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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第808号

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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2016年09月26日                        第808号
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 発行部数: 18,622部(まぐまぐ 13,281部、melma! 5,341部)
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■ 目 次
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  □ ある弁護士の獄中体験記 第65回
   「宮崎刑務所生活(その3)」

  □ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第164回
   「二重国籍問題ってどんな問題?」

  □ 法律クイズ 第480回 【問題】
   「ゲームのプレイ動画を動画投稿サイトに掲載するのは違法?」
    https://www.hou-nattoku.com/quiz/1070.php

  □ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第165回
   「郵便物の送付だけで選挙違反。意外に厳しい内容とは?」

  □ 法律クイズ 第480回 【解答】


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■ ある弁護士の獄中体験記
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 山本 至(やまもと いたる)
 元弁護士。昭和29年生まれ。昭和51年早稲田大学卒業。金融機関勤務後平
 成元年司法試験合格、同2年司法研修所入所(修習44期)。平成4年弁護士
 登録(東京弁護士会)。
 平成18年に証拠偽造、証人威迫容疑で逮捕。無罪を主張したにもかかわら
 ず、平成24年10月に最高裁判所で懲役1年6月の実刑判決が確定。宮崎刑務
 所、大分刑務所で服役し、平成26年4月出所。現在は自身の体験談などの執
 筆活動中。
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 第65回「宮崎刑務所生活(その3)」

  宮崎刑務所に入所して3日目の午後と4日目に、初めての刑務作業となっ
 たことは、前回に書いた。
  受刑者、いわば拘置所の面倒見さんのような、新入受刑者の面倒をみる
 受刑者がやってきて、7~8センチ四方の白い紙の束を渡された。鶴を折っ
 てくれという。折り方を図示した紙も渡された。急がなくていいから丁寧
 にやってくださいと言われる。
  手先が不器用な私に、しかもこんな小さな折り紙をやらせるのかと思い
 ながらも逆らうことなどできない。かなり根性を入れて折ったつもりだが、
 出来上がりを見て我ながらひどいなと思った。

  木曜日もその作業だった。そして金曜日は矯正指導日でラジオ放送につ
 いての感想文を書き、夕食時間となった。
  夕食後刑務官に呼ばれて、身体物品検査室へ行く。月曜日の朝に移監と
 なることを告知され、自分の荷物をまとめておくようにと言われた。
  このとき、水曜日と木曜日の刑務作業の報奨金の告知もなされた。作業
 時間自体それほどのものではないし、そもそもおそろしく低額であるとは
 聞いていたが、それでも告知を受けてびっくりした。確か50円くらいだっ
 たと思う。書き間違いではないので念のため。

  「行先は大分ですか」と聞いたが、「当日の朝まで教えられない」との
 返答。こういうところは形式的だと思う。
  たぶん大分だろうなと思いつつ、ひょっとしたら山口かなとも思った。
 というのも、刑務所というのは、その分類によって収容する受刑者がある
 程度決まっているからだ。前にも書いたが、もう少し詳しく説明をする。

  いくつかの例をあげれば、A級刑務所は初犯(純粋な初犯以外にも刑の執
 行後5年以上を経過した者、つまり法律上の再犯者でない者も入るらしい)
 を、A級に対応するB級刑務所は暴力団関係者や犯罪傾向の進んだ者を収容
 する。また、L級は刑期の長い者(longの頭文字)、I級は禁錮刑の者をいう。

  F級は外国人を(foreignの頭文字)、W級は女子刑務所(womanの頭文字)と
 いう具合である。J級というのもあって、juniorの略で年少者が入る。それ
 に似たY級もあり、これは26歳未満の成人を指すyoungの略である。

  私は初犯であるからA級刑務所に行くはずで、宮崎刑務所はB級だからこ
 こに長くはいないはずだと分かっていた。しかも、九州管内のA級刑務所は
 大分刑務所しかないのである(ただし、大分刑務所はL級でもあるが、L級も
 収容するというにすぎない短期長期混合型施設である)。
  ただ、九州内に限らず、大阪以西の刑務所であればそこでの収容の可能
 性もないわけではなく、とすると山口県の美禰にある美禰社会復帰促進セ
 ンターもあり得るが、そこがいいなと思っていた。

