「知らなきゃ損する!面白法律講座」第555号
http://www.hou-nattoku.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□□ 知らなきゃ損する!面白法律講座 □□
週1回発行(月曜日)
2010年11月22日 第555号
───────────────────────────────────
発行部数: 20,741部(まぐまぐ 15,239部、melma! 5,502部)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 目 次
───────────────────────────────────
□ なっとく! 法律相談 第543回
「遺産分割の審判は、法定相続分どおりに決められる?」
http://www.hou-nattoku.com/consult/977.php
□ 法律クイズ 第229回 【問題】
「『強制起訴』って何?」
http://www.hou-nattoku.com/quiz/0461.php
□ 裁判員のための一口判例解説
第四十三回 「驚愕と任意性」
□ 法律用語 「行政解剖と司法解剖」
□ 法律クイズ 第229回 【解答】
====================================================================
★「市民と弁護士つながるネット」オープン!★
市民と弁護士つながるネットは、一般市民の方々に弁護士の現状を正し
く知ってもらうことを目的としたコミュニティサイトです。
市民・弁護士双方が議論に参加することによって、相互理解を深めていた
だきたいと考えています。
投稿されたテーマへのコメントや、これ以外にも弁護士に関する疑問・
質問など、お気軽に投稿してみて下さい。
▼市民と弁護士つながるネット
http://www.hou-nattoku.com/tsunagaru/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ なっとく!法律相談 第543回
───────────────────────────────────
「遺産分割の審判は、法定相続分どおりに決められる? 」
□相談□
私は、長男として両親と同居し、生活費等は一切もらっていませんでし
た。相続発生後、兄弟の1人と感情的なしこりがあったこともあり、遺産分
割の調停がまとまりません。このままだと調停が不調になることが強く予
想されます。今後、審判や裁判になった場合、どのように分割されるので
しょうか。民法906条には「各相続人の年齢、職業、心身の状況および生活
の状況その他の事情を考慮してこれをする」とありますが、東京高裁昭和42
年1月11日判決には「法廷相続分に従わなければならず、これを無視した分
割審判はできない」とあります。これをどう解釈すればいいのですか。私
には寄与分(扶養型)もあり、何ら面倒をみなかった相手方に、相続分が
均等にいくことには到底納得できません。
(50代:男性)
□回答□
基本的には法定相続分による分割がなされますが、寄与分も考慮されま
すし、現実にどう分割するかにあたっては、民法906条の様々な事情が考慮
されます。
遺産分割には、遺言による指定分割のほか、協議分割と調停分割、審判
分割があります。
被相続人の「遺言」がない場合は、相続人の協議によりますが、協議さ
えまとまれば、それが共同相続人の自由な意思に基づく限り、法定相続分
に従わない分割も有効です。
しかし、審判分割による場合は、基本的に法定相続分にしたがって分割
がなされるべきであると考えられています。
民法906条は、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、
各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考
慮してこれをする。」と規定していますが、これは、遺産の分割を「実行」
する際の指針を定めたものと考えるのが一般的です。
つまり、遺産の「分割」は法定相続分にしたがってなされなければなり
ませんが、その分割の「実行」、たとえば遺産の中に土地や建物、預金な
どがある場合に、土地や建物は現在居住している者に取得させ、預金は他
の物に取得させ、両者の間に不均衡があれば、預金などで均衡をとって分
割すべきであることを定めた規定と考えられているのです。
ご相談の場合も、審判分割では、基本的に法定相続分に従って分割割合
が決められます。この法定相続分の算定には、寄与分も当然考慮されます。
寄与分は、被相続人の財産の維持・増加のために、「特別の寄与」があっ
たと認められる必要があります。単に同居していたことにとどまらず、親
子関係として通常期待されるような程度を超える貢献があったことを主張
しましょう。あなたが自分の家や土地を提供したり、両親に生活費を渡し
たりして生活を援助し、両親の支出を減少させた結果として相続財産の維
持に寄与したといえる事情があれば、寄与分が認められるでしょう。
[関連情報]
・両親を養ってきた長男も相続分は平等?(寄与分)
http://www.hou-nattoku.com/consult/83.php
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律クイズ 第229回 【問題】
───────────────────────────────────
「『強制起訴』って何?」
著名な政治家であるAさんは、資金管理団体の政治資金規正法違反で告発
されたものの、検察は嫌疑不十分のため不起訴処分としました。その後、
検察審査会が起訴相当という議決をしましたが、検察官は再捜査により再
び不起訴処分としました。そのため、現在は検察審査会が二度目の審理を
しているところです。もしまた起訴相当の議決が出された場合、Aさんは「強
制起訴」されるのですが、この強制起訴とは、誰がAさんの公訴を提起する
のでしょうか?
