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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第669号

                      http://www.hou-nattoku.com/
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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2013年06月17日                        第669号
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 発行部数: 18,814部(まぐまぐ 13,378部、melma! 5,436部)
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■ 目 次
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  □ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第24回
   「銅像は固定資産?」

  □ なっとく! 法律相談 第657回
   「誤振込なのに相手が返還に応じてくれない!」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1243.php

  □ 法律クイズ 第343回 【問題】
   「飲酒運転の助手席に座ると罪になる?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0727.php

  □ 性同一性障害に関する法律問題 第20回
   「性同一性障害を理由に女装する従業員を懲戒解雇できる? 2」
    ~(東京地裁平成14年6月20日決定)~

  □ 民事判例解説 第28回
   「マンションで騒音トラブル発生!
    子供の生活音はどれくらいに抑えるべき?(1)事案の概要」
     ~東京地裁平成24年3月15日判決~

  □ 法律クイズ 第343回 【解答】


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■ 今週の話題 ~法律はこう斬る!


  第24回「銅像は固定資産?」

  東京都世田谷区の東急桜新町駅周辺に設置された「サザエさん」一家の
 銅像といえば、波平さんの頭の毛が何者かに3回も抜かれ、像を設置した桜
 新町商店街振興組合が被害届の提出を検討するといったニュースで話題と
 なりました。この像について、6月3日、都税事務所から58万9200円の支払
 いを求める固定資産税(償却資産)納税通知書が設置者に届いたそうです。
 今回はこの話題について、法律の観点から斬りこんでみたいと思います。

  不動産を所有している人には馴染みのある固定資産税ですが、地方税の
 一種で土地、家屋及び償却資産に対して課税されます(地方税法341条、
 342条)。

  償却資産とは、土地及び家屋以外の資産で、会社や個人で事業を行って
 いる人が事業のために用いることができる資産のことです。具体的には、
 構築物(内装・造作)、機械、器具・備品(応接セットやパソコン、コピ
 ー機)などがこれにあたります。

  今回の「サザエさん」像ですが、当局は商店街の看板の一種と判断した
 ようです。現在、東京都の固定資産税の税率は1.4%ですので、逆算すると
 資産価値が約4300万円の「看板」ということになります。広告用の金属造
 の構築物の耐用年数は20年ですので、商店街は向こう20年間で総額約490万
 円の固定資産税を払う必要があります(材質や使用目的によって耐用年数
 は異なるため、都税事務所の判断と異なる場合があります)。

  こうなると気になるのは、他の像の固定資産税の扱いですが、まず、美
 術品のように、時間が経過しても価値が下がらないものについては、そも
 そも固定資産税の対象となりません。また、減価するものであっても、文
 化財として指定されているものや国や地方公共団体が所有しているものに
 ついては、非課税とされています(地方税法348条)。
  したがって、公園などに設置された像や寺院の仏像の多くは対象外もし
 くは非課税となりますが、今回のように商店街等が設置した像や企業の創
 業者の像については、課税されている例もあるようです。

  今後の対応について、振興組合は都に減免を求め、認められない場合は
 訴訟も検討するとのことです。その場合、美術品か否かや、像の使用目的
 が争点となりそうです。

  せっかく地域の一員となったのですから、「一家そろってお引っ越し」
 にならなければよいのですが…。





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■ なっとく!法律相談 第657回
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 「誤振込なのに相手が返還に応じてくれない!」

 □相談□

  誤送金して相手に返金を求めても応じないとき、法的にどういう方法で
 返還を求めることができますか。
  ゆうちょ銀行内のATMを使い誤操作により誤送金してしまいました。気が
 つきすぐに(五分以内ぐらい)職員に申し出ましたが、すでに相手方の口
 座に入金されてしまっており間に合いませんでした。職員の指示に従い、
 返還請求依頼の書類を作成しましたが、返金されませんでした。相手の情
 報は口座と氏名しかわかりません。ちなみに誤振込の額は5万円です。



                          (60代:男性)


 □回答□

  誤振込をしてしまい相手方が組戻しに応じてくれない場合、通常であれ
 ば不当利得返還請求訴訟を提起することになります。

  もっとも、訴訟を提起するには当事者を特定する事が必要です。当事者
 は住所と名前で特定するのが通例ですが、相手方の住所が不明な場合には
 23条照会によって弁護士会を通じて、諸団体に照会して、必要な事項の
 報告を求めることになります。しかし、今回のように銀行が照会先の場合、
 銀行は、開設者側のプライバシーの問題を理由に回答してくれません。

  そこで、今回のように口座番号と名前しか相手方の情報が無いような場
 合には、預金口座とカタカナ名の名義人名だけで、不十分ながら、相手方
 の特定はあるとして、一応訴訟を係属させ、その後の手続のなかで、調査
 嘱託等によって住所、氏名等の特定を図っていくという運用を採る裁判所
 が多いようです。

  裁判所からの調査嘱託であれば銀行も情報を開示してくれますので、こ
 の情報によって当事者は特定されます。当事者さえ特定されれば誤振込の
 事案では問題なく返還請求は認められるでしょう。

  しかし、相談者の場合振込額が5万円ということですので、訴訟を提起
 すると費用倒れとなってしまいます。ゆうちょ銀行の職員に協力を求め粘
 り強く返還請求依頼をするしか無いでしょう。



  [関連情報]
  ・給料が間違って口座に振込まれた。返さないとダメなの?
   http://www.hou-nattoku.com/consult/224.php



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■ 法律クイズ 第343回 【問題】
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 「飲酒運転の助手席に座ると罪になる?」

  Xさんは、Yさんが飲酒により正常な運転が困難であることを認識してい
 ましたが、運転代行を呼ぶのが面倒であった事もあり、Yさんの運転する車
 で自宅まで送ってもらうことにしました。その帰り道でYさんは道路を横断
 中のAさんを轢いて死亡させてしまいました。その後、Yさんは危険運転致
 死罪で有罪となりました。
 この場合Xさんは、何らかの罪に問われるでしょうか。




 1. 罪に問われる
 2. 罪に問われない


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼




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■ 性同一性障害に関する法律問題
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  第20回「性同一性障害を理由に女装する従業員を懲戒解雇できる? 2」
      ~(東京地裁平成14年6月20日決定)~

  《前回までのあらすじ》
  勤務先のYから配置転換を命じられた性同一性障害の男性X(戸籍名の変
 更済)。
  Xは配置転換に応じる条件として、今後女性として扱うようYに求めまし
 たが、Yはそれを認めず、正式に辞令を出します。
  不満が募ったXは独断で女装して出社し、再三にわたる、Yの女装を禁ず
 る服務命令や自宅待機命令にも自分を曲げることはありませんでした。
  これに対しYが懲戒解雇処分を決め、Xはこれを不服として東京地裁に提
 訴しました。


  前回も最後に少しだけ触れましたが、地裁はXに対する懲戒解雇処分を無
 効と結論付けています。
  まず、それぞれの行動がどう評価されたか見てみましょう。

 ■Yの行った配置転換は相当か?
 → 相当だが、これを拒否したからと言って懲戒は行きすぎ

  当時Y内部では調査業務の外注が進められており、調査部(もともとXが
 所属していた部署)の人員削減が必要でした。
  その一方で製作部に欠員が生じており、Xにとっても製作部での業務が有
 益との判断がなされたために今回の辞令に至ったのですが、これは合理的
 な人選であると認められています。

  また、Yの就業規則には、社員に配転命令に従う義務を課す規定があった
 ほか、「正当な理由なく配転を拒否したとき」には懲戒解雇ができる旨の
 規定もありました。
  Xが配転命令に応じた上で申出の受け入れを働きかけることもできた状況
 を考えると、Xの配転命令に対する拒否は正当な理由がなく、懲戒事由を満
 たします。

  ただ、Xは辞令の破棄について謝罪していますし、YもXの欠勤した数日間
 について有給休暇を認めています。
  Xが配転命令を拒否したそもそもの理由も、Yの対応が不満だったからな
 ので、Xの配転命令の拒否が懲戒解雇に相当するほど重大・悪質な企業秩序
 違反とはいえないとされました。

 ■就労中、Xに女性の容姿を禁じるのは妥当か?
 → 一理あるが、Xの状態から察するにそれを破っても懲戒するほどではない

  事情の理解が進んでいなければ、Y社員やYの取引先・顧客のうちの相当
 数が、女性の容姿をしたXに対して違和感・嫌悪感を抱くおそれがあるのは
 事実です。
  Xのように従前と異なる性の容姿での就業を申し出る社員は極めて稀です
 し、Xが個人的な事情をYやその社員に配慮するよう求めているだけの状態
 と見ることもできます。
  Yが社内外への影響を憂慮し、当面の混乱を避けるために、Xに就労中の
 女装をやめるよう求めること自体は一応の根拠が認められます。

  しかし、Xの現状や内心(精神的・肉体的に女性としての行動を強く求め
 ており、これを貫けなければ多大な精神的苦痛を被る状態)から判断する
 に、XがYに対し女性としての扱いを求めるのも頷けます。

  地裁は、Y社員のXに対する違和感や嫌悪感は、Xの事情を認識・理解する
 よう図っていけば、時間の経過とともに緩和する余地が十分にあると考え
 ました。
  また、Yの取引先や顧客が違和感や嫌悪感を覚えたとしても、それがYの
 業務遂行上著しい支障を来す恐れがあるとはいえないとも指摘しました。

  以上を考慮すると、Yには確かに「会社の指示・命令に背き改悛せず」
 「その他就業規則に定めたことに故意に反し」た者を懲戒解雇できる規定
 が備わっており、今回のXの行動はこれに反するものではありますが、それ
 が懲戒解雇に相当するほど重大かつ悪質な企業秩序違反だとは言い難いと
 の結論に至りました。

  どちらの論点もYの就業規則等の合理性を認めてはいるものの、労働者の
 個別事情をもっと配慮するよう促しているようです。




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■ 民事判例解説
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  第28回「マンションで騒音トラブル発生!
      子供の生活音はどれくらいに抑えるべき?(1)」
         ~東京地裁平成24年3月15日判決~

  マンションなどの集合住宅に住んでいると、隣人の生活音が気になる瞬
 間があります。
  特に、幼い子どもがはしゃぐ音や声に関しては、その子の家族が騒音と
 して意識していない場合が多く、気が付けば大きなご近所トラブルに発展
 している、なんてことも…。

  X1は、平成17年12月、マンションの104号室を購入して、家族と入居しま
 した。
  その翌年の4月、真上の204号室にYが越してきます。
  Yには幼稚園に通う年齢の子どもがおり、入居以降、この子どもが深夜ま
 で204号室内を走り回るなどして騒音を発生させるようになりました。

  半年ほど経った同年10月、X1らはマンション管理人に歩行音を訴え、管
 理人は、一般論として騒音を生じさせないよう注意を促す書面をマンショ
 ン全戸に配布しました。
  このやりとりは翌月も繰り返されましたが、Yの子による騒音が改善する
 ことはありませんでした。

  平成20年7月、X1は業者に依頼し、64万500円の費用をかけて、同月3日~
 30日にわたりリビングルームの騒音を計測し、高いときには46~66dB(A)
 という値を得ました(「dB(A)」とは、Aフィルタで計測し、より人間の
 聴覚に近い補正をかけたときの音の聞こえ方の単位。騒音の判断に用いら
 れる)。

 ※同じ値でも、屋外で聞く音よりも屋内(自室)で聞く音の方が大きく感
  じられるものです。それが隣家など自室以外の場所から発せられたもの
  であればなおのこと。
  日本建築学会は、屋内で聞く外部からの騒音に対し、人は以下のように
  感じると報告しています。

 ┌───────────┬────────────────┐
 │ 40dB(A)      │ 多少大きく聞こえる      │
 ├───────────┼────────────────┤
 │ 45dB(A)      │ 大きく聞こえる        │
 ├───────────┼────────────────┤
 │ 50dB(A)      │ かなり大きく聞こえる     │
 ├───────────┼────────────────┤
 │ 55~60dB(A)    │ 非常に大きく聞こえうるさい  │
 ├───────────┼────────────────┤
 │ 65dB(A)      │ 非常にうるさい        │
 ├───────────┼────────────────┤
 │ 70dB(A)      │ 非常にうるさくて我慢できない │
 └───────────┴────────────────┘

  こうした騒音により、X1の妻X2はストレス性の体調不良を起こし、メン
 タルクリニックに通院するようになりました(かかった治療費・薬代は合
 計2万4890円)。

  X1らは、Yらが騒音を発生させたうえ、騒音軽減対策(子を走らせない・
 階下に騒音が響かないようにするなど)も怠ったと主張。
  不法行為によりX1らの人格権や104号室に対する所有権を侵害したとして、
 騒音の差し止めと損害賠償を請求しました。
  一方Yは、X1が主張する騒音の発生を否認し、損害の発生を争うと反論し
 ました。

  一体、裁判所はどちらに軍配を上げたのでしょうか?
 次回、詳しく説明します。



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■ 法律クイズ 第343回 【解答】
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 「飲酒運転の助手席に座ると罪になる?」

 □解答□
 1.罪に問われる

  最高裁	 平成25年04月15日決定は、「刑法208条の2第1項前段の危
 険運転致死傷罪の正犯者である職場の後輩がアルコールの影響により正常
 な運転が困難な状態であることを認識しながら,車両の発進を了解し,同
 乗して運転を黙認し続けた行為について,同罪の幇助罪が成立する」とし
 ました。したがって、Xさんは危険運転致死罪の幇助犯として罪に問われる
 事になります。




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