  美禰は第三セクターというか官民協同の刑務所で、コンクリートや鉄格
 子もなく居室もきれいだし、受刑者は無線タグをつけていて、それによっ
 て施設側が位置情報を確認するという近代的施設であると、噂で聞いてい
 た。かなり開放処遇に近い施設であるから、そこがいいなと思っていたの
 である。
  もっとも、後日、山口出身の人に聞いたら、美禰の冬の寒さは半端では
 なく美禰など行かなかった方が良いと言われた。なお、美禰ほどハイテク
 化されてはいないが、栃木県の喜連川にも社会復帰促進センターがある。
 鈴木宗男氏が入所していたことで有名である。

  金曜日の夜から隣、さらにその隣に人が入った様子である。一つ挟んだ
 隣の人にどこからか話しかける人がいる。「○○さんおめでとうございま
 す。お世話になりました。娑婆に出ても元気でやってください」「俺も世
 話になったな~。○○さんはあとどれくらい残っているの」なんて会話を
 している。その人はもう出所なんだと、うらやましくなった。
  すぐ隣の人は、どうも二人部屋らしく、ぼそぼそと話声が聞こえる。ど
 うも月曜日に移監のようだ。私と同じく大分かもしれない。実際そうであ
 った。(つづく)


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■ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第164回
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 「二重国籍問題ってどんな問題?」

  民進党の新しい党首に選ばれた蓮舫民進党代表代行に、日本国籍と台湾
 籍とのいわゆる「二重国籍」問題が浮上しています。9月13日には、父親の
 出身地である台湾籍が残っていたことを明らかにし、「17歳のときに台湾
 籍を抜いたという認識だったが、発言が一貫性を欠いていたことにもおわ
 び申し上げる」と陳謝しましたが、厳しい意見も存在し、蓮舫氏は厳しい
 立場に立たされています。
  今回はこの「二重国籍」とはどういうものなのかについて、考えてみた
 いと思います。

  現在、多くの国では外国人であったとしても多くの権利が認められ、保
 護されています。しかし、幾つかの分野では国籍の有無が、権利の享有・
 義務の負担の基準になっています。
  例えば参政権、入国や居住の権利、兵役を設けている国では兵役の義務
 についても国籍で判断されています。
  また、他国によって自分の身体や財産に侵害を被った場合、加害国に対
 して適切な救済を与えるように国に保護してもらうことも、国籍の有無に
 関係してきます。

  「二重国籍」とは、二つの国籍を持っている状態のことを指します(二
 つ以上の国籍をもっている状態を「多重国籍」と言います)。
  この二重国籍状態となった場合、2つの国家(その国家が兵役を国民に
 課す場合)から国民として兵役の義務を履行するように要求されたり、国
 家の保護を受けようとする際にどちらに求めることができるかなどが問題
 となります。
  そこで、現在は、必ず唯一の国籍を持つべきと定めた国籍単一の原則
 (国籍唯一の原則)が、国際法の基本的な考え方となっています。
  もっとも、多重国籍を認めている国も多くあり、アメリカ、カナダ、ロ
 シア、フランス、イタリアなどが挙げられます。

  わが国では、国籍に関しては「国籍法」という法律が設けられています。
 その中で、「外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有す
 ることとなつた時が20歳に達する以前であるときは22歳に達するまでに、
 その時が20歳に達した後であるときはその時から2年以内に、いずれかの国
 籍を選択しなければならない。」(国籍法14条1項)として、生まれつきの
 二重国籍者は22歳に達するまでに国籍を選択しなければならないことにな
 っています。
  国籍の選択については、

 1.外国の国籍を離脱する
 2.日本の国籍を選択し、かつ外国の国籍を放棄する旨の宣言(選択の宣言)
  をする

 という2つの方法があります。

  もし、国籍の選択をしない場合は、法務大臣から選択をすべき旨の催告
 を受けることになります。
  催告を受けても1ヶ月以内に国籍の選択をしない場合には、原則として日
 本の国籍を失うことになります(国籍法14条2項、3項)。法務省が手続き
 について詳細な案内を載せていますので、御覧ください。
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html

  蓮舫氏のケースについては、国籍法違反にあたるかどうか今後の調査次
 第とのことです。
  二重国籍についても解消しなければならない問題ですが、蓮舫氏の説明
 が二転三転するということに不信感を持っているという意見も多く、信頼
 をどう回復していくかについても併せて解消しなければならないでしょう。



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■ 法律クイズ 第480回 【問題】
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 「ゲームのプレイ動画を動画投稿サイトに掲載するのは違法?」

  ゲームのプレイ動画を動画投稿サイトに掲載するのは著作権法上の違法
 となるでしょうか(動画投稿サイトがゲーム製作者に許諾を得ていないとい
 う前提において)?

