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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第671号

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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2013年07月01日                        第671号
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 発行部数: 18,781部(まぐまぐ 13,347部、melma! 5,434部)
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■ 目 次
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  □ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第26回
   「海難救助が災害派遣?」

  □ なっとく! 法律相談 第659回
   「公正証書のメリット」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1247.php

  □ 法律クイズ 第345回 【問題】
   「法律上、給料の支払われるべき場所とは・・・?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0729.php

  □ 民事判例解説 第30回
   「配偶者に同居を強制することはできる?」
     ~大審院昭和5年9月30日決定~

  □ 法律クイズ 第345回 【解答】


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■ 今週の話題 ~法律はこう斬る!


  第26回「海難救助が災害派遣?」

  太平洋横断中に遭難したニュースキャスターの辛坊治郎さんら2人が海上
 自衛隊に救助されたことに関し、25日の自民党国防部会で、辛坊さんの行
 動を批判する意見が相次ぎました。批判の内容は、災害時に自衛隊が市民
 を救助するのは当然としても、冒険のような場合にまで、予算をかけて自
 衛隊を派遣する必要があるのか、ということのようです。
  一説には救助費用が1000万円を超えるともいわれる今回の救出劇。どう
 して自衛隊が出動しなければならなかったのかも含め、このニュースに斬
 りこんでみたいと思います。

  今回のように、太平洋上で遭難した場合、そもそもどの国が遭難者の救
 助をしなければならないのでしょうか。この点については、日本と米国の
 間で「日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の海上における捜索及び救
 助に関する協定」(日米SAR協定)が昭和61年に締結されており、我が国
 から1200海里までの範囲(協定では厳密な地点が定められています)につ
 いて、捜索救助を行うことになっています。韓国・ロシアとの間でも、同
 様の協定が結ばれています。

  次に、日本が遭難者を救助しなければならない場合に、どの機関が救助
 を行うかについてですが、こちらについては、海上保安庁がこの役割を担
 っています(海上保安庁法5条2号)。今回の事故でも、遭難の知らせを受
 けた事務局が海上保安庁に通報し、同庁の航空機が辛坊さんらを発見して
 います。

  ここまでであれば、自衛隊が出てくることはなかったのですが、今回の
 場合、現場海域の天候が悪く、海上保安庁の装備では救助が難しかったよ
 うです。自衛隊には、今回の救助に必要な装備や人材がいますが、だから
 といって、自衛隊の判断で自由に出動することはできません。それを可能
 にするのが、「災害派遣」です。

  「災害派遣」と聞くと、東日本大震災の時の自衛隊の救助活動を思い浮
 かべる方が多いと思いますが、自衛隊は「天災地変その他の災害に際して、
 人命又は財産の保護のため必要がある」ときは、要請に基づいて部隊等を
 派遣することができます(自衛隊法83条)。この要請ができる者に、海上
 保安庁長官や管区海上保安本部長が含まれており(自衛隊法施行令105条)、
 今回の場合も、これらの法令に基づき、海上保安庁から海上自衛隊に対し
 て、災害派遣要請がなされ、部隊が派遣されたと考えられます。
  「災害」という言葉からは、大規模な自然災害をイメージしますが、実
 際にはかなり頻繁に出動しており、ここ数年は年間500~600件派遣されて
 います(東日本大震災に関する活動を除く)。

  海上保安庁や海上自衛隊による救助は、行政サービスのため、警察や救
 急車の出動に費用がかからないのと同様、費用はかかりません。防衛省の
 担当者も、救出費用を当事者に請求しない根拠について、「災害派遣は自
 衛隊の任務であり、任務遂行のために認められた予算の範囲内で対応した」
 と説明しています。
  ちなみに、山岳救助についても、警察や消防、自衛隊などが捜索する分
 については無料ですが、民間ボランティアに捜索を協力してもらったり、
 民間のヘリコプターを使用した場合には、その費用がかかります。「山岳
 遭難の救助にはお金がかかるが、海難救助は無料」という説は、そのあた
 りから出てきたのでしょうが、逆にいえば、お金をかければ捜索の範囲を
 広げられる陸上と異なり、海上は専門の機材や人材を有する機関に任せざ
 るを得ないともいえます(沿岸については有料の救助サービスもあるよう
 です)。

  人命と費用を天秤にかけることはできませんが、十分な準備をしたうえ
 での冒険であったのかどうかについては、検証されるべきでしょう。遭難
 直前の映像も海上保安庁に提出されているとのことですし、原因究明が待
 たれます。







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■ なっとく!法律相談 第659回
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 「公正証書のメリット」

 □相談□

  私の妻の兄が、ベトナムでホテル経営をしています。今回、新しくホテ
 ルを経営する際に、ホテルの名義を私の妻の名義にしたいとの事です。
 (実質の経営は妻の兄です)仮に、その経営するホテルが負債を抱えたりし
 た場合、名義人に責任が来ると思いますので、公証役場にて、「妻名義の
 ホテルでの負債や不利益は、一切、妻の兄が責任を持つ」という内容で一
 筆書いてもらおうと思っておりますが、これで、名義人が責任を負うこと
 は避けられるのでしょうか。



                          (40代:男性)


 □回答□

  まず、ベトナムで経営するホテルが、日本の株式会社のような法人によ
 り運営されるのであれば、連帯保証人になっていない限り法人が負った債
 務を役員個人が負う事はないでしょう。他方、自営業の場合にはホテルの
 名義人である者がそのホテルの債務や管理責任を負う事になるでしょう。

  しかし、相談文からはどのような形態でホテル経営をされるのか定かで
 はありません。また、ベトナムの民法や商法がどのようになっているのか
 も分かりかねます。特にベトナムは社会主義国ですから、日本と同様の権
 利義務が発生するとは限りません。したがって、以下では、相談者の妻が
 今回のベトナムのホテルに名義貸しをする事によって、何らかの責任を負
 う事になった場合に相談文にある内容の公正証書がどのような意味を持つ
 のかに関して回答いたします。

  公正証書とは、私人(個人又は会社その他の法人)からの嘱託により、
 公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。公正証書を作成す
 るメリットは、

 (1)金銭の支払いについては、強制執行認諾約款付き公正証書にしておけば
   訴訟を経る事無く、いきなり強制執行できる、
 (2)公正証書は裁判の時に有力な証拠になる(少なくとも文書の成立自体は
   立証する必要が無くなる)、
 (3)公正証書を紛失しても原本が公証人役場に保管してある

 などです。とりわけ契約書や合意書等の類いでは(1)のメリットが最も重要
 です。

  今回の場合、「妻名義のホテルでの負債や不利益は、一切、妻の兄が責
 任を持つ」という内容ですので、強制執行認諾約款を付けてもこれをもっ
 ていきなり強制執行をする事は出来ません。なぜなら、一切の債務という
 ように抽象的に記載されているだけでは執行の際にも、どのような債務の
 ためになされるかわからず強制執行することができないからです。

  したがって、今回の場合(2)の意味でのメリットが大きい事になります。
 しかし、裁判の際に有力な証拠となるということは以下のような場合を想
 定しなければなりません。まず、相談者の妻が名義貸ししているベトナム
 のホテルが負債を抱えその債務を相談者の妻が支払う。公正証書で兄が責
 任を負うとしていても、それは相談者の妻と兄との間の事情でありホテル
 の債権者にとっては関係のない事だからです。次に、相談者の妻が兄に対
 し損害賠償請求をする。この損害賠償請求に対し兄が任意に支払ってくれ
 ない場合には訴訟を提起することになり、この訴訟で上記メリット(2)が生
 きてくる事になります。

  ただし相談文にあるような公正証書を得ていても、何かあればベトナム
 からの支払い請求や兄に対する請求または訴訟提起などの負担を強いられ
 る事になりかねません。

  ですので、経営に全く関わらないのであれば、安易に名義を貸さない方
 がよいでしょう。



  [関連情報]
  ・公正証書の内容を公証人はチェックしてくれるの?
   http://www.hou-nattoku.com/consult/1083.php



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■ 法律クイズ 第345回 【問題】
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 「法律上、給料の支払われるべき場所とは・・・?」

  X会社では給料を口座振り込みではなく手渡しで支給していました。ある
 日、病気療養中の従業員Yから会社に給料を受け取りにいけないので、自宅
 まで持ってきて欲しいと言われました。X会社はYのいうとおりYの自宅まで
 給料を持参しなければならないでしょうか?



 1. 金銭債務なので持参しなければならない
 2. 金銭債務だが持参しなくてもよい


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼





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■ 民事判例解説
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  第30回「配偶者に同居を強制することはできる?」
         ~大審院昭和5年9月30日決定~

  婚姻した夫婦には、共同生活を円満にするための「同居義務」がありま
 す(民法752条)。
  これは強行規定(当事者が合意していても排除できない決まり)であり、
 別居中であろうと離婚交渉中であろうと関係なく課せられる義務です。
 では、これに従わない配偶者を強制的に同居させることはできるのでしょ
 うか?

  夫Xは、妻Yに対して同居請求訴訟を提起し、勝訴しました。
 それにもかかわらず、同居義務を履行せずに別居を貫くY。

  納得のいかないXは、Yに

 (1)決定の日から15日以内にYがX宅に復帰して同居すること
 (2)もしもこの期間内にYが同居義務を履行しない時は、その期限の翌日か
   ら遅延日数に応じて1日につき金5円(現在の物価で3000円前後)の賠
   償金を支払うこと

 を命じる内容の間接強制決定を下して欲しいと、裁判所に強制執行を申し
 立てました(当時の民事訴訟法734条。債務の性質が強制履行できる類のも
 のであれば間接強制を認めるというもの)。

  ちなみに、「間接強制」とは、債務を履行しない義務者に対し、「一定
 の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金(上記(2)では1日
 につき金5円)を課す」と警告することで、義務者に心理的圧迫を加え、自
 発的に履行を促す制度です。

  裁判所は、1審・2審とも、Xの申立てを退けました。
 これに対しXは、Yに対する同居請求権は執行可能なものなのだから、間接
 強制を認めなかった1・2審決定は法令に違反していると主張。再抗告を申
 し立てました。

  しかし、大審院もXの主張を認めず、抗告を棄却します。

  まず、大審院は、強制履行できるかの基準を、債権の性質に求めました。
 債務者が自分の意思で履行するのでなければ、債権の目的を果たせない場
 合は、その債務を「性質上強制履行できないもの」と考えるべきだという
 のです。

  この点、夫婦間における同居義務も、債務者(妻Y)が自分で履行しな
 ければ債権の目的を果たせないのが明らかなので、強制履行は不可能と判
 断しました。
  そして、強制履行できないものである以上、間接強制もまた許されない
 ため、Xの抗告を棄却した原審判断は正当であるという結論に至ったのです。



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■ 法律クイズ 第345回 【解答】
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 「法律上、給料の支払われるべき場所とは・・・?」

 □解答□
 2.金銭債務だが持参しなくてもよい

  金銭債務は原則として持参債務ですので、その義務履行地は債権者の住
 所地という事になります。これによると、金銭債権である賃金債権も労働
 者の住所地で行わなければならないようにも思えます。しかし、慣習法上、
 一般に給与債権は、労働契約における特約等がない限り、 勤務地において
 支払うべき取立債務と解されています。

  したがって、X会社は給料をYが取りにくればいつでも支払える状態にし
 た上で、Yに会社に給料を取りにくるよう言えばいいことになります。




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