっても過言ではないように金
 銭がらみであるが、それも含めて私には罪を犯す動機すらないではないか
 と。

  高裁は動機について「犯罪構成要件」ではないと判示したが、誰も犯罪
 成立要件が欠けるなどとは主張していない。動機のない犯罪はない。それ
 だけ見ても私が罪を犯すというのに強い疑いが残るはずであると主張した
 だけである。自由心証主義の名の下で検察官主張に唯唯諾諾と追随するだ
 けの刑事裁判には失望した。

  いずれにしても有罪判決しかも実刑判決が確定したわけであるから、粛々
 とそれに従わざるを得ず、私は1年6か月、未決勾留日数中40日を控除し
 て1年4か月と20日間の服役を余儀なくされた。その前には警察の留置場
 暮らし、拘置所暮らしも経験した。そこで、私自身の事件の詳細は後日に
 記載することとして、私が体験した刑事処遇の実態、つまり留置場暮らし、
 拘置所暮らし、刑務所暮らしをここに書いていくこととする。留置場は宮
 崎で最も新しいと言われている宮崎北警察署、拘置所は山中にある宮崎刑
 務所に併設されている宮崎拘置所、刑務所は最初の1週間が宮崎刑務所で
 残りは近代的な大分刑務所である。(つづく)

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■ 今週の話題 ~法律はこう斬る!
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  第99回「相次ぐリベンジポルノ摘発」

  好意を寄せていた女性の裸の画像をツイッター上にアップし、3月27日に
 リベンジポルノ防止法違反の疑いで会社員の男性が警視庁に逮捕されまし
 た。先月には、元交際相手の性的な写真をばらまいたとして福島県の会社
 員が全国で初めてリベンジポルノ防止法違反の疑いで逮捕されています。
  今回は、リベンジポルノ防止法について見てみたいと思います。

  リベンジポルノ防止法の正式な名称は、「私事性的画像記録の提供等に
 よる被害の防止に関する法律」といいます。以前こちらの記事
 (http://www.hou-nattoku.com/topic/047.php)でも取り上げましたが、
 当時はまだわが国においては法整備がなされていませんでした。しかし、
 近年、交際中に撮影した元交際相手や元配偶者の裸などの性的な画像を、
 撮影された人の同意なくインターネット上に公表するという嫌がらせ行為
 (リベンジポルノ等)によって、被害者が長期にわたって大きな精神的苦
 痛を受けるケースが増加していたため、それらを防ぐために2014年11月19
 日に成立し、11月26日から施行されています。

 「私事性的画像」とは、

 1. 性交・性行為類似行為
 2. 他人が撮影対象者の性器等を触る行為又は撮影対象者が他人の性器を触
   る行為で、性欲を興奮、刺激するもの
 3. 衣服の全部又は一部を着けない姿態で、殊更に性的な部位が露出され又
   は強調されているもので、かつ、性欲を興奮、刺激するもの

 のいずれかを撮影した写真、電磁的記録に係る記録媒体やその他の物(例
 えばUSBメモリ等)と定義されています。

  第三者が撮影対象者を特定することが出来る方法で、私事性的画像を不
 特定又は多数の者に提供し、又は公然と陳列した場合は、公表罪として3年
 以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(法3条1項)。また、前述
 の行為をさせる目的で私事性的画像を提供した場合は、公表目的提供罪と
 して1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されることになっています
 (法3条3項)。LINE、Facebook等によって拡散目的で特定の少数者に私事
 性的画像をおくる行為は、後者に該当します。これらは親告罪ですので、
 被害者などの告訴がないと裁判ができません。

  今回のケースでは、本人の顔が写っていませんでしたが、画像には女性
 のあだな等が添えられていて、本人が特定可能となっており逮捕されたと
 のことです。
  ひとたび写真がインターネット上に掲載されてしまうと、瞬時に全世界
 へと発信され、様々な場所で保存されてしまうことにより、画像が半永久
 的に残るという取り返しのつかない事態となります。法律で処罰されるよ
 うになったとはいえ、あくまでも事後的な措置でしかありません。交際相
 手等から、そのような画像を求められても、絶対に応じないように、常日
 頃から予防しておくことが大切です。

  なお、リベンジポルノ防止法においても、性的な画像が拡散した場合に
 被害の回復を図ることが非常に難しいことに言及しており、国や地方公共
 団体に対して、性的な画像を(1)撮影させない、(2)提供しない、(3)要求し
 ないこと等を国民に対して啓発するように求めています(法6条)。

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■ なっとく!法律相談 第732回
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 「公務員が役所の人事案を盗み見した場合は罪に問われますか?」

 □相談□

  地方公務員である友人が、休日の役所で、上司の机の引出しを開け、中
 に入っていた、部門職員の異動案を盗み見ました。その一部を他部署の同
 僚にメールしたところ、その事を人づてで聞いた他の者が内部告発をし、
 人事部門の耳に入り人事の組み替えが行われたようです。
  そこでご相談なのですが、友人のした事は、公務員の懲戒規定でいう情
 報漏洩「職務上知ることのできた秘密を漏らし、公務の運営に重大な支障
 を生じさせた職員は、免職又は停職にする」に該当するのでしょうか?また、
 刑法の秘密漏示罪として罪に問われるのでしょうか?


                        (30代:男性)


 □回答□

  まず、刑法の秘密漏洩罪(刑法134条)は、弁護士や医師など、特殊な立場
 にある人間が職務上知り得た情報をほかの人に漏らすことを処罰対象とし
 ています。ここに地方公務員は含まれていませんので、秘密漏洩罪にはあ
 たりません。
  なお、地方公務員法34条においても、刑法における秘密漏洩罪に似た
 「守秘義務」について定める規定があります。しかしながら、この規定は、
 例えば「あるゼネコンが工事を落札しやすくするため他社の入札価格をこ
 っそり伝える」ように、公務員の立場を使って、他を利するために職務上
 知り得た情報を漏洩することを想定しており、今回のような役所内での非
 行的行為を対象とはしていません。そのため、守秘義務違反ということに
 はならないように考えます。

  むしろ、ご相談内容のように、盗み見した人事案を漏らしたという非行
 的行為が公務員の懲戒規定に該当するかどうかが、主たる問題と言えます。
  懲戒については、地方公務員法29条で規定されています。「条例や、地
 方公共団体の規則、地方公共団体の機関の定める規程などに反した場合」、
 「職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」、「全体の奉仕者たる
 にふさわしくない非行のあつた場合」を懲戒処分の対象としています。
  ご相談内容で触れられている「公務員の懲戒規定」は、おそらく各自治
 体で定められた規則ではないかと思われます。「職務上知ることのできた
 秘密を漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員」という規定の
 仕方を見ると、すでに述べた「守秘義務」を想定しているのかなとも考え
 られます。そうすると、今回の行為は守秘義務違反と言いづらい面がある
 ため、ご指摘いただいた規則から懲戒処分を受けることは考えづらくなり
 ます。

  しかし、規則に当てはまらず、当該規定を根拠に懲戒処分がなかったと
 しても、人事案を盗み見て友人に伝える行為は、「職務上の義務に違反す
 る(通常、公務員には誠実に職務を全うする義務があるため、人事案の盗み
 見はこれに反します)行為」、または、「全体の奉仕者としてふさわしくな
 い行為」と判断される可能性は十分にあります。
  そのため、黙っているよりはやってしまったことを報告し、反省してい
 る旨をしっかり伝え、なんとか処分を軽くしてもらうようにお願いするの
 が、「一人の大人として」大切な対応なのではないかと思われます。


  [関連情報]
  ・国家公務員の守秘義務
   http://www.hou-nattoku.com/mame/yougo/yougo267.php



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■ 法律クイズ 第418回 【問題】
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 「乱闘に巻き込まれた国会職員に手当が出ていたってホント?」

  国会開催中に、強制採決をしようとしたところ乱闘になるというのを見
 かけた人もいるのではないでしょうか?
  さて、かつて乱闘に巻き込まれた国会職員(国会議員を補佐したり、議事
 運営に携わる公務員)に手当を出す法律があったって本当でしょうか?

 1. ホント

 2. ウソ


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼





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■ 議事録から見る会社法


 第73回「決議事項 ~利益相反取引の承認2~」

  前回は、利益相反取引の承認についての手続について概略を説明をしま
 した。今回は、直接取引についての説明を、例を踏まえながらしていきた
 いと思います。

 ■直接取引

  直接取引とは、取締役が自己又は第三者のために会社と行う取引のこと
 です。上述したとおり、取締役が会社に不動産を売却するような場合が直
 接取引の典型例です。直接取引をしようとするときには、取締役会の承認
 を受けなければなりません(会社法356条1項2号、365条1項)。したがって、
 承認を受けた場合には取締役会議事録に記載する必要があります。

 ●代表による直接取引
 ┌───────────────────────────────┐
 │1.取締役の自己取引承認について                 │
 │                               │
 │  議長から、A 取締役が代表取締役を兼務している 甲 株式会社 │
 │ が製造・販売している製品αを年間××トン、××億円で購入す │
 │ ること等を内容とする契約を締結したい旨の詳細説明があった。 │
 │  次いで議長がこれを議場に諮ったところ、全員異議なくこれを │
 │ 承認した。なお、A 取締役は特別利害関係人のため、決議に参加 │
 │ しなかった。                        │
 │                               │
 └───────────────────────────────┘

  これは、取締役が他の会社を代表して会社と取引を行う場合の記載例を
 載せています。取締役会が承認を決議する場合、会社と利益が衝突する取
 締役は、決議に特別の利害関係があるため、議決に加わることはできませ
 ん(会社法369条2項)。したがって、取締役会決議における多数決の定足数
 に特別利害関係取締役は含まれません。特別利害関係取締役の氏名は、取
 締役会議事録の記載事項として規定されているので、議事録に記載する必
 要があります(会社法施行規則101条3項5号)。

 ●代理による直接取引
 ┌───────────────────────────────┐
 │1.取締役の自己取引承認について                 │
 │                               │
 │  議長から、A 取締役が営業部長を兼務している 甲 株式会社が │
 │ 製造している当社製品αの部品を年間×万個、×億円で購入する │
 │ 契約を A 取締役が 甲 株式会社を代理して当社と締結したい旨 │
 │ の説明があった。                      │
 │  次いで議長がこれを議場に諮ったところ、全員異議なくこれを │
 │ 承認した。なお、 A 取締役は特別利害関係人のため、決議に参加 │
 │ しなかった。                        │
 │                               │
 └───────────────────────────────┘

  これは、取締役が他の会社の営業部長として代理して会社と取引を行う
 場合の記載例を載せています。営業部長は営業について包括的代理権を与
 えられた使用人です(会社法14条)。また、代理であっても特別利害関係人
 に当たるので、決議に参加することはできません。

 ■まとめ

  今回は、利益相反の直接取引についての規制の説明とその承認を受けた
 場合の取締役会議事録の記載について、例を踏まえながら説明しました。
  次回は、もう1つの規制である間接取引について説明をしたいと思います。
 
 
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■ 法律クイズ 第418回 【解答】
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 「乱闘に巻き込まれた国会職員に手当が出ていたってホント?」

 □解答□
 1. ホント

  かつては、「国会職員法」、およびそれを受けた「国会職員の給与等に
 関する規程」などによって乱闘に参加した国会職員に対して手当が支給さ
 れていました。

  より具体的な法律上の規定としては、「国会開会中勤労の強度が著しい
 事務に従事した国会職員に対して支給する手当」という内容です。今は時
 代遅れを指摘されて廃止されています。
  乱闘を止めながら「体を使うんじゃなくて、頭でしっかり法律を作って
 くれよ~」と思っていたりして...


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