 1. 著作権法上違法である

 2. プレイ動画は「著作物」ではないため、違法とならない


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼




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■ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第165回
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 「郵便物の送付だけで選挙違反。意外に厳しい内容とは?」

  元防衛大臣の田中直紀氏が、7月に行われた参議院選挙において「無届け
 文書送付」を行ったとして書類送検されました。
  公職選挙法では、事前に選挙管理委員会に届け出を行っていない文書の
 送付を禁じており、届け出を行わずに約2万通の投票を呼びかける文書を作
 成、郵送したことが違反となったとされています。

  直接的に問題になった規定としては、田中直紀氏が比例代表で選出され
 ていたことから公職選挙法142条の「文書図画の頒布」1の2です。
  具体的には、「参議院(比例代表選出)議員の選挙にあつては、公職の候
 補者たる参議院名簿登載者一人について、通常葉書 十五万枚、中央選挙
 管理会に届け出た二種類以内のビラ 二十五万枚」とあり、2種類以内のビ
 ラであれば25万枚まで使用可能であるとされています。
  おそらく、この2種類を超えてビラを作成し、ダイレクトメールのように
 有権者へ郵送したものと考えられます。郵送した場合、あいさつ状の禁止
 を規定した公職選挙法147条の2にも抵触する恐れもあると考えられます。

  今回問題となったダイレクトメールまがいの文書送付の他にも、インタ
 ーネットを活用した投票の呼びかけ。新聞広告などを活用した手法など、
 様々な投票呼びかけの方法が事細かに規制されています。
  しかし、こうした投票の呼びかけ行為が細かく規制されるのはどういっ
 た理由によるのでしょうか?

  この点、公職選挙法1条では、同法の目的として「その選挙が選挙人の自
 由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて
 民主政治の健全な発達を期することを目的とする」と規定されています。
 「公明かつ適正な選挙」と「選挙人の自由な意思表明」のバランスをとる
 ことが主たる内容です。

  確かに、選挙に立候補する人は、ダイレクトメールやインターネットな
 ど、ありとある手法を通じて、自らの政治理念などをPRしたいと思うはず
 です。もっとも、どのような手法を採用するにしても「コスト」がかかり
 ます。
  簡単に言えば、お金をかけて宣伝をしまくれば、その分選挙戦は優位に
 なるわけです。

  一方で、立候補する人はお金に余裕のある人ばかりではありません。む
 しろ、そうした人の中にも、政治家としての資質を備えた立派な人がいる
 かもしれません。
  そのため、お金の有無による有利不利をできるだけなくして、公平な選
 挙PRを行わせて、しっかりと投票者に判断してもらうために、かけられる
 PRの手法と量に制限をかけようとしているわけです。

  確かに、表現の自由という憲法上の重要な権利(日本国憲法21条)はあり
 ますが、それを推し進めてしまっては、これまた国民の重要な権利として
 規定される選挙(日本国憲法前文、43条などを参照)の公正さを担保しえな
 くなってしまいます。そのためのバランスなのです。
  にもかかわらず、できるだけ有利に選挙戦を戦いたいとして、冒頭のよ
 うな行為に及んでしまう候補者がいるのが残念でなりません。法を守る意
 識がない人が当選して、立法に携わろうとするのには疑問が生じます。

  投票権を有する国民は、こうした公職選挙法をきちんと守っている候補
 者なのか、その中でどのようなPR活動を行っている人なのか、など詳細に
 考えてから「清く重い一票」を投じる必要があるのではないでしょうか。



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■ 法律クイズ 第480回 【解答】
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 「ゲームのプレイ動画を動画投稿サイトに掲載するのは違法?」

 □解答□
 1. 著作権法上違法である

  著作権法上違法であるかどうかは、そもそも「ゲームのプレイ動画」が
 著作物と判断されるかどうかにかかっています。
  著作物と判断された場合、著作権者の許諾を得ずに衆目に触れる場に動
 画を投稿することは、著作権者の権利を侵害したということになります(具
 体的には、複製権や上映権の侵害にあたる可能性があります。著作権法21
 条以下を参照)。

  この点、ゲームのプレイ動画が、著作物として認められるかについては
 争いがありました。小説や漫画など、「あ、これは著作物だね」と容易に
 判断しかねるものであるためです。

  これについて、「中古ゲームソフト販売事件」(最判平成14年4月25日)な
 どにおいて、ゲームが「映画の著作物」(著作権法2条3項)として認められ
 ており、したがってプレイ動画を動画投稿サイトに(著作権者に許諾を得ず
 に)掲載すると違法となります。


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