1. 検察官
2. 裁判官
3. 裁判所が指定した弁護士
▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 裁判員のための一口判例解説
───────────────────────────────────
第四十三回 「驚愕と任意性」
~福岡高裁昭和61年3月6日判決~
犯罪に手を付けたものの、犯人が途中で犯行をやめる場合があります。
そのきっかけは、警察が来たからとか、「悪かった」と反省したからと
か、事件によってざまざまでしょう。
この犯行を中止したきっかけが、邪魔が入ったからなどではなく、自分
の意思によるものであった場合、刑法は「中止犯」として、特別に刑の減
軽を定めています(43条)。
今回紹介する事案では、犯罪をやめたきっかけが流血を見て驚愕したこ
とである場合にも、自分の意思によるもの(任意性あり)だと評価できる
かが争われました。
被告人Xは、「相手が死ぬかもしれないけれどそれでもかまわない」とい
う認識(未必の故意)のもと、Aの頸部を果物ナイフで1回突き刺しました
(このとき、2回、3回と追撃する意図はありませんでした)。
その直後、Aは口から多量の血を吐き出しました。
血は呼吸のたびになおも激しく流れ出し、苦しそうに顔をゆがめるA。
これを見たXは、驚愕すると同時に「大変なことをした」と思い、あわて
てタオルをAの頸部に当て、止血をして、電話で救急車の派遣と警察署への
通報を依頼しました。
この後もXは、Aを励ましながら救急車の到着を待ち、到着後は消防署員
とともにAを担架に乗せて車内に運び込みました。
さらに、ちょうどその頃駆けつけた警察官に「Aの首筋をナイフで刺した」
と自分で告げ、現行犯逮捕されるに至ったのです。
原審は、中止犯の成立を認めず、単なる殺人未遂罪として処理。
これに対し弁護側は、事実誤認などを理由に控訴しました。
福岡高裁は、Xに中止犯の成立を認めました。
まず、判断にあたって、「自分の意思」で中止したというには、外部的
な障害ではなく犯人の任意の意思、つまり内面がきっかけであるべきとの
基準を示しました。
次に、Xが犯罪を中止するために行為したきっかけは、Aの多量の出血と
いう外部的事実による驚愕であると認定します。
ここまでだと、外部的なものだからと中止犯が認められないようにも思
えるのですが…
高裁は、流血などの外部的事実が引き金となった中止行為のすべてを、
「外部的な障害をきっかけとするものだから」と中止犯から除くのは相当
ではないと考えました。
そのうえで、中止したきっかけが外部的事実であっても、犯人がそれを
見て必ずしも中止行為に出るとは限らない場合に、あえて中止行為に出た
ときには、任意の意思によるものとみるべきとし、Xの一連の行為を、流血
を見たからといって当然になされるものではないと評価したのです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律用語
───────────────────────────────────
法律用語 「行政解剖と司法解剖」
現代における「普通の死」とは、老衰、または、病気になって診療をう
け、診断されているその病気で死亡することと考えられています。
こうした死の場合、事前に医師が診療等に関わっており、死因・身元も
はっきりしているため、一般的に解剖はされません。
解剖が必要なのは、これに当てはまらない死、「異状死」を遂げた者の
死因を突き止めたい場合です。
このとき行われる解剖を法医解剖といいますが、これはさらに行政解剖
と司法解剖の2種類に分けられます。
今回は、2つの解剖の違いについて話をしましょう。
異状死体が見つかると、まずはその状況から死因を判断する「検視」が
行われます。
これによって犯罪の疑いがないと判断されたものは行政解剖に、逆に犯
罪の疑いありとされたものは司法解剖にまわされます。
行政解剖は、行き倒れ死体や自殺死体、凍死体などに行われます。
目的別に、
(1)公衆衛生や伝染病予防、身元確認を目的とする解剖
(2)食中毒が疑われる者に対する解剖(食品衛生法59条)
(3)検疫感染症(鳥インフルエンザなど)への感染が疑われる者に対す
る解剖(検疫法13条)
の3パターンがあり、解剖時には原則として遺族の承諾が必要とされてい
るため(死体解剖保存法7条)、解剖執刀医が、所轄警察署長の解剖嘱託書
と遺族の同意書をとりつけて行います。
一方、司法解剖は、犯罪死の疑いがある死体の死因や、創傷・凶器の性
状、自殺・他殺の別などを明らかにする目的で行われます。
こちらにまわすかどうかは、捜査にあたる司法警察職員と刑事調査官と
の協議(検察官の意見を聞くことも)によって決まります。
一般的に、殺人罪(刑法199条)や傷害致死罪(同205条)、いわゆる
「ひき逃げ」死亡事故、多重礫禍(被害者が複数台の自動車に相次いでひ
かれ、どの自動車による損傷が死因となったか不明な場合)は解剖される
ことが多いようです。
この解剖は、刑事訴訟法により捜査段階で行われるため、手続をする司
法警察職員は裁判官から「鑑定処分許可状」をもらう必要があります(刑
事訴訟法224条・225条)。
ちなみに、行政解剖の最中に、犯罪死の疑いがあるとわかった場合は、
すぐに行政解剖を中止し、司法解剖のための手続きをとらなければなりま
せん。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律クイズ 第229回 【解答】
───────────────────────────────────
「『強制起訴』って何? 」
□解答□
3. 裁判所が指定した弁護士
刑事事件において、被告人を起訴できる権限は、検察官にあります(刑
事訴訟法247条)。ただ、その権限行使に民意を反映させ、不当な不起訴処
分がなされないようにするために、「検察審査会」という機関があります。
くじによって選ばれた国民(公職選挙法上における有権者)11人によって
構成されます(検察審査会法10条1項)。
検察審査会が、11人の審査員中8人以上の多数で「起訴相当」の議決をし
た場合(39条の5第1項1号)、検察官は再捜査しなければなりません(41条)。
検察官が3カ月以内に起訴しなかった場合は、再び検察審査会が審査しま
す(41条の2)。審査により改めて「起訴議決」がされると、被疑者は必ず
起訴されます(強制起訴)。
この強制起訴は、裁判所が指定した弁護士が、起訴状を書いたり公判で
犯罪を立証したりします(41条の9、10)。
そのため、Aさんをめぐる事件について、検察審査会が二度目の「起訴相
当」の議決をした場合、検察官ではなく、裁判所が指定した弁護士が公判
を担当することになります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 「弁護士・法律事務所データベース」のご案内
───────────────────────────────────
「弁護士・法律事務所データベース」は全国の弁護士・法律事務所を網羅
したデータベースサイトです。
http://www.hou-nattoku.com/lawyers/
名前や性別・事務所所在地・得意分野など、様々な条件を設定して弁護
士や法律事務所を検索することが可能です。弁護士選びの参考にぜひお役
立て下さい!
弁護士の皆様の情報登録もお待ちしております。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
法、納得!どっとこむ、モバイルサイトでも情報配信中!
───────────────────────────────────
「法、納得!どっとこむ」でおなじみの「もし裁判員に選ばれたら?」
や「裁判員のための刑法入門」を始め、法律相談・法律クイズを携帯サイト
で配信中!外出先や通勤途中でも「法律」が学べます。
⇒ 『法律Q&A』http://homu.tv/q?m=lifrml
⇒ ※携帯電話からのみご利用いただけます。
※3キャリア対応(DoCoMo・au・SoftBank)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ お知らせ
───────────────────────────────────
★皆様のメルマガに対するご意見をお聞かせください。
どんな些細なことでも結構です。
また、取り上げて欲しい話題・ご質問などもお待ちしております。
専用フォームで簡単に送信できます ▼Click!!
https://www.hou-nattoku.com/opinion/
★メルマガの相互紹介を募集しています。
ご希望の方は、お問合わせフォームよりご連絡下さい。
https://www.hou-nattoku.com/opinion/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行元:NPO法人 リーガルセキュリティ倶楽部
監 修:弁護士 密 克行、弁護士 浅井 健太、弁護士 中西 啓
───────────────────────────────────
法律相談の応募: http://www.hou-nattoku.com/ask/
登 録 ・ 解 除: http://www.hou-nattoku.com/about/magazine.php
バックナンバー: http://www.hou-nattoku.com/mailmag/
ご意見・ご感想: https://www.hou-nattoku.com/opinion/
───────────────────────────────────
関連サイト
リーガルフロンティア21: http://www.lifr21.com/
パラリーガルWEB:http://www.paralegal-web.jp/
法律事務所求人ナビ:http://xn--3kq5dn1lntqcjdhtuj3a.jp/
知って納得!離婚どっとこむ:http://www.nattoku-rikon.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━