「知らなきゃ損する!面白法律講座」第558号
http://www.hou-nattoku.com/
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□□ 知らなきゃ損する!面白法律講座 □□
週1回発行(月曜日)
2010年12月13日 第558号
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発行部数: 20,757部(まぐまぐ 15,258部、melma! 5,499部)
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■ 目 次
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□ なっとく! 法律相談 第546回
「B型肝炎訴訟の原告に加わりたい!」
http://www.hou-nattoku.com/consult/983.php
□ 法律クイズ 第232回 【問題】
「ピッチャーはデッドボールの責任を負う?」
http://www.hou-nattoku.com/quiz/0467.php
□ 裁判員のための一口判例解説
第四十六回 「法律の不知」
□ 法律用語 「整理解雇」
□ 法律クイズ 第232回 【解答】
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■ なっとく!法律相談 第546回
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「B型肝炎訴訟の原告に加わりたい! 」
□相談□
B型肝炎団体訴訟が各地で行われておりますが、原告になれる条件とし
て、予防接種法が施行される昭和23年7月1日が起点になっています。元々
この訴訟は国が行ってきた予防接種で注射器の使いまわしによりB型肝炎
が感染、拡大したというものです。過去の判例から勝訴できそうな条件と
して、免疫ができ上がる7歳から考えて、予防接種法が施行された昭和23
年から7歳を差し引いた昭和16年ごろ以降の方しか原告になれないという
ことですが、法律がなかったからといって原告になれないというのはおか
しいのではないでしょうか。予防接種時の注射器の使いまわしが原因でB
型肝炎になっている人を、予防接種法施行以前か以後かで分けてしまうの
はおかしいと思います。それ以前の方々は他にどんな法律をたてに裁判す
ればいいのでしょうか?
(40代:女性)
□回答□
一般的には、生年月日が昭和16年7月1日の方が、訴訟で国の過失を認め
させるのは困難であるといえます。肝炎対策基本法の具体化が待ち望まれ
ます。
たしかに、生年月日が昭和16年7月1日以前の方であっても、予防接種時
などの注射器の使い回しによってB型肝炎になったのであれば、予防接種
を行った国の責任が認められるべきです。また、各地のB型肝炎訴訟にお
ける「原告になれる条件」を満たしていなくても、個人で国家賠償訴訟を
提起すること自体は、当然可能です。
ただ、訴訟でその責任を認めさせるには、被害者の側が、当時の医学的
状況からして、予防接種時に注射器を使い回しすべきではなかったといえ、
国の過失が認められること等を主張立証しなくてはなりません。
B型肝炎は、現在でこそ注射器の使い回しによって感染することが判明
していますが、その事実がまったく判明しておらず、国が対策をとること
ができなかった時期に、注射器の使い回しによってB型肝炎に感染してし
まったとしても、国に過失があるとはいえないと考えられています。
そして、B型肝炎ウイルスに感染した原告の国家賠償請求を認めた最判
平成16年6月16日は、注射器の使い回しによりB型肝炎に感染する恐れがあ
ることが判明していた時期を、欧米諸国では遅くとも昭和23年、わが国で
は遅くとも昭和26年当時であったと認定しています。また、予防接種法は
昭和23 年7月1日より施行され、それ以降に集団予防接種が強制的に行わ
れています。
そのため、多くの弁護団は、「昭和23年7月1日」を一つの区切りとして、
その時点ですでに免疫のある7歳になっている場合(生年月日が昭和16年7
月1日以前の場合)には、国の責任を確実に追及することは難しいものと
して、団体訴訟の原告から除外しているようです。
これらのことからすれば、生年月日が昭和16年7月1日以前の方が、国家
賠償請求訴訟で国の責任を認めさせることは、一般的には困難が伴うもの
と言わざるを得ません。
ただ、個別的なケースによっては、国の責任を認めさせることが可能で
ある場合もあり得るので、B型肝炎の団体訴訟を提起している弁護団に一
度相談してみることをお勧めいたします。団体訴訟の原告には加われなく
ても、個別訴訟を提起できる場合があるかもしれません。
なお、平成22年4月1日より「肝炎対策基本法」が施行され、B型肝炎とC
型肝炎につき明文で国の責任を認めていますが、患者の支援や医療政策の
整備の基本指針を制定したにとどまっています。今後は、医療費や生活費
の助成など、具体的に負担を緩和する立法政策が待ち望まれるところです。
[関連情報]
・胎児傷害[水俣病刑事事件]
http://www.hou-nattoku.com/precedent/0012.php
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■ 法律クイズ 第232回 【問題】
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「ピッチャーはデッドボールの責任を負う?」
プロ野球の投手であるAさん。試合に登板中、投球術の一つとして、わ
ざと打者の近くにボールを投げて打者をのけぞらせた後、次の打球でアウ
トコースに球を投げて打者を打ち取ろうとしたら、手元が狂ってデッドボー
ルになってしまいました。
このデッドボールにより、打者にケガを負わせてしまったのですが、A
さんは、打者のケガについて民事(損害賠償など)や刑事(傷害罪)の責
任を負うことはあるでしょうか?
1. いずれの責任も負う
2. いずれの責任も負わない
3. 民事上の責任は負うが、刑事上の責任は負わない
4. 民事上の責任は負わないが、刑事上の責任は負う
▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼
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■ 裁判員のための一口判例解説
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第四十六回 「法律の不知」
~最高裁昭和32年10月18日第二小法廷判決~
日本の法律は量が膨大なうえ、社会情勢に応じて増えたり、改められた
り、廃止されたり…と年々変化します。
中には違反すると処罰される法律も数々存在しますが、こうした法律の
すべてを把握することは至難の業。むしろ、知らない法律だらけなのが普
通ですよね。
今回紹介する事案は、自分のした行為が知らない法律にひっかかってい
た、いわゆる「法律の不知」の場合に、情状によっては刑を減軽してよい
とする「刑法38条3項但書(以下、法P)」を適用すべきが争われました。
被告人Xらは、腐って危険となった村の橋を架け替えてくれるように再
三村に頼んでいましたが、なかなか実現しませんでした。
痺れを切らしたXらは、雪で橋が落ちたように装い災害補償金を受ければ、
この橋の架け替えをすることができるだろうと考え、共謀して、ダイナマ
イト15本を用いてこの橋を爆破しました。
ちなみに、Xらの供述によれば、このときの彼らの認識は、「自分らの
行為が重罪になると知らなかった」「ダイナマイトを勝手に使うのは悪い
ことと思っていたが、罰金ぐらいで済むと思っていた」という程度だった
ようです。
1審は、Xに爆発物取締罰則1条違反の罪と往来妨害の罪(刑法124条1項)
を成立させました。
2審は、上記のXらの供述から、彼らが死刑の可能性もある爆発物取締罰
則1条を知らなかったと認定し、犯行の動機、性格、素行などを考慮して、
法Pにより刑を減軽しました。
検察官は、法Pが想定する「法律を知らなかった場合」とは、「その行
為が違法だと知らなかったとき」だから、違反した法律の刑の具体的内容
を知らなかったからといって、この事件に法Pを適用すべきでないと主張
し、上告しました。
最高裁は、原判決を破棄し、差し戻しました。
その理由として、法Pは、「自分の行為が違法で処罰可能なものだとは
知らなかったが、故意はある(自分の考え通りの結果を実現させた)」と
認定される場合に、違法の意識がないことを配慮すべき事情があれば、刑
を減軽できると示した規定であると示しました。
自分の行為に適用される具体的な法律規定や、その刑の重さの程度を知
らなかったとしても、「違法な行為だ」との意識があれば故意ありと判断
して構わないし、違法の意識がある以上は法Pの適用はないというわけで
す。
したがって、本件のXらは、罰条や法定刑の程度を知らなかっただけで、
自分の行為が違法だと意識していたのだから、法Pを適用した原判決は同
条の解釈適用を誤っているとしました。
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■ 法律用語
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法律用語 「整理解雇」
先日、大手航空会社が、その再生にあたって強引な整理解雇を行ったと
して話題になりました。
整理解雇が許されるのはどのような場合なのでしょうか?
経営者側の一方的な意思表示で労働契約を解除することを「解雇」とい
いますが、「整理解雇」とは、業績悪化など経営上の理由から「このまま
では経営が続けられない」と企業が判断した場合に、人員削減のため行わ
れるものです。
ですから、労働者側に落ち度がなくとも解雇される可能性があります。
とはいえ、失職は労働者の生活に直結する重大問題ですから、経営者の
都合で勝手に行えるというものではありません。
客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でないときは、その解雇
は経営者の権利濫用で無効だとされています(労働契約法16条)。
この「合理性」や「相当性」の判断は、以下の4要件を材料に行います。
(1)人員削減が本当に必要であること → 客観的にみて、企業が高
度の経営危機にあり、企業の維持・存続を図るためには人員削減
がどうしても必要な状況にあること。
(2)解雇回避努力 → 解雇を避けるべく、先立って退職者の募集、
出向など余った労働力をなくすための具体的努力が尽くされたこ
と。
(3)人選の合理性 → 解雇の基準やその適用(解雇対象者の選定)
が合理的であること。
(4)労働者との間で十分な説明協議を持ったこと → 人員整理の必
要性、規模、方法、解雇基準等について、労働者側の納得を得る
よう相当の努力をしたこと。
整理解雇が認められるには、これら4要件すべてを満たしているのが原
則ですが、場合によってはすべてを満たさなくともよいとされることもあ
り、その判断は未だ揺らぎのあるところです。
2009年に国へ寄せられた、整理解雇に関する相談は13,202件。
景気低迷により、ここ2~3年でほぼ倍増したとのことです。
今後はこの数字が減少に転じるよう願いたいですね。
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■ 法律クイズ 第232回 【解答】
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「ピッチャーはデッドボールの責任を負う? 」
□解答□
2. いずれの責任も負わない
野球などのスポーツでは、身体への危険がつきものといえます。
そのため、スポーツによる事故で相手にケガを負わせても、スポーツの
ルールに従った社会的に相当な行為とされる限り、刑事上罰せられたり、
民事で損害賠償を請求されたりすることはありません(違法性の阻却)。
本問のAさんのように、投球術の一つとして、わざと打者の近くにボー
ルを投げようとする行為は、野球のルールからして社会的に相当な行為で
あると考えられます。
たとえ手元が狂ってデッドボールとなり打者にケガを負わせてしまって
も、社会的に相当な行為として違法性が阻却されるので、打者のケガにつ
いて刑事や民事いずれの責任も負いません。
ただ、Aさんが、投球術の一つとしてではなく、初めから打者にケガを
負わせるつもりで、わざと打者にデッドボールを与え、それにより打者が
ケガをしたような場合は、傷害罪が成立しますし(刑法204条)、治療費
などの損害を賠償しなければなりません。
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