「知らなきゃ損する!面白法律講座」第784号
http://www.hou-nattoku.com/
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□□ 知らなきゃ損する!面白法律講座 □□
週1回発行(月曜日)
2016年03月14日 第784号
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発行部数: 18,816部(まぐまぐ 13,454部、melma! 5,362部)
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■ 目 次
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□ ある弁護士の獄中体験記 第41回
「隣人」
□ なっとく! 法律相談 第772回
「母の連れ子が法要代を払わず困っています」
https://www.hou-nattoku.com/consult/1529.php
□ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第139回
「認知症男性JR事故死損賠訴訟、最高裁判決が出る」
□ 法律クイズ 第456回 【問題】
「民法において、いわゆる『しつけ』を認めた条文がある?」
https://www.hou-nattoku.com/quiz/1014.php
□ 想うままに ー弁護士日誌から 第40回
「覚せい剤」
□ 法律クイズ 第456回 【解答】
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■ ある弁護士の獄中体験記
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山本 至(やまもと いたる)
元弁護士。昭和29年生まれ。昭和51年早稲田大学卒業。金融機関勤務後平
成元年司法試験合格、同2年司法研修所入所(修習44期)。平成4年弁護士
登録(東京弁護士会)。
平成18年に証拠偽造、証人威迫容疑で逮捕。無罪を主張したにもかかわら
ず、平成24年10月に最高裁判所で懲役1年6月の実刑判決が確定。宮崎刑務
所、大分刑務所で服役し、平成26年4月出所。現在は自身の体験談などの執
筆活動中。
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第41回「隣人」
前回、2階にいた際に隣人との関係で、私が1階の独居に移転となったこ
とを書いた。
その2階での隣人(上独1にいる人)は、相当に変わった人だった。精神的
なものかもしれないが。
日中は非常におとなしく物音一つしない。入浴で一緒になることもあり、
姿も見るが大柄な人だった。
ちらりと見た部屋の中にはかなりの数の週刊マンガ本が置いてあった。
刑務官とも仲良くやっていて、特段問題があるようには思えなかった。
刑務官との話を聞いていると、時々高齢の母親が面会に来て現金も差し
入れてくれているようである。「お母さんも大変だよな、遠いところから。
心配かけないようにしなきゃな」「お母さんには申し訳ないです」などと
いった会話を聞いていると切なくなってくる。
真夜中のことであった。隣から水音が聞こえる。洗濯をしているようだ。
かなりうるさい。
今頃何?そもそも洗濯はできないでしょと思っていると、警備の刑務官が
飛んできた。延々注意を受けていたが、そのうちどこかに連れていかれた。
翌朝、刑務官から、そのときの隣の様子を聞かれたが、時間も分からな
いし、ただただ「何か洗濯をしていたような音がしていました」としか答
えられなかった。
その日のうちに彼は戻ってきたが、それから幾日か後のことのやはり真
夜中。音がするので何かと思い起き上がって外を見ると(なんとか、彼の独
居前の廊下を見ることができる)、彼が、ぶつぶつ独り言をつぶやきながら、
食事などの差入口からマンガ本を次々と廊下に放り投げている。
刑務官は別の場所を巡回しているのかやってこない。しかし、しばらく
すると警備の刑務官が6人来た。
それからの彼の暴れ方が尋常ではなかった。当然直接に見ることはでき
ないが、物音から想像するに本棚を壊してそれを投げつけたり、ありとあ
らゆる物が刑務官に向かって投げられているようである。
一人の刑務官は、廊下でその様子をビデオ撮影している。幾度も口頭で
説得しようとしていた刑務官らであったが、もう限界と判断したのであろ
う、突如「制圧」と叫ぶや、数人の警備担当刑務官が部屋内になだれ込み、
一人が片手、もう一人が他方の片手、一人が片足、もう一人が他方の片足
を持ち、体前面を下にして(飛行機運びといわれるらしい)、彼は運び去ら
れていった。
ビデオ撮影担当の刑務官はその状況をすべて撮影していた。後日のもし
もの場合に備えてのビデオ撮影だと思う。
巡回している刑務官がいなかったのに、何故状況把握ができたのだろう
と不思議に思っていたが、彼の部屋自体がそもそも特別な部屋で、ビニー
ル製の畳の部屋内には監視カメラが取り付けてあった。つまり、監視カメ
ラを見ていた警備の刑務官が駆け付けたのだ。
その彼は翌日にはまた復帰してきた。想像だが、一時的に保護室みたい
なところに入れられたのだろう。
おそらく、未決の場合、懲罰という制度がないのかもしれないし、あっ
てもできる限り懲罰にしないのかもしれない。だからこそ、あれだけ暴れ
ても、その翌日には、「上独1」室に復帰してくるのだろう。
このような監視カメラが付いている部屋はいくつかあるようだ。私も一
時的にその部屋に入ったことがある。夕食後に部屋の蛍光灯が切れたこと
から、その取替作業中、別の部屋で待たされたことがある。
このときに入った部屋に違和感を覚えた。何かが違うという感覚だった。
よくよく見ると、畳がビニール製なのだ。さらに見ると、出入り口の上の
方に監視カメラがあった。要保護状態の者を収容する部屋であった。
(つづく)
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■ なっとく!法律相談 第772回
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「母の連れ子が法要代を払わず困っています」
□相談□
昨年、母が交通事故でなくなりました。父と母の間の子供は私1人ですが、
母には父と一緒になる前に産んだ連れ子が3人います(母の子は合計4人)。
父は文句もいわず、連れ子の3人も育てました。
ですが、20年ほど3人は実家にも来ず、母の葬儀や法要にも来ず、香典、
お花もありませんでした。腹が立ちましたが、相続については法定通りに
分割しました。しかし、葬儀代金などは協議しましたが1円も負担してもら
えませんでした。
法律がないのもわかりますが、今後の法要代など、調停で請求しても意
味ないでしょうか?相手3人は弁護士も立てていて直接協議できません。3人
の弁護士さんを通して話しましたが、1円も払わないと答えがありました。
(30代:女性)
□回答□
ご指摘のように、法要代などの費用負担について法律で明確な規定があ
りません。位牌やお墓などを誰が「相続」するか、という部分について祭
祀主宰者が相続する(民法897条1項)ということが規定されるに留まり、葬
儀費用や、その後の法要費などを誰が負担するべきかについては法文にお
いて触れていません。
参考となる裁判例でも、(これは葬儀の事例ではありますが)実際に葬儀
を執り行った「喪主」が負担するべき、という判断がある(東京地判昭和61
年1月28日)一方、民法897条で決まる祭祀主宰者が負担すべきとする裁判例
もあります(最判平成1年7月18日)。
ただ、これはあくまで「亡くなられた方のために行った葬儀代の負担」
についての判断です。
ご相談の事例では、「これから生じる法要代」を負担させたいというも
のです。
法律上明確な規定がない上に、参考になる裁判例もない点が悩ましいと
ころです。
方法としては、ご指摘頂いているような調停を活用して、相手方に払っ
てもらうように合意形成を図っていくということはありえます。
ただ、交渉が決裂した場合、訴訟手続に移行します。
こうなると、将来生じる債権についての負担を求めるというのは民事訴
訟において請求しづらいものであるため(基本的に、既に確定している債権
を支払ってくれないから支払えと言って争うのが民事訴訟です)、敗訴の可
能性すらあります。
相手方である連れ子の3人は、代理人として弁護士を立てている状態であ
れば、こうした点を見越して「支払いを突っぱねるのが有効だ」と考えて
いるのではないかと考えられます。
正直に申し上げて分が悪い状態です。やりきれない気持ちは十分に理解
できますが、他の相続人をあてにせずに、ご相談者様ができる範囲で法要
を執り行うというのが良いのではないかと思います。
争うよりも、誠心誠意供養してあげることが、お母様のためになるので
はないかと考えます。
[関連情報]
・元夫の葬祭やお墓の管理は誰がやるべき?
https://www.hou-nattoku.com/consult/1428.php
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■ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第139回
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「認知症男性JR事故死損賠訴訟、最高裁判決が出る」
愛知県大府市で列車にはねられ死亡した認知症男性(当時91歳)の遺族が
JR東海に損害賠償を求められた訴訟の最高裁判決が3月1日に言い渡されま
した。
高齢化が進む日本で、親を介護する人々にとっては他人事と思えない裁
判であり、どのような結論が出されるか注目を集めていました。
今回はその内容について取り上げたいと思います。
事故は2007年12月に起こりました。亡くなった男性は、妻(当時85歳)が
少し目を離したわずかな間に戸外へ出て、最寄り駅の隣の駅で線路に入っ
たとみられています。
男性の子ら(65歳)は、「父親は認知症があり、故意に起こした事故では
ない」とJR側に伝えましたが、JRは「他者に損害を及ぼさないよう家族は
監視する義務があった」として、電車の遅れなどに伴う賠償金約720万円を
家族に対して請求しました。
1審は全額賠償を命じ、2審では妻に対しては損害賠償を一部命じ、子供
について責任はないものとして損害賠償請求を認めませんでした。
しかし、妻及び子供たちは、介護の体制を整え、介護に全力を尽くした、
監視には限界がある、との思いから、最高裁へ上告しました。
最高裁は、
・「精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が民法714条
1項にいう『責任無能力者を監督する法定の義務を負う者』に当たるとす
ることはできないというべきである。」
・「法定の監督義務者に該当しない者であっても、責任無能力者との身分
関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の
防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単
なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべ
き特段の事情が認められる場合には、衡平(こうへい)の見地から法定の
監督義務を負う者と同視してその者に対し民法714条に基づく損害賠償責
任を問うことができるとするのが相当であり、このような者については、
法定の監督義務者に準ずべき者として、同条1項が類推適用されると解す
べきである」
と述べました。
つまり、妻であっても直ちに監督義務が認められるものではないけれど
も、特段の事情がある場合には監督義務を負う場合がある、としています。
そして今回のケースにおいては、妻自身も要介護1の認定を受けている状
況等を考慮して、妻が監督することが現実に可能ではなかったとして、監
督義務を引き受けているという特段の事情は見当たらないとして、妻の監
督義務を否定しています。
子供についても、20年以上同居しておらず、事故直前の訪問状況等の状
況を考慮して、監督することが可能であったとはいえず、特段の事情は認
められないとして、監督義務を否定しました。
今回の最高裁の判断については、損害賠償を認めなかった結論において
は妥当であるという評価が多いようです。
しかし、監督義務の判断については個別のケースによっては、認められ
る場合もあることになっていますので、予断を許さない状況であると言え
るでしょう。
また、岡部裁判官が、妻や子供の監督義務は認めつつ、介護の過程で行
ってきた措置をとりあげて「その義務を怠らなかった」として、損害賠償
責任を否定するという意見を述べていますが、そちらの考え方のほうが良
いのではないかという評価も多いようです。
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■ 法律クイズ 第456回 【問題】
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「民法において、いわゆる『しつけ』を認めた条文がある?」
民法では、いわゆる「しつけ」を認めている条文があるでしょうか?
1. ひどい暴力にもつながり得るので一切認めていない
2. ある程度は認めている
▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼
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■ 想うままに ー弁護士日誌から 第40回
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「覚せい剤」
元プロ野球選手の有名人が覚せい剤事犯で逮捕されたが、覚せい剤所持
の現行犯で逮捕される瞬間を一度だけ目撃した、というかその場に立ち会
ったことがある。
ある会社を紹介され相談を受けたのだが、事務所に来た社長と総務担当
者からの相談内容は次のようなものであった。
雑居ビルの上の方の階に、その会社は入居しているのだが、トイレの窓
を開けると、隣のビルとの間に、幅1メートル程度の隙間がある。その隙間
にトイレットペーパーの切れ端が落ちており、たまたま隣のビルの人が、
会社のトイレの窓からさらにトイレットペーパーの切れ端が投げ落とされ
ているのを見て、会社に注意がきた。
ただ、誰がトイレに入っていたのか、その時点では特定できていなかっ
た。
その後会社の者が注意をしていると、ある男性社員がトイレに入ると、
トイレットペーパーの切れ端が落とされることに気が付いた。
挙動不審な行動に、すぐには注意をせず、よもやと思いながらも、男性
社員が退社をした後、机の中を調べてみると、注射器とビニール袋が出て
きたため、あわてて私のところに相談に来たということである。
どのように処理するかが問題であった。相談の結果、次のような段取り
とすることにした。
まず、翌々日早朝に(翌日は私に他用があったため)最寄り警察に相談を
し、男性社員が覚せい剤所持なり使用を認めたならば、すぐに所持品を携
帯させて男性社員を連れていくこと(警察署までは徒歩5分であった)、それ
を拒否したりした場合には、すぐに電話をするので、警察官を会社に寄越
してもらいたいことを要請した。
その日、警察に寄った後すぐに会社に戻り、男性社員が出社するのを待
った。何も知らずに出社した男性社員を、そのまま会議室に連れていき、
私が聞き取りをした。
トイレットペーパーの切れ端をトイレの窓から外に投げ捨てるというこ
とを幾度かしていることは分かっているが、どういうことなのかというこ
とから聞き始めた。
男性社員の答えは当然ながら要領を得ないものであった。特異な行動で
あるけど、薬とかしているんじゃないですよねと確認をすると、そんな馬
鹿なことをするはずはないと断言された。
やむなく、男性社員に立ち会ってもらって、机の中を念のために見せて
もらいたいことを依頼すると、意外にすんなりと了承が出た。内心、既に
机の中には何もないかもしれない、空振りに終わるかなと思った。
男性社員立会いの下で、机の中を見ると、案の定一昨日まであった注射
器などが消失していた。しかし、袖引き出しを見ると、男性社員の私有物
である小型バックが入っており、それも中身を見せてもらいたいと頼んだ。
ところが、これに男性社員は猛反発した。かなりおかしい。
社長も、見せてくれたら疑いも晴れるじゃないかと説得を続け、しばら
く後には、観念したのか、中身をすべて開示してくれた。もちろん、そこ
には注射器、覚せい剤とおぼしき白い粉末の入ったビニール袋2個が出てき
た。
男性社員は、知人から預かったものである、覚せい剤か何か知らないと
いう、よくある言い訳をして、警察に行くことを拒否した。やむなく、私
は警察に電話をして会社に来てもらうこととした。
会社に到着した刑事二人によって、すぐに逮捕されるのかと思ったら、
私が刑事二人から会議室に呼ばれた。刑事は、出てきた物が覚せい剤であ
っても、それが彼の物かどうか分からないという。
え~という感じだったが、万が一に備えて、男性社員の机の中を見る様
子から発見に至る経過について、他の社員にビデオで隠し撮りをしてもら
っていたこと、したがって、男性社員の私物であるバックから出てきたこ
とも間違いのないことを伝えた。
刑事は納得したのかどうか、とにかく男性社員に会うということとなっ
たが、男性社員はそこで観念したのだろう、刑事の問いにすべてを自認し、
かつ試薬検査で覚せい剤であるということとなり、覚せい剤所持の現行犯
で逮捕されていったという次第である。
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■ 法律クイズ 第456回 【解答】
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「民法において、いわゆる『しつけ』を認めた条文がある?」
□解答□
2. ある程度は認めている
民法822条では「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に
必要な範囲内でその子を懲戒することができる」と規定しており、監護教
育に必要な範囲で、しつけ(=懲戒)を許容しています。
もっとも、この条文には、様々な意見があり、懲戒ということを認める
と児童虐待につながるため一切廃止すべきだという考えや、親が子を育て
るための手だてとしてのしつけを法が一定程度認めないのは不都合だとい
う考えなどがあります。
なかなか難しい問題ですが、家庭円満であることが望まれることだけは
間違いない事実ではないでしょうか